優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

□◆□…優嵐歳時記(214)…□◆□

    カンナ咲く明るき峠を越えにけり   優嵐

カンナはカンナ科の多年草です。芭蕉に似た楕円形の葉の間から花茎
を出し、大きな唇形花を開きます。色は赤、黄色、オレンジなど熱帯
原産らしい鮮やかです。花期は長く、7月ごろから秋が深まるまで
咲いています。

日本へは明治時代にヨーロッパで品種改良されたものが、観賞用として
入ってきました。カンナの鮮やかな色から夏の花との印象が強いの
ですが、季語では秋に入ります。

□◆□…優嵐歳時記(213)…□◆□

    秋の薔薇清しき香を放ちけり   優嵐

「薔薇」そのものは四月、五月に咲きますので夏の季語ですが、
一段落して、盛夏を過ぎ、再び咲いたものを「秋薔薇」といいます。
二度目ですから花はやや小ぶりになります。秋が深まる中で咲く
薔薇も風情があってよいものです。

今日の午前中、散歩をしていて秋薔薇を見つけました。確かに夏の
大輪の華やかさはありませんが、近づくと薔薇の香りがしてきました。
まだ残暑の気配もありますが、森にはいればどんぐりが落ちています
し、店先にはりんごが並び始めました。

□◆□…優嵐歳時記(212)…□◆□

    雲流れ秋光遠き大橋に   優嵐

「秋光」は「秋の色」「秋景色」などと同じ意味で使われる季語です。
秋らしい景色、彩り、さらには秋の気分や秋の気配までも含んで
います。しいていえば、「秋の色」には伝統的な雰囲気が、「秋光」
には秋の明るい外光を感じます。

今日の兵庫県南部地方は朝から晴天で、遠くのものまではっきりと
見える秋らしいお天気でした。日の当たる場所は、まだ暑いですが、
風が肌に心地よく、何をするにもいい気候になってきました。
空には鰯雲、遠くに見える瀬戸内海と淡路島、そしてそこにかかる
明石海峡大橋も、すべて秋の光の中にあります。

□◆□…優嵐歳時記(211)…□◆□

    秋雨の中を流れる人の波   優嵐

ビルの上階から下を見ていると、人々があちこちと行き交っている
さまがよくわかります。雨が降り出したことも傘が開くので気が
ついたほどでした。みんな忙しそうに広場を横切っていきます。
それぞれ行く場所があり、することがあるのだなあと思うと人の
流れを見ているのが面白くもあり、不思議でもあります。

今日もお天気がぐずつき、朝方はかなり激しい雨が降りました。
「秋雨」は細かく、ときには梅雨のように降る雨をさすのが本意
ですが、それはそれ、いろいろな雨を詠んでまったくかまわないと
思います。

□◆□…優嵐歳時記(210)…□◆□

    鉛筆をいっぱい削る秋の昼   優嵐

最近では、鉛筆を削ることがほとんどなくなっています。ボールペン
やシャープペンに押されて、ふだんはあまり鉛筆を使いません。
しかし、集団検診の間、検診票に書き込むのは、すべて鉛筆でした。
いっぱい鉛筆を用意して、一日の検診が終わると、まとめて鉛筆
を削りました。

子どものころは、手回しの鉛筆削りでごりごりと鉛筆を削って
いました。小学校の高学年になったとき、ナイフで削る鉛筆に憧れて、
切り出しナイフで削るようになりました。絵を描くときはもっぱら
ナイフで削った方がいいのです。軸によく切れるナイフの刃をあてて
すっすっと削っていくときはある種の気持ちよさがありました。

□◆□…優嵐歳時記(209)…□◆□

    コーヒーにフルーツケーキ秋湿り   優嵐

今日は一日中雨模様の姫路でした。そのせいか一気に気温が下がり、
肌寒さを感じるほどでした。つい先日汗だくでテントをたてたのとは
うって変ったこのお天気。「秋湿り」とは、秋の雨のために空気が
湿ってしっとりと冷たい感じになっていることです。「しけ寒」とも
いいます。秋が一足跳びに進むのはこういう雨のあとだなと思います。

今日は先週からずっと続いていた町の集団検診がひとまず終わりほっと
しました。おいしいケーキをスタッフでわけてコーヒーを飲みながら
くつろぎます。こういうときというのはいいものです。仕事に緩急が
でき、一区切りついた、という気分を味わえるのですから。

□◆□…優嵐歳時記(208)…□◆□

    すすき分け町見下ろせる峠へと   優嵐

すすきは秋の七草の尾花としても知られ、十五夜のお月見にも欠かせ
ないものとして、日本人の暮らしになじみの深い植物です。イネ科の
多年草で、山野のいたるところに群生します。尾花は黄褐色からしだい
に色あせて最後は白色となります。秋風になびくすすきの風景は日本
独特のさびしさの風情があり、万葉集のころからすでに歌に詠まれて
いました。

すすきは茅葺屋根の材料の茅でもあります。かつてはそれぞれの集落に
茅葺の材料のすすきを刈る「萱場」がありました。低地から亜高山帯
まで自生し、日本全土、朝鮮半島、中国に分布しています。青すすきは
夏の、枯すすきは冬の季語になります。

□◆□…優嵐歳時記(207)…□◆□

    秋天へパラグライダーふわり出ず   優嵐

三連休の昨日、兵庫県北部から中部をドライブしてきました。途中
パラグライダースクールがあるさのう高原に立ち寄りました。
パラグライダー、私も2,3度体験したことはあるのですが、風
待ちがなかなか大変で、続けてやろうという気になれませんでした。
風が弱くても強すぎてもだめなんですね。

去年の秋、シャモニに行ったときのこと思い出しました。モンブラン
山群の途中にあるパラグライダー基地から次々に色とりどりの
パラグライダーが飛び出してきます。うまく上昇気流をとらえた機は、
そこからさらに上空へ舞い上がり、かなり長時間旋回しながら飛んで
いることができます。パラグライダーはもともとヨーロッパアルプス
が発祥の地らしいですね。

□◆□…優嵐歳時記(206)…□◆□

    明け方の雨あがりけり獺祭忌   優嵐

「獺祭忌(だっさいき)」は俳人正岡子規の忌日です。俳句には
なぜか忌日を季語にするという伝統があります。近代俳句の革新者
子規がわずか36歳で脊椎カリエスのために亡くなったのが1902年
9月19日です。「子規忌」「糸瓜忌」ともいいます。18日、絶筆
の三句を残して昏睡状態となった子規は、明けて19日の午前1時、
息をひきとりました。

子規は本名を常規(つねのり)といい、獺祭書屋主人・竹の里人・
香雲・地風升・越智処之助などの別名も用いました。子規(ホトトギス
の異名)という雅号も、23歳で喀血したときに「鳴いて血を吐く」
というホトトギスからとったものです。

獺とはカワウソのことで、カワウソは巣に魚を集めて貯蔵する習性が
あります。まるで魚を祭っているようだということで「獺祭」と言
い、転じて「散らかっている様」の意味になりました。「獺祭書屋」
とは書物が散らかった部屋のことで、子規が自らの部屋を謙遜して
呼んだものです。

□◆□…優嵐歳時記(205)…□◆□

    赤き実のぽつぽつ増えて秋曇   優嵐

秋の曇った天気のことを「秋曇(あきぐもり)」といい、「秋陰
(しゅういん)」ともいいます。移動性高気圧の影響を受けて、秋は
お天気が周期的に変わります。今朝は早朝にかなり激しい雨が降った
姫路でした。日中は少し日も差しましたが、おおむね曇り空でした。
この三連休はどうやら毎日こんなお天気になりそうです。

サンゴジュの実が赤く色づいてきました。これから野山は実りの季節
を迎えます。私たちは赤や橙色を見ると食欲を覚えます。これは類人
猿として果実をもぎとって暮らしていた時代からの記憶だという話を
聞いたことがあります。緑や青ではなく赤や橙に食欲中枢を刺激され
るのは、熟れた木の実の発する色だからなのでしょう。

このページのトップヘ