優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

□◆□…優嵐歳時記(1136)…□◆□

  青梅雨や街灯のはや点り初む  優嵐

一日雨が降り続いていました。静かな雨の一日、家の前の
紫陽花のピンクがしだいにはっきりとした色になってきて
います。雨雲が低く垂れこめ、周囲の低い山も中腹から上
は雲の中です。日差しがないため日中でも部屋の中は
薄暗く、街灯が早くから点り始めていました。

青梅雨とは、新緑に降りそそぐ梅雨、という意味です。
緑が雨に洗われてさらにその色が増して感じられるという
ところから生まれた言葉です。

□◆□…優嵐歳時記(1135)…□◆□

  シニアカー荷籠にキャベツ載せて行く  優嵐

キャベツはヨーロッパ原産で、江戸時代に輸入され、明治に
入って一般に普及しました。日本人の嗜好にも日本の風土
にもよくあい、いまでは全国で栽培されています。近頃は
一年中店頭で見られますが、需給がもっとも多いのは夏
であり、夏の季語になっています。

シニアカーとは、福祉用電動車両のことで、長い距離を
歩くのがつらくなった高齢者の方が足代わり使っています。
畑の行き帰りにも使われているようです。新鮮なキャベツ
を三つ籠に入れてにこにこと帰っていかれる姿を目に
しました。

□◆□…優嵐歳時記(1134)…□◆□

  苗色の播州平野梅雨に入る  優嵐

今日は朝から素晴らしい晴天です。一週間後が夏至です
から、太陽の輝きは強烈です。水道水がやや生温く感じ
られるようになったことも、日差しの強さを表しています。
外気温はそれほどでもないのに、直射日光の強さでここ
まで温められたものでしょう。

今日の句は増位山の山頂から見渡した情景を詠んでいます。
冬は冬枯れの、早春には下萌の、つい先日は空を映す代田
の様子が楽しめましたが、今は植えられた苗が柔らかな
緑色で田を覆っています。

□◆□…優嵐歳時記(1133)…□◆□

  雨去れば早苗田のまた静かなり  優嵐

数日前の雷雨のあとの田を詠んだ句です。近所の田植えも
ほぼ終了し、時期が早かった田では苗がかなり育って
います。植えられたばかりの田は「植田」「早苗田」と
いいます。

この時期はまだ田の水面が苗の間に広々と見えます。
雨に打たれて水面が波立ったり、晴天のときには空や雲
を映していたり、この時期ならではの情景が楽しめます。
稲が順調に生育して水面を覆いつくすようになれば
「青田」ということになります。

□◆□…優嵐歳時記(1132)…□◆□

  降り初めし雨に紫陽花色づきぬ  優嵐

近畿地方は今日梅雨入りしました。去年より一週間ほど
遅い梅雨入りです。朝から雨になり、一日中降り続いて
今も降っています。気温もあまりあがらず、梅雨らしい
一日です。

日中も部屋の中が薄暗く、文字を読むにはスタンドの灯
が必要でした。窓から見える道路のそばに紫陽花が
植えられています。やはり雨が似合う花です。

070614

□◆□…優嵐歳時記(1131)…□◆□

  頬杖のネットサーフィン桜桃忌  優嵐

今日は太宰治の命日です。晩年の短編『桜桃』にちなみ、
「桜桃忌」と呼ばれます。生涯に五度の自殺未遂を
繰り返した末、1948年、愛人とともに玉川上水で入水
自殺しました。38歳でした。典型的な”破滅型の天才”
といえるかもしれません。

優れた才能を持ちながら、いや、それゆえに才能に食い
尽くされるというか、才能という荒馬を乗りこなせずに
振り落とされるというか…。天才は天才ゆえに凡人には
見えないものが見え、そのための苦しみもまた大きい、
そんな気がします。

□◆□…優嵐歳時記(1130)…□◆□

  髪切りぬ六月の風軽やかに  優嵐

「六月になったなあ」と思っていたら、いつのまにか
もう半ばになっています。ということは、間もなく今年も
前半が終了です。髪を切ってすっきりしました。

六月は梅雨の月ですが、最近は梅雨らしいお天気になる
のが遅くなっているように思います。前半は空梅雨気味
であまり雨が降らず、七月になってからまとまった降り
になります。梅雨明けも遅くなって、盛夏と呼べる時期が
短くなっている気がするのです。

□◆□…優嵐歳時記(1129)…□◆□

  天と地の距離に雷光立ちにけり  優嵐

週末は雷が三日続きました。稲妻が走るのを窓から見て
いました。電撃が枝状に雲から放射されるのは、迫力が
あり、美しいものです。高山で雷に会うと落雷の危険が
高く、恐ろしいですが、平地の室内ではゆったり鑑賞
する余裕もあります。

今日は落ち着いて、一日中青空の広がるいいお天気
でした。梅雨前の貴重な晴れ間かもしれません。
晴れていると早朝から強い光の朝日が部屋に差し込んで
きます。夏至間近で、太陽の直射そのものは一年中で
最も強いころです。

□◆□…優嵐歳時記(1128)…□◆□

  降りてやみ降りてやみして走り梅雨  優嵐

今日も昼過ぎに雷雨がありました。明日は雑節の「入梅」
です。梅雨入りはまだですが、その前の段階で雨模様の
天気が続くことを「走り梅雨」と言います。「走り」は
初物の意味で、野菜や魚にも用いられます。

鬱陶しいものの代名詞のように言われる梅雨ですが、
それでも年に一度巡ってくる約束のようなもので、それ
なりの珍しさがこの言葉には感じられます。梅雨がもし
なければ、日本の夏とはいえませんから。

□◆□…優嵐歳時記(1127)…□◆□

  万緑を騒がせ雨の近づきぬ  優嵐

昨日と今日、不安定な空模様が続いています。今日も
雷や驟雨が何度かありました。降り続くわけではなく、
さっと降ってはまたしばらく日が照って、また曇って
雨になりというお天気です。

「万緑」は濃淡さまざまだった緑が、一面深い緑になり
勢いを増す様子をさす季語です。今ごろから真夏にかけ
て、梅雨、さらには炎暑の中で見る緑のさまです。

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