優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

□◆□…優嵐歳時記(184)…□◆□

    歩み出てすでに秋めく影法師   優嵐

「秋めく」とは、風や空気、空の様子、光の差し具合などがどこ
となく秋らしくなることをさす季語です。残暑の中にそれでも確実
に訪れている秋らしさ、秋の気配を言います。何を秋めくと感じる
かは主観的なものですが、いかにも日本人の感性にあった季語だと
思います。

昼間はまだ、かなり残暑が残っていますが、ひとたび日が傾くと、
その傾き加減にはっきり秋の訪れを感じます。勤務を終えて夕刻の
日差しの中へ歩み出ると、足元から前に長く影法師が伸びていき
ました。

□◆□…優嵐歳時記(183)…□◆□

    蒼空を映して水の澄みにけり   優嵐

秋の水には澄んだイメージがあります。「秋の水」という季語もあり
ますが、水澄むはそこから派生してきた季語です。夏にはどこかなま
ぬるい感じがしていた水、それが秋を迎えてしだいに冷たく澄んで
くる様子を表しています。

今日は午後から澄んだ青空が広がった姫路でした。稲が日に日に
熟れていき、早稲の田はすっかり黄金色です。この稲穂の色に
ふさわしいのが澄んだ空と澄んだ水なのです。

□◆□…優嵐歳時記(182)…□◆□

    秋の夜のジャズの流れる静けさに   優嵐

ジャズに詳しいわけではありませんが、ヨーロピアン・ジャズ・トリオ
はよく聴きます。今これを書きながら聴いているのは『天空のソナタ』
というCDで、バッハやショパンといったクラシック曲をジャズ風に
アレンジしたものです。

静かなジャズは真夏よりも、しだいに長くなっていく秋の夜に
ふさわしいと感じます。気持ちが穏やかに内側に落ち着いていって、
夏の喧騒や激しいエネルギーの発散のあとの、内省的な気分によく
あいます。こういう曲を聴きながらものを書いたり、本を読んだり
するひとときが好きです。

私はアウトドアでの活動が好きですが、それと同様にひとりで静かに
ゆっくりと過ごす時間も大好きです。静と動、陰と陽、どちらも
大切な時間です。

□◆□…優嵐歳時記(181)…□◆□

    処暑の雨燕は低く縦横に   優嵐

今日は二十四節気の処暑でした。立秋から数えて15日にあたり、
太陽の黄経は150度です。処暑とは、暑さがやむ、との意味で
今日は姫路も雨模様であったため気温が低めでした。アテネの女子
マラソンは35度の猛暑の中の戦いでしたが、東京の今日は9月
中旬から下旬の気温だったとか。

また台風が接近しています。すでに熟れた早稲の中には続く台風の
おかげでべったりと倒れ伏しているものがあります。本来台風の
季節は9月以降という気がするのですが、今年は梅雨の最中から
台風が襲来し、すでに4、5個が日本列島を通過していったのでは
ないでしょうか。

処暑を過ぎると朝夕は本格的に秋の気配が増していきます。まだ
残暑がぶりかえす日もありますが、やはり秋はしだいに深まって
いくのです。

□◆□…優嵐歳時記(180)…□◆□

    蜩の透き通らせて夕景色   優嵐

蜩(ひぐらし)は晩夏から初秋にかけて、カナカナカナと響きのある
声で鳴きます。カメムシ目セミ科、セミの中では最も品のある美しい
声で鳴きます。どっと暑さを感じる蝉しぐれとは異なり、蜩の声を
聞くと、すーっと涼しい気持ちになります。

早朝や夕刻に鳴くことが多く、特に夕刻の鳴き声が印象に残るところ
から、この名前がついたようです。別名かなかなとも言います。
ホウシゼミとともに夏休みの終わりを告げるセミでもあります。
そろそろお子さんのある家では夏休みの工作や宿題の仕上げにかかって
いらっしゃるのではないでしょうか(笑)。

□◆□…優嵐歳時記(179)…□◆□

    髪切って新たに涼し午後の風   優嵐

単に「涼し」でしたら、夏の季語ですが、「新たに涼し」は秋の季語
です。このあたりが季語のややこしいところです。「新たに涼し」は
「新涼」「初涼」などとも言います。句の語感で用いる季語を変えて
いきます。「新たに涼し」は秋に入ってから感じる涼気のことで、初秋
の新鮮な空気を心地よく感じる言葉です。

久しぶりに髪を切ってきました。髪が多いので随分軽くなりました。
カットというのは気分転換にはなかなかいい手段かもしれません。
シャンプーしてもらったり、マッサージを受けたりするのもいいもの
です。ささやかな贅沢?

□◆□…優嵐歳時記(178)…□◆□

    文月や明日切る髪を洗う夜   優嵐

「文月」は陰暦の七月の異称です。別称の中に「七夕月」「文披月」
などがあります。文披月の略称が文月になったというのが定説です。
今日は文月五日、陰暦では明後日が七夕です。新暦の七月七日は梅雨
の最中ですが、旧暦の七夕は空が澄み始め、雨も比較的少ない初秋に
あたります。七夕の伝統的な季感はこちらにあり、古典に登場する
七夕はすべて初秋の行事として読まなければ、古人が感じた趣とは
離れてしまいます。

その他の別称としては、「女郎花月」「秋初月」「涼月」「親月」
「穂含月」などがあり、いずれも季節感に富んだ美しい名称だと思い
ます。

□◆□…優嵐歳時記(177)…□◆□

   ひそやかに強きのもなり女郎花  優嵐

「女郎花(おみなえし)」はオミナエシ科オミナエシ属の
多年草です。1mほどの細茎を分岐して、黄色の五弁の細かな
花を傘のように開きます。秋の七草のひとつで、全国に分布し、
万葉集の昔から詩歌に詠われています。

繊細な姿が女らしく感じられてこの名がついた模様です。
しかし、盆花に用いられるだけあって、花のもちはよく、
この点もたおやかなれども芯が強いという女性らしさに通じ
ているようです。

□◆□…優嵐歳時記(176)…□◆□

    鬼灯を挿して人無きテーブルに   優嵐

今日は一日中雨が降ったりやんだりの姫路でした。それも一気に
どっと降ってはしばらく晴れる、という降り方で、秋の雨らしく
ありません。これも台風の影響かと思います。それでも今は雨が
やみ、窓の外では虫の声がしています。静けさを感じるひととき
です。

「鬼灯」は東アジア原産のナス科の多年草です。ひと目見れば誰
でも記憶してしまう独特の色と形をしています。現在は観賞用と
して育てますが、もともとは薬用として栽培されました。七月に
浅草の浅草寺でおこなわれる「鬼灯市」(夏の季語)も、鉢植え
の鬼灯をあとで薬として利用するためだったそうです。

□◆□…優嵐歳時記(175)…□◆□

    それぞれの墓にありけり秋の花   優嵐

お盆でお墓参りに行くと、お墓ごとに女郎花、鶏頭などの秋の花が
供えられていました。この時期はふだん遠く離れて住んでいる親族
と顔をあわせる機会でもあります。先祖のお墓参りと言いながらも、
こういう機会がないと、成長した子どもたちが親元に集まるときが
ないのかもしれません。それゆえに激しい渋滞にも耐えて、多くの
人が故郷を目指すのでしょう。

お盆が終わり、今日の姫路は午後から激しい雨が降ったりやんだり
でした。台風の影響かとも思われます。台風が上陸する心配はなさ
そうですが、台風が行ってしまえば、さらに秋が進むことでしょう。

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