優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

□◆□…優嵐歳時記(1065)…□◆□

  春の空麒麟のごとき雲走る  優嵐

雲といえばまず印象的なのは、真夏の入道雲です。それ
から秋の澄んだ空に出る筋雲。子どものころは、よく空
を見て雲の形からいろいろ想像したものでした。入道雲
は、特に空高く輝き、そこに別の国があるように思え
ました。

雲はさまざまな形をとり、それがどんどん変わっていく
のが面白く、飽きずに眺めていました。さっきドーナツだ
と思っていたものが、天狗になり、白鳥になり…。
雲は細かな水滴の集まり、と理科で習っても、想像は
また別のものです。

□◆□…優嵐歳時記(1064)…□◆□

  ひとときの風雨去りたる花すがし  優嵐

花冷えが続いています。午前と午後に風をともなった
時雨があり、めまぐるしくお天気が変わりました。
桜が咲くころのお天気らしいともいえます。季語で「花」
といえば桜のことです。

滝廉太郎の「花」も桜が爛漫と咲きそろった春の隅田川
の情景を歌っていますね。彼は明治の西洋音楽黎明期を
代表する作曲家です。留学先のドイツで肺結核を発病、
帰国して療養しましたが、23歳で亡くなっています。

□◆□…優嵐歳時記(1063)…□◆□

  望月の輝きさやか花の冷え  優嵐

ナイターでテニスをしていたら、隣の小学校の体育館の
上に満月が昇ってきました。今日は黄砂もおさまり、少し
気温が下がっていたせいか、月は春の朧月ではなく、秋か
冬のような冴えた色で昇ってきました。

桜が咲き始めると、少し気温が下がる日があります。
一直線に暖かくなってしまうと、あっという間に開花が
進み、すぐに桜は散ってしまいます。花を長持ちさせ、
お花見の期間を長くしてくれるという意味で、花冷えは
歓迎です。

□◆□…優嵐歳時記(1062)…□◆□

  蒙古風山河すっぽり包みしを  優嵐

黄砂が一日中激しく、太陽が白く見えました。季語では
これを「霾(つちふる)」といいます。他にも黄沙、
黄塵万丈(こうじんばんじょう)、霾天(ばいてん)など
ともいい、蒙古風もそうした季語のひとつです。

モンゴルや中国東北部の黄土地帯で吹き荒れる春の季節風
が細かな砂塵を大量にまきあげ、日本まで運んでくる
現象です。「蒙古風」、なんだか、新しいモンゴル力士の
四股名にしてもよさそうです。

□◆□…優嵐歳時記(1061)…□◆□

  自転車を立ち漕ぎ少女の春休み  優嵐

学校に行っている人なら、今は「春休み」です。学年や
学校の間になる春休みは、宿題もなくのんびりした休み
でした。次の学校や学年、クラスに対する漠然とした
憧れや不安や期待はあり、それはそれで楽しいものでした。

自転車の立ち漕ぎは、坂道を登るときにパワーを得るため
によくやりました。それ以外では、かなり速度を落とし、
なおかつバランスを崩さずに走るためにもやりました。
立ち漕ぎをすると、重心がペダルの位置まで降りてくる
のでバランスが取りやすいのです。

自転車競技の選手は、自転車を止め、乗ったままで
バランスを保っていることができます。そんなことは
競技者としては当たり前のことなのでしょう。

□◆□…優嵐歳時記(1060)…□◆□

  春雷がまぶたの奥で光りけり  優嵐

昨日の明け方、雷がありました。まだ暗いうちで、目が
覚めたような覚めないようなぼんやりした中で、雷鳴を
聞いていました。雷は夏に最も多いため、季語としては、
夏のものになっています。

立春後初めての雷を「初雷」といい、啓蟄のころの雷は
「虫出しの雷」といいます。夏の雷のような激しさは
なく、雷鳴にもどことなく春の穏やかな優しさがあり
ます。

□◆□…優嵐歳時記(1059)…□◆□

  風をいま感じておりぬ雪柳  優嵐

春は梅、桜、モクレン、つつじ、と次々に咲いて句の
題材は豊富です。雪柳も特徴のある花で、枝に小さな
白い花をいっぱいにつけ長く伸びて垂れ下がります。
白雪と柳の連想からこの名がついたものでしょう。

いつもどこかゆらゆらと揺れており、小さな花の
モビールを見るようでもあります。バラ科で、中国名
では噴雪花というそうです。

□◆□…優嵐歳時記(1058)…□◆□

  汗ぬぐう背に幾度も鶯啼く  優嵐

増位山頂の自然歩道をひとまわり走ってくると、汗を
たっぷりかきます。随願寺の境内、梅林を走りぬけ、
山頂が折り返し点になります。梅林では、最後の梅が
真っ白な花を咲かせています。早く咲いていた梅は
もう花がすべて散り、葉が出始めています。

梅林周辺の山桜がちらほらと咲き始め、梅につづいて
しばらくは桜を楽しめそうです。梅林のかたわらには
山桜の巨木があり、本堂の前にはソメイヨシノの堂々
たる一本があります。

□◆□…優嵐歳時記(1057)…□◆□

  咲き初めし染井吉野に夕の月  優嵐

アパートの前のソメイヨシノが花を開き始めました。
昨夜は上弦でしたが、雨のために月は見えず、夕刻、
咲き始めた桜の向こうに今日の月を鑑賞しました。
山桜は、すでに盛りです。ソメイヨシノは桜としては
新参者ですから、昔の詩歌に詠まれているのはすべて
山桜とみなしていいようです。

現代人には桜といえば花がぎっしりついて葉は散った
あとから出てくるソメイヨシノのイメージが定着して
いるでしょう。花の色も山桜よりはいくぶん濃く、
華やかさではなんといってもソメイヨシノに勝る桜は
ありません。姫路城へお花見に行こう、と思います。

□◆□…優嵐歳時記(1056)…□◆□

  山肌に日ごと桜の灯りゆく  優嵐

朝からどんよりと曇っていましたが、昼ごろから雨になり
ました。周囲の山桜の開花が進み、あちこちが桜色に
なっています。あそこにも、ここにも桜があったのか、と
毎年この季節には思います。

咲き始めるとあっというまに花を開き、雨と風の多いこの
時期、はらはらさせてさっと散ってしまう、それもまた
桜の欠かせない魅力です。今週から来週にかけてが、
姫路ではお花見の時期ということになりそうです。

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