優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

□◆□…優嵐歳時記(31)…□◆□

    たゆたうは春の夕べの心地かな   優嵐

春らしい陽気が戻り、今日は気温があがりました。寒さが緩むと、
やはり気持ちもどこかゆったり、のんびりした感じになります。
今日の季語は「春の夕べ」です。「春夕(しゅんせき)」「春夕べ」
などとも言います。

清少納言は「秋は夕ぐれ」といいましたが、これを受けて後鳥羽院
は「見渡せば山もと霞む水無瀬川夕は秋と何思ひけむ」と詠んで、
春の夕べをたたえました。私も後鳥羽院派です。つるべ落としに日
が落ちて、あっと言う間に暗くなってしまう秋の夕べよりも、日没
後も長く明るさが続く春の夕べは、気分をのびやかにしてくれます。

仕事を終えてMTBで職場を出ると、ちょうど山の端に夕陽がかかろう
としていました。春の寒さもやわらぎ、風もない、こんな夕暮れ時
はペダルを踏むスピードも少し緩んで、どこかおおらかな気分です。
空全体に薄いベールがかかったような淡い春の夕空を眺めながら、
家に向かいました。

□◆□…優嵐歳時記(30)…□◆□

    料峭に揺れる梢の光かな  優嵐

少し暖かさが戻ってきましたが、今日も風が冷たい姫路でした。日
の暮れるのがすっかり遅くなり、春分の日も近いことを感じます。
そろそろお花見の予定が話題に上リ始めた今日このごろです。私た
ちにとって第一のお花見の会場は、なんといっても姫路城です。満
開の桜に映える白亜の大天守。夜桜も、ライトアップされた天守閣
との取り合わせが幻想的で、実に素晴らしいのです。

「料峭(りょうしょう)」は春風が肌に寒く感じられるさまを表し
た季語です。職場の前には欅の街路樹があります。葉を落とした欅
は箒を空に向かって立てたような樹形をしています。芽吹きにはま
だ早く、裸の枝が今日の強い風に揺れていました。

□◆□…優嵐歳時記(29)…□◆□

    頂上の岩に腰かけ囀りを  優嵐

鳥が繁殖期に出す特別な鳴き声を「囀り」と言います。特徴的な美しい
声で、雄が縄張り宣言と求愛をこめて歌います。春の代表的な季語と
いえます。

今日はオートバイで丹波から北摂周辺を回ってきました。途中京都府
のるり渓に立ち寄り、そこから掃雲峰(723m)に登ってみました。コナラ、
クヌギ、リョウブなどの間を縫って意外に急な斜面が続いています。
昨日の雪があちこちに残っており、頂上近くでは雪を踏みしめて登る
ことになりました。

頂上のすぐ東に天狗岩と呼ばれる巨岩があり、そこからの眺めは抜群
です。京都府北部から滋賀、福井へと続く山なみが見渡せました。今日
はこのあたりもうっすらと雪化粧ですが、北陸へと続いていく山は
まだ深い雪の中です。すぐ前にアカマツの群落があり、その中で早くも
いくつかの野鳥が囀っていました。澄んだ鳴き声が空へ響いていきます。
それを聞きながら、明るい日差しの中で遠い雪山を眺める…。こういう
時間がとても好きです。

□◆□…優嵐歳時記(28)…□◆□

    紅梅や茅葺色の山の村  優嵐

昨日、オートバイで訪ねた岡山県の八塔寺は、今から1200年前大寺院
が建立され、山岳仏教の聖地として栄えた歴史を持っています。一時
は七十二の僧坊が立ち並んでいたそうです。しかし、その後何度も兵火
にあい、今は茅葺の民家が山間に残るだけになっています。まだ木々
の芽も草の芽も出ておらず、あたりは茅葺屋根と同じ色をしていました。

昨日はあちこちで梅を見ました。八塔寺でも雪が舞う寒いお天気でした
が、オートバイを停めた一角には濃い色の紅梅が咲いていました。俳句
で単に「梅」と言えば、白梅を指します。白梅には凛とした気高さを感
じる一方、紅梅には柔らかな艶めいたものがあります。その紅梅へ春の
雪です。しばらくそのコントラストを楽しみました。

□◆□…優嵐歳時記(27)…□◆□

    春北風へ一気にバイク加速する  優嵐

今日も寒い一日でした。春になってからも一時的に西高東低の冬型
の気圧配置に戻ることがあります。そのときに吹く春寒の北西風の
ことを「春北風(はるきた)」と呼びます。日差しが明るいだけに
いっそう寒さが身にこたえます。

その寒さにもめげず、今日は岡山県境を越えてオートバイを走らせて
きました。国道250号で海沿いを走り、日生へ。この道は七曲と呼ばれ、
海沿いのカーブが連続し、瀬戸内海国立公園の眺めが楽しめる絶好の
ツーリングルートです。あちこちで梅が咲いていました。途中雪が
舞うツーリングでしたが、それもまた、楽しいものでした。家に戻る
道すがら、山の上にカスタードクリームのような大きな満月が出て
いました。

□◆□…優嵐歳時記(26)…□◆□

    啓蟄の田へ平らかに日の当たる  優嵐

今朝は冷え込みました。姫路では明け方の最低気温が氷点下3度。
今日は二十四節気の「啓蟄」です。冬の間地中にすごもりしていた
虫、蛇、蛙などが暖かくなり地上に出てくるという意味です。今日
はさすがに蛇も蛙ももうしばらく地上に出ることを見合わせたで
しょう。

朝、通勤途中の田んぼでツグミを見かけました。朝日を浴びながら
数歩歩いてはじっと考えるようにたたずんでいます。鳥の顔という
のは表情がないだけに、妙に哲学的に見えるから不思議です。彼ら
も間もなくシベリアへ繁殖のために帰っていきます。

□◆□…優嵐歳時記(25)…□◆□

    スノーボードざっくり削る春の雪  優嵐

今日も寒い一日でした。とおりのぞく陽の光は明るく、暖かそうに
見えるのですが、空気は冷え切っていました。金沢では昨夜から雪
だそうです。姫路でも昼過ぎには雪が舞いました。

この句は昨年の3月、北海道の羊蹄山にテレマークスキーに出かけた
ときのことを詠んだものです。麓のゲレンデではボーダーが春の日差し
を浴びながらスノーボードを楽しんでいました。

北海道あたりではゴールデンウイークまで春スキーが楽しめます。
もちろん、日差しが強くなりますから、紫外線対策はしっかりやって
おかないと、すさまじい日焼けに見舞われますが。以前、信州で
ゴールデンウイークにスキーをした時は、バンダナで覆面をして滑り
ました。

□◆□…優嵐歳時記(24)…□◆□

    春寒しイギリス土産の紅茶飲む  優嵐

3月に入ってから意外に寒い日が続いています。2月が暖かかった
ので、随分寒いように感じますが、3月初旬の平均からすれば特別
寒いというわけではないのかもしれません。似た季語に「余寒」や
「冴え返る」がありますが、それぞれの季語に微妙な違いがありま
す。また「春寒(しゅんかん)」と詠めば、そこに言葉のひびきの
違いが生まれます。この微妙な差を楽しむのが俳句だともいえます。

職場にアルバイトに来ている女子大生から、紅茶をもらいました。
卒業旅行で3週間イギリスへ行ってきたのです。2年間アルバイト
に来てくれていた彼女も間もなく社会人です。

□◆□…優嵐歳時記(23)…□◆□

    鳥曇旅する心たずさえて  優嵐

秋から冬にかけて日本に渡ってきていたガン、カモ、ツグミなどの
冬鳥はそろそろ北方へ帰り始めます。そのころの曇り空を
「鳥曇(とりぐもり)」と言います。

姫路でも、市川の下流域や桜山貯水池には毎年多くの鴨類が渡って
きます。マガモ、ヨシガモ、キンクロハジロ、オナガガモなど、
見通しのよい水面であまり動きもなく、バードウォッチングの初心者
でもすぐに見分けられます。ツグミはこれからの時期、開けた田や
芝生の上などで胸を張るようにしてちょこんと立っている姿がよく
見られます。

小さな身体で何百キロという距離を飛び、彼らは北へ帰って行きます。
そして、それとまるで入れ替わるようにツバメがやってきます。姫路
では、冬鳥であるジョウビタキは3月中には姿を消します。ツバメが
初めて姿を見せるのは、例年3月の半ばです。

□◆□…優嵐歳時記(22)…□◆□

      今日の季語【三月】


    三月の白菜しゃきしゃき食みにけり  優嵐


今日から三月です。「白菜」は冬の季語ですが、この句では季語として
扱わず、「三月」が季語になります。夕食に八宝菜を作り、白菜を
入れました。冬の間、柔らかな歯ざわりで鍋物に大活躍だった白菜
ですが、八宝菜ではしゃきっとした歯ごたえで、確かな春を感じました。

今日、関東地方は真冬なみの冷え込みで、春の雪が降ったようです。
姫路でも朝からどんよりとして空気が冷たい一日でした。今年は立春
から暖かい日が続いていただけに、戻り寒波が今頃になってやって
きたのか、という思いです。

「暑さ寒さも彼岸まで」と言うように、三月はまだ暖かさと寒さが
交互にやってくる月です。それでも、梅に続いて椿、菜の花と春の花
が開き、佐保姫(春の女神)がクライマックスに向かって走り始める
季節でもあります。

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