優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

□◆□…優嵐歳時記(1139)…□◆□

  頂の風遠くよりほととぎす  優嵐

増位山にはいろいろな野鳥がいます。春から夏にかけて
もっともよく聞こえるのはウグイスの声です。最近は
よくホトトギスを聞きます。古くから和歌に詠われて
おり、百人一首の「ほととぎす鳴きつる方をながむれば
ただ有明の月ぞ残れる」(後徳大寺左大臣)などが有名
です。

春の花、夏のほととぎす、秋の月、冬の雪が四季を代表
する歌の題詠だったといいます。夏鳥として九州から北
の山林に渡ってきます。鳴き声は「テッペンカケタカ」
「特許許可局」などさまざまに聞きなされています。

□◆□…優嵐歳時記(1138)…□◆□

  半袖の手首に涼しブレスレット  優嵐

午前中はややどんよりとしていましたが、午後から青空
が広がりました。明後日が夏至で、昼過ぎの日差しの
まぶしさにははっとするものがありました。

仕事の関係でたずねた先でアイスコーヒーを出して
いただきました。ふだんは夏でもホットコーヒーを飲む
私ですが、アイスコーヒーというのもたまにはいいもの
です。氷が触れ合う音が涼しく、皮膚感覚以外にも
さまざまなもので感じられる涼しさが夏の楽しさです。

□◆□…優嵐歳時記(1137)…□◆□

  梅雨晴れ間野菜果物買出しに  優嵐

食料品の買出しにはいつでも行きますが、しっかり雨が
降っているときなどは、できれば避けたいと思います。
スーパーのカートは使わず、籠を手に歩き回ります。
その方が機敏に動けるから好きなのです。

今では生鮮食料品も輸入物やハウス栽培のものなど
いろいろ出回って、旬の雰囲気はかなり薄れています。
しかし、それでもやはり、今ごろの果物コーナーでは
さくらんぼや枇杷、スイカが並び、夏を感じさせて
くれます。

□◆□…優嵐歳時記(1136)…□◆□

  青梅雨や街灯のはや点り初む  優嵐

一日雨が降り続いていました。静かな雨の一日、家の前の
紫陽花のピンクがしだいにはっきりとした色になってきて
います。雨雲が低く垂れこめ、周囲の低い山も中腹から上
は雲の中です。日差しがないため日中でも部屋の中は
薄暗く、街灯が早くから点り始めていました。

青梅雨とは、新緑に降りそそぐ梅雨、という意味です。
緑が雨に洗われてさらにその色が増して感じられるという
ところから生まれた言葉です。

□◆□…優嵐歳時記(1135)…□◆□

  シニアカー荷籠にキャベツ載せて行く  優嵐

キャベツはヨーロッパ原産で、江戸時代に輸入され、明治に
入って一般に普及しました。日本人の嗜好にも日本の風土
にもよくあい、いまでは全国で栽培されています。近頃は
一年中店頭で見られますが、需給がもっとも多いのは夏
であり、夏の季語になっています。

シニアカーとは、福祉用電動車両のことで、長い距離を
歩くのがつらくなった高齢者の方が足代わり使っています。
畑の行き帰りにも使われているようです。新鮮なキャベツ
を三つ籠に入れてにこにこと帰っていかれる姿を目に
しました。

□◆□…優嵐歳時記(1134)…□◆□

  苗色の播州平野梅雨に入る  優嵐

今日は朝から素晴らしい晴天です。一週間後が夏至です
から、太陽の輝きは強烈です。水道水がやや生温く感じ
られるようになったことも、日差しの強さを表しています。
外気温はそれほどでもないのに、直射日光の強さでここ
まで温められたものでしょう。

今日の句は増位山の山頂から見渡した情景を詠んでいます。
冬は冬枯れの、早春には下萌の、つい先日は空を映す代田
の様子が楽しめましたが、今は植えられた苗が柔らかな
緑色で田を覆っています。

□◆□…優嵐歳時記(1133)…□◆□

  雨去れば早苗田のまた静かなり  優嵐

数日前の雷雨のあとの田を詠んだ句です。近所の田植えも
ほぼ終了し、時期が早かった田では苗がかなり育って
います。植えられたばかりの田は「植田」「早苗田」と
いいます。

この時期はまだ田の水面が苗の間に広々と見えます。
雨に打たれて水面が波立ったり、晴天のときには空や雲
を映していたり、この時期ならではの情景が楽しめます。
稲が順調に生育して水面を覆いつくすようになれば
「青田」ということになります。

□◆□…優嵐歳時記(1132)…□◆□

  降り初めし雨に紫陽花色づきぬ  優嵐

近畿地方は今日梅雨入りしました。去年より一週間ほど
遅い梅雨入りです。朝から雨になり、一日中降り続いて
今も降っています。気温もあまりあがらず、梅雨らしい
一日です。

日中も部屋の中が薄暗く、文字を読むにはスタンドの灯
が必要でした。窓から見える道路のそばに紫陽花が
植えられています。やはり雨が似合う花です。

070614

□◆□…優嵐歳時記(1131)…□◆□

  頬杖のネットサーフィン桜桃忌  優嵐

今日は太宰治の命日です。晩年の短編『桜桃』にちなみ、
「桜桃忌」と呼ばれます。生涯に五度の自殺未遂を
繰り返した末、1948年、愛人とともに玉川上水で入水
自殺しました。38歳でした。典型的な”破滅型の天才”
といえるかもしれません。

優れた才能を持ちながら、いや、それゆえに才能に食い
尽くされるというか、才能という荒馬を乗りこなせずに
振り落とされるというか…。天才は天才ゆえに凡人には
見えないものが見え、そのための苦しみもまた大きい、
そんな気がします。

□◆□…優嵐歳時記(1130)…□◆□

  髪切りぬ六月の風軽やかに  優嵐

「六月になったなあ」と思っていたら、いつのまにか
もう半ばになっています。ということは、間もなく今年も
前半が終了です。髪を切ってすっきりしました。

六月は梅雨の月ですが、最近は梅雨らしいお天気になる
のが遅くなっているように思います。前半は空梅雨気味
であまり雨が降らず、七月になってからまとまった降り
になります。梅雨明けも遅くなって、盛夏と呼べる時期が
短くなっている気がするのです。

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