優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

□◆□…優嵐歳時記(1078)…□◆□

  ほぐれ初む木の芽の空に点々と  優嵐

木の芽がやわらかくほぐれて、若葉を開き始めています。
高い木を下から見上げると、空を背景に小さな葉が伸び
始めているのがわかります。楓は秋の紅葉も見事ですが、
この時期の若葉の美しさにも感嘆します。

今日は気温が下がり、午後から雨になっています。
いいお天気の戸外では、もう半そででもいい日が続くか
と思えば、今日のようにコタツが欲しいような気温に
戻ったりと、寒暖の差に体調を崩しやすいころです。

□◆□…優嵐歳時記(1077)…□◆□

  春筍ちいさき皮を残しおり  優嵐

筍は初夏が最盛期で、夏の季語になっています。しかし、
西日本では晩春から掘られ、市場にも出回ります。
まだ土の中にいる柔らかな筍を掘りだしたものは、
この時期ならではの味覚です。

増位山の自然公園は地元の方たちが管理されています。
昨日は、竹林で筍掘りがおこなわれたようです。
掘り返された土の横に筍の皮が数片落ちていました。

□◆□…優嵐歳時記(1076)…□◆□

  桜蘂降るや小雨の月曜日  優嵐

桜の花びらが散ってしまったあと、それを追うように
桜の蘂(しべ)やがくが散り始めます。花の季節が
終わり、外は雨。祭の後のような虚脱感も漂います。
それでも木々の若葉がほぐれ始め、羊歯も新しい葉を
開くべく、ゼンマイのような若芽を伸ばしています。

芽がしだいにほぐれて小さな葉がそれなりの形を
とって開いていくのを見ていると、自然はうまく
できているものだ、と感嘆せずにはいられません。

□◆□…優嵐歳時記(1075)…□◆□

  やまざくら花ぬぎすてて森に戻る  優嵐

山桜の花はすっかり散り、遠くからではもうどこに山桜
があったのかわからなくなっています。桜の季節がやって
くると、あちこちでまるで灯りが次々点って行くように
桜が花を咲かせ始めます。

日当たりのいいところ、朝日の差し込む尾根筋などから
咲き始め、順に花を開いていきます。葉の赤さもよく
目立ち、森の木々の中でそこだけ浮き立って見えます。
しかし、「散ればこそ…」の桜、役割を終えると花の衣
をさっと脱いで、もとの森の中へ溶け込んでしまいます。
山はそろそろ新緑の季節です。

□◆□…優嵐歳時記(1074)…□◆□

  銀杏芽吹く光る川浪背景に  優嵐

昨夜はかなり強い風雨でした。染井吉野は咲いていますが、
山桜の残っていた花びらはこれですっかり吹き払われて
しまいました。桜は平安の昔から詩歌に数多く詠まれ、
季語の背景にもその長い伝統が織り込まれています。

『伊勢物語』の八十二段に、惟喬親王の水無瀬での鷹狩で
在原業平が、「世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心は
のどけからまし」 と詠んだ有名な歌があります。それに
こたえて別の人が、「散ればこそいとど桜はめでたけれ
憂き世になにか久しかるべき」 と返しています。
どちらも桜のありさまと、そこに寄せる日本人の思いを
代表する歌だなあ、と感じます。 

雨上がりの今朝、ベランダから見える川べりの銀杏の
若緑色がきれいでした。秋の輝く黄葉もいいですが、
芽吹きの瑞々しさも実にいいです。

070414

□◆□…優嵐歳時記(1073)…□◆□

  池の面を風が導く花筏  優嵐

「花筏」とは、水面に散った桜の花びらを指した季語です。
今日は風が強く、桜吹雪が舞い散っていました。夜に
なって雨も降り始め、姫路周辺の桜の季節はこれで終わり
です。八重桜は、まもなく咲き始めますが、「桜」とは
また一味違う花です。

萌えだした落葉樹の若い葉のさまざまな色に彩られ、山が
美しい季節です。山桜もそうですが、最初は赤い色をして
いる葉が少なくありません。また、雑木林の代表である
コナラは、芽吹きのときには淡いけぶったような銀色を
しており、独特の色合いを見せてくれます。

070413

□◆□…優嵐歳時記(1072)…□◆□

  風が散らし風が集めし花の屑  優嵐

散った桜の花びらのことを「花の屑」といいます。屑
とついても雅な雰囲気です。桜の下はいずこも花びらが
散り敷いており、風に飛ばされて周囲の生垣や石段など
あらゆるところに散っています。

ひとひらの花びらが風に乗って、ふわふわと空中を漂って
いるのはいいものです。あの色がまたいいのでしょう。
あれが桜色でなく、真紅とか黄色というのでしたら、
風情が全く異なるものになるに違いありません。

070412

□◆□…優嵐歳時記(1071)…□◆□

  われに降る桜吹雪を心地よく  優嵐

姫路城へ行ってきました。満開から「落花さかん」へと
移っていく時期です。少し風が吹くと、花吹雪が沸き起り、
散り際がこれほど愛でられる花はやはり桜以外にはない、
と思いました。

三の丸広場の桜並木の下をぐるりとひとまわりし、お堀
を覗き込んでそこに散っていく花吹雪も楽しみました。
なぜかお堀に黒鳥がいて、驚きました。白鳥も何羽か
いますが、同じようにお堀を棲家としているのでしょうか。

070411

□◆□…優嵐歳時記(1070)…□◆□ 

  風吹いて花散る里となりにけり  優嵐

山桜の季節がそろそろ終わろうとしています。山から
桜の色が消えつつあり、変わって芽吹き始めた若葉の
柔らかな緑色が主役になろうとしています。このころの
山は日に日に色が変わり、見ていて飽きません。

アパートの前の染井吉野もさかんに花びらを散らして
います。花散里といえば、『源氏物語』です。源氏が
詠んだ歌「橘の香をなつかしみほととぎす花散る里を
たづねてぞとふ」にちなむ巻で、ここに源氏の妻の
ひとり”花散里”が初登場します。

□◆□…優嵐歳時記(1069)…□◆□

  しぐれ去る明るき空へ燕来る  優嵐

例年、三月下旬には燕の姿を見るのですが、今年は四月
に入っても姿を見かけず、遅いなと思っていました。
今日、コンビニの駐車場でひらりと身体をかわして飛ぶ
あの独特の飛翔を見ました。「やっと来たか」とうれしく
なりました。

渡り鳥の飛来時期も花の咲く時期も毎年完全に同じでは
ありません。昨年は彼岸過ぎに初めて燕を見て、山桜の
開花は染井吉野よりも後でした。梅の開花が遅く、山桜
と重なって咲いていた記憶があります。

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