優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

□◆□…優嵐歳時記(2042)…□◆□

  水底に冬至の光差し入りぬ   優嵐

昨日は冬至でした。部屋から夕陽が沈んでいくのを見ながら、夏とのそのあまりの場所の違いに、驚いていました。これから夏至までまた日中の時間が少しずつ長くなっていきます。伸び縮みするゴムひものようなものですね。そのゴムひもの中で私たちは暮らしている。

年賀状の住所を印刷して、ようやく手書きでメッセージを書き添えるところまできました。あとは、遠方の方から書いてできれば県外は25日までに出し、姫路近隣は28日ごろまでに書ければいいか、と目論んでいます。

オークションの最後の商品を昨日発送し終え、「はー、終わったぜ」という心境です。クリスマスイブが今年最後の粗大ゴミの日なので、そこで最終的な整理を終えます。すっきりして新年です。子どものときのようにお正月だからといってことさらどうだということもないのですが、こういう区切りは気持ちを切り替えるのにいいですね。


<織りあがっていく>
いろいろなものが絡み合っている
それがわかるんだ

あれとこれとそれと
複雑なようでいて
実はみんな調整されている

なるようになり
あるべきものはあるべきように落ち着く
じたばたする必要はない

おまえは大きな織物の一部であり
それを信じてまかせておけばいい

一本の糸として
やらなくちゃいけないことはある
けれどどんな織物ができあがるのか
そんなことは心配しなくていいんだ

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□◆□…優嵐歳時記(2041)…□◆□

  五、六人それほどがよき忘年会   優嵐

日曜日、アートセラピーのあと、『雅頌』というもんじゃ焼きの店で忘年会をやりました。テーブルにほどよく座れる五人で、これくらいの人数が話もよく見えていいものです。もんじゃ焼きというもの、以前千葉へ行ったとき友人に連れて行ってもらって食べたことがあり、それ以来でした。発祥地は関東で、お好み焼きはここから派生した模様です。サービスでボトルワインを一本つけてくださいました。

アルコールを飲むと眠りと夢に影響があるというので、このところ半年以上全くお酒を飲んでいませんでした。しいて断酒していたわけではありません。もともとアルコールには弱く、ビールの小グラスとワイン一杯で顔が真赤になりました。以前、やや飲めるようになっていたのですが、肝臓は正直です。


<英雄>
神話の英雄は
ある日その名を呼ぶ声を聞く
異世界への冒険をうながす声を

一度はそれを拒むかもしれない
しかし、最後には冒険に旅立つ
多くの危険と難題が待ち受ける世界へ

英雄とは誰か
魔物の住む世界へ赴く彼か
宇宙を飛び回る彼女か

違う
英雄は故郷をあとにして
苦しい旅を続ける
あなたでありわたしである

英雄は困難な旅をやり遂げて
ついに故郷に帰還する
素晴らしい何ものかを携えて

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□◆□…優嵐歳時記(2040)…□◆□

  厳寒の深く晴れにし空仰ぐ  優嵐

寒波の影響で冷え込みが続いています。今年最後のアートセラピーに参加してきました。前半で、この一年を振り返ってという課題で絵を描きました。今年は私にとっては大きな転機になった年でした。二月から三月にかけてまず最初の転機がやってきました。

進化というのは徐々に進むのではなく、あるとき急激に変るといいますが、今年の変化はそういう感じでした。何か具体的なきっかけがあったというわけではありません。ただ、水面下では知らない間に何かが起こっていて、それが一気に露わになって、本人にも予測できないような形になったのだと思います。

あのとき、「もう死んでもいいや」と書きましたが、実際、人生最大の課題をひとつクリアしたと思いました。これが生きることの最大の目的だったら、ゴールに到達したじゃないか、と思ったのです。被害者意識から解放され、同時に自分が単なる偶然によって産み落とされた肉の塊ではないことに気づきました。これは表裏一体で、自分が肉体を超越した存在だと悟ったから、被害者意識を乗り越えることができたとも言えます。

物心ついたときからその二つがずっと心の中にありました。自分はどこからきてどこへ行くのか、何のために生きているのか、そういうことをずっと考え続けてきました。どんなに面白おかしくやろうと思っていても常にそのことが頭のどこかにあり続けました。家庭環境の悩みは巨大な足枷だと思っていましたが、ひっくり返してみるとジャンプ台でもあったのです。

いろいろな導きがあってここまでたどり着けたと思います。その意味ではいままで出会ったものすべてに(よかったと思えることも最悪だと思えたことも)感謝したいと思います。良いとか悪いとかいうことは、その時点での自分という限られた視点の判断によるもので、簡単には決められません。そのことも教えられたことでした。

生きる目的というのは、何か凄い金銭的、社会的な名誉、名声、成功をおさめるといった類のものではない、と今では思います。また、世間でよく言われている、”愛する人と家庭を築いて、可愛い子どもを育てて”といった「本当の幸せ」という類のものでもない、と思います。それが何かはその人が探求していくしかないし、人それぞれみんな違うのです。


<宝物>
真実はあまりに身近にあって
だから誰も気づかない

握り締めているものが宝石だとは
誰も思わない

だからどこかへ探しに出かける
あの山の向こう
あの海を越えて
あの空の果てへ

実はそんなところに宝物はない
宝物はずっと自分とともにあった
古ぼけたザックの底に転がっていた
何の変哲もなさそうな石ころ
それが宝物だったのだ


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□◆□…優嵐歳時記(2039)…□◆□ 

  闇の底そくそくと来る霜の声   優嵐

昨夜は冷えたようです。日中も北風が吹いて五度前後までしか気温があがりませんでした。この冬の寒波第一陣です。雪の多い地方では雪はどうだったのでしょう? 「霜の声」とは霜の降る気配を感じ取った語です。声がするわけはないのですが、それを声としているあたりに日本人の微妙な感覚を見ます。

ようやく年賀状の準備ができました。母の年賀状の印刷も依頼されていたものですから、そちらを先に片づけて、やれやれと思っているうちに今になってしまいました。もう年賀状の受付が始まっており、郵便局で受付箱に積まれた年賀状を見ると準備怠り無い人はあるものだ、と感心します。

アイデアが固まって下書きをし、試し刷りをしたところで問題が発生しました。来年は寅年なので、虎のイラストを使ったのですが、虎の黄色が緑色になってしまうのです。インクを確認してみたら、なんと黄色のはずのインクが緑色に変色しています。

幸い買い置きがあったのでそれに入れ替えましたが、残存インクがあってすぐには黄色くなってくれません。何枚か紙を無駄にして印刷するうち虎の顔が黄色く変りひとまずほっとしました。


<真冬>
頬にあたる風の冷たさに
真冬を感じた
積もった落葉が吹き飛ばされて
はやくも地面がのぞいている

きっぱりと
すっきりと
真冬がぼくの後をついてくる

歩く速度を緩めるな
そのまままっすぐに
ためらわず行きたまえ


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□◆□…優嵐歳時記(2038)…□◆□

  山上の池がたたえし初氷   優嵐

今朝は冷え込みました。寒さにも暑さにも比較的鈍感な私ですが、今朝は起きたとたん、これはちょっと寒いぞと思いました。増位山の駐車場のそばにある蛇ヶ池に氷が張っていました。お昼近くになってもまだ残っていましたから、かなり冷えたのです。

いつもは薄いフリースの上にウインドブレーカーをはおっているだけですが、今日は薄い中綿が入っているジャケットを着ていきました。歩くとウインドブレーカーでも汗ばんでくるのは確かです。頬に当たる風が冷たく、心地よかったですね。

朝方、空を飛んでいる夢を見ていました。空を飛ぶ夢の話はよくききますが、生身であれほどはっきりと空中を飛んでいるという夢は初めてです。雲の上、飛行機に乗って雲を突き抜けた、あの輝くような明るさの中にいました。そして、誰かがいっしょにいるのです。

考えてみると、先日から見るこうした夢のときはいつも誰かがそばにいます。父の夢のときもそうでした。その誰かを「誰」と特定することができません。老若男女の区別さえ定かではない存在で、でも確かにそこにいるのです。悪意や脅威は感じませんから安心できる存在なのだと思います。

体外離脱で有名なロバート・モンローは、人間はほぼ全員体外離脱の経験があり、それは眠っているときに起こると言っています。飛ぶ夢はまさにその体験であり、落下するのは身体に戻るサインだというのです。普通の意識がそれを処理できないので飛ぶ夢になっているのだとか。

今朝は雲の中に入って目が覚めました。今度はあの「誰か」が誰なのかを探ってみたいものです。私のレベルでは「誰」と判別するのが難しいような存在なのかもしれませんが。


<飛ぶ>
紺碧の空の中にいた
足元を見ると遥か下に
輝く白い雲がある

何もかもが光り輝いている
この軽やかさはどうだろう
体重がなくなってしまったみたいだ

ヘリウムの風船になったら
こんな気持ちだろうか
自由自在
宙返りだろうがなんだろうが
なんだってできる

私を縛っていたものは何なのか
あの重さは何だったのか
解き放たれるとはこういうことか


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□◆□…優嵐歳時記(2037)…□◆□

  冬陽さんさん地にくつろぎし葉の上に   優嵐

今年もあと二週間ほどになり、寒波がやってきました。寒くてたまらないというほどではありませんが、これを機会に本式の炬燵を登場させました。部屋は真冬仕様です。増位山で今日も猪に会いました。今日は二頭揃って谷筋を走っていくのが見えました。番いかと思います。

mixiに参加しているのですが、少し前に表示が変り「mixiボイス」というものが加わりました。Twitterを真似たもののようですが、mixiの表示画面で自分の日記(私の場合はこのblog)やレビューの更新履歴が載っていたところがこれに変ってしまいました。そして表示されるのが他の人が書き込んだ「つぶやき」です。

これが、どうにも鬱陶しいのです。なぜ鬱陶しいかといえば、「電車に乗った」とか「今どこそこにいる」というようなことが羅列されるだけだからです。消したいと思いヘルプを見ましたが、「mixiボイスを非表示にする方法はありません」と運営局のとりつくしまもない答えが載っていました。少なくとも表示するかしないかくらい自分で選べるようにして欲しいものです。

同じように考えている人はかなりあるようです。mixi内部に■ mixiコミュ:mixiボイスって、いらなくね?というコミュニティが立ち上がっており、ここを参考に操作すると簡単に非表示にすることができました。ニュースやアプリといったごちゃごちゃとしたものを非表示にする方法も紹介されており、すべてまとめて取り入れ、今は随分すっきりしています。

以前もmixi画面の広告を非表示にしたいと思い、検索でその方法を知りました。動画の広告というのは神経をちらちらと刺激して、見たくないと思っていてもひきつける効果があります。mixiボイスも同様で、読みたくもないのに読まされる(短い日本語だから、瞬時に意味が脳に入ってしまう)というのが多くの人の苛立ちを誘うのだと思います。

これから先、紙媒体がネットに移るにつれ、広告もさらにネット上に溢れるようになるでしょう。そして、それに対抗して広告を非表示にする方法というのが共有されるようになっていくのではないか、と思います。見たくないものを無理矢理見せることはできなくなるということです。そうなると、広告はどうなるんでしょうね。


<押入れ>
本式のこたつを出して
真冬以外に使っている座椅子を
押入れに仕舞った

押入れとは本来このように
使うものなのだ
ものを入れるスペースが
いつもどこかにあるところ

鞄にパンパンにものを入れたら
それ以上何も入れられない
常に何かを入れる余裕があるところ
それが押入れ

心の押入れもそのようにしよう
ただものを放りこんで
忘れていたら
空気が淀んでしまう


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□◆□…優嵐歳時記(2036)…□◆□

  播州の山も眠りに入りにけり   優嵐

冬の山を季語では「山眠る」と言います。深い雪に埋もれる山はほんとうにぐっすり眠っている感じですが、暖かい地方でも葉を落とした森は休息している、という気がします。姫路周辺の山の落葉はほぼ終り、厚く落葉が堆積しています。

今日も増位山で猪に会いました。先日出会ったのと恐らくおなじ個体でしょう。この間は私が上から見下ろす形でしたが、今日は猪が見下ろしていて、音に目を向けた私と目があいました。時々、住宅街で人を襲う猪の話を聞きますが、ああいうときは猪自身もパニックになっているのではと思います。山は猪のテリトリーですから、静かに去っていきました。

先日、横浜で「モトヤ」というパンケーキ・リストランテに入りました。ランチにビーフのデミグラスソースがかかったオムレツを食べました。それに3枚パンケーキがついてきて、十分お腹がいっぱいになります。可愛らしいウエイトレスの女性が注文をとりに来てくださいました。

彼女のルックスがいいのは確かなのですが、それ以上にとても感じがよくて、そのわけを考えてみると、彼女の笑顔にあると気がつきました。とても楽しそうで、心からこの仕事が好きで楽しんでいる、そういう雰囲気が彼女から伝わってくるのです。人は楽しいと思える仕事をすべきだ、と思いました。それが自分自身だけでなく世界を幸せにします。


<仕事>
楽しい仕事をするのではなく
楽しめる仕事をする
それが多分一番大事なこと

お金がたっぷりもらえたり
楽だったり
安定していたり
社会的ステータスが高かったり

そういうことも仕事には
大事かもしれない
しかし、それは仕事の根幹ではない

何を楽しめるかは人によって違う
あなたが楽しいと思うことが
あなたの子どもにとっては
苦痛かもしれない

人には人の数だけ世界があり
人はみんな違う
たとえ親兄弟であったとしても

自分が楽しめることを探り
それに出会えたとしたら
ああ、どんなにか幸福なことだろう


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□◆□…優嵐歳時記(2035)…□◆□

  星借りる如しクリスマスイルミネーション   優嵐

クリスマスはまだ十日ほど先ですが、クリスマスを迎えるころには、すでに街のクリスマス気分は飽和状態でしょう。横浜港はクリスマスの電飾で美しく飾られていました。どこの大都会もこの時期はそうした飾りつけで華やかです。

神戸のルミナリエに行ってきたという人の話を聞きました。阪神大震災の慰霊のために始まったこの催しですが、今やすっかり関西の年末の風物詩として定着している印象です。祇園祭が疫病退散を願って始まったように、あと何百年かたったら震災は行事の由来として語られるものになっている気がします。

イルミネーションで煌々と明るい大都会の空は星など見えません。本当の星空を見るには人の少ない場所へ出かけていかなければなりません。アフリカや中南米へ行ったとき、その夜空を見上げてあまりの星の数にぎょっとしたことを思い出します。これが本当の夜空なんだ、と思いました。


<にもかかわらず>
ひとつの出来事から
いろいろな詩を作ることができる
前向きにも
後ろ向きにも
詩を紡ぎだすことができる

言葉は魔術だ
一度解き放たれた言葉は
ひとつの網となって
わたしの心をとらえる

前向きな言葉は前向きに
シニカルな斜に構えた言葉はそのように
わたしの心をコントロールし始める

シニカルで皮肉な
世をすねたような言葉を
発することは実は簡単だ
そうして自分の心を後ろ向きにすることも

それがかっこよくて大人なことだと
思い込んでいるとしたら愚かしい

ユーモアとは
「にもかかわらず笑うこと」
本当の大人は
「にもかかわらず前向きでいられる人」

つらい、苦しい、悲しい、寂しい、腹立たしい
そんなことは当然だ
その苦さを味わうためにここへ来た
そのことを忘れているだけだ

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□◆□…優嵐歳時記(2034)…□◆□

  桂川ほとりに冬菜畑並べ  優嵐

冬菜は冬の菜類の総称です。すべてが枯れ色を見せる中、冬菜のゆたかな緑は新鮮です。横浜へ行っていました。途中の新幹線から見た風景です。新幹線で行き来する道中は、いつも何かしら句の材料となってくれるものと出会います。

いつもならこうした遠方へいくときは、そのついでにどこかへ立ち寄って観光をしてというようなことを考えて出かけるのですが、最近はどうも、とにかくゆったり眠りたいというのが先立って、早く起きるのも遅くまで起きているのもできれば避けたいという生活です。いつまで続く、このロングスリーパー。横浜の夜景はきれいでしたね。


<成長>
少年の背が伸びた
少年を青年に近づける
半年はそんな時間

幼女の髪が伸びた
幼女を少女に近づける
半年はそんな時間

おまえは成長したか?
成長した
老人が赤ん坊になるように


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□◆□…優嵐歳時記(2033)…□◆□

  もっちりと煎りし銀杏冬うらら   優嵐

まだ本格的なこたつは出していません。今年の一月ごろから妙に足の裏が暖かというかおかしな感じになってそれが今も続いており、あまり暖房が必要な感覚がないのです。もともと暖かい土地だからというせいでもありますが、真冬でも眠るときはこれまで暖房器具を使ったことがありません。

夢を見ていました。どこかの大きなターミナル駅のようなところにいて、そこでバーゲンセールをやっているのです。華やかなのに偽ブランド品を売るような怪しげな雰囲気です。私はそこで何かを忘れていることに気づき、焦っていました。それが何だったか、財布だったのかケータイだったのか…。

鞄の中を探ると見たこともない携帯端末が出てきました。それをあれこれ触っていると、背後から昔の同僚二人に話しかけられました。その瞬間、これは夢だ、と夢の中で思っていました。そして、夢なんだから夢から出れば忘れたか失くしたかと思っているもののところに戻れるはずだ、と考えたとたんに目が覚めました。

夢の中で「これは夢だ」と意識している状態を専門用語では「明晰夢」と呼ぶそうです。明晰夢を見た経験は初めてです。面白いですね。


<夢>
私たちは夢の中にいるのかもしれない
目が覚めて現実を生きていると
思っているけれど
本当は夢なのかもしれない

夢だとわからないうちは
現実だと信じているから
悩み苦しみ必死に何かにしがみつく

私たちがこの世の生を終わるとき
「ああ、これは夢だったんだ」
と初めて気がつくのかもしれない

そして
傍らの誰かから言われるのだ
「いい夢を見たかい?」と


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