優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

□◆□…優嵐歳時記(2120)…□◆□

  春の雹街それぞれの音立てて   優嵐

お昼過ぎに雹(ひょう)が降りました。空がやけに暗くなっていると思ったら雷鳴がしてばらばらと小豆ほどの雹が降ってきました。「雹」は直径5mm以上の大きな氷の粒や塊が降る現象です。初夏にもっともよく見られるため単独では夏の季語になります。

発達した積乱雲の中では激しい対流が生じ、雲の粒が上昇と下降を繰り返します。ここに過冷却した雲の粒がこおりつくと霰になります。さらに落下して表面に氷の膜ができて大きく成長し、上昇気流で支えられなくなると、雹になって降ってきます。

冬型の気圧配置が強まって三月半ばとは思えない気温になっています。これがお彼岸前の最後の寒波か、と思います。増位山では昨夜、雪になったようです。標高300mに満たない山ですが、それでも下界とはやはり温度差があります。


<ティーバッグの望み>
熱いお湯を注がれてお茶を作る
それがティーバッグの役割だ
抽出を終えたら捨てられる
捨てられるのは嫌だろうか

そんなことはない
それがティーバッグの望みだ
ティーバッグが恐れるのは
捨てられることではなく

お湯を注がれず
そのまま忘れ去られてしまうことだ
存分に使われることなく
朽ち果ててしまうことだ


今日の名言:世界を恐れるな。ただ自己を恐れよ。


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□◆□…優嵐歳時記(2119)…□◆□

  開き初む葉に三月の光さす   優嵐

一日晴れましたが、また雨になりました。朝方かなり風が強く、雨が窓をたたいている音が聞こえていました。日本はやはり雨の多い国だと感じます。三月は仲春の候です。仲春は啓蟄(3月6日ごろ)から清明(4月6日ごろ)の前日までをさします。寒さと暖かさが交互にやってくる時季です。

木々が芽吹き、草が青み、野鳥が囀り始め、終わりごろには燕がやってきます。生命の躍動が始まり、あらゆるものが寒さから解き放たれて動き始める、そうした明るい雰囲気が<三月>という季語の背景にあります。


<鎧>
眠りにつくと
やがて僕は肉体という鎧を脱ぐ

ふー、今日も一日ご苦労さん
しばし身体を伸ばして
のびのびとくつろぐ

厳密には肉体じゃないわけだから
身体を伸ばすとはいえないけれど
この世の定義にもっとも近いのはそれだ

肉体をまとうと重くて窮屈で
ぎくしゃくとした動きしかできない

あんなに軽やかで自由だったのに
なにゆえこんなものを、と思うだろう

宇宙服のようなものさ
異質な空間で得がたい経験をするためには
この宇宙服が必要なんだ

僕らはこの世というスタジアムに
肉体というユニフォームを着て出て行く
できるだけいいプレーをするために
肉体の手入れはするさ

けれど鎧も宇宙服もユニフォームも
僕たち自身じゃない
そのことは忘れるな


今日の名言:あなたがもし孤独を恐れるのならば、結婚すべきではない。


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□◆□…優嵐歳時記(2118)…□◆□ 【春北風】

  春北風見上げる森の梢ゆれ   優嵐

週明けは久しぶりに日がさしました。日曜日から気温が下がり、春がちょっと立ち止まっている風情です。「春北風」は「はるきた」あるいは「はるならい」と読みます。俳句ならではのルビですね。今日の句は「はるならい」と読んでください。

春の天候の特徴は、移動性高気圧と低気圧が日本列島のうえを西から東に交互に進んでは周期的に天気が変わることです。日本海を通りすぎた低気圧が北海道の東の海上に達し、西から移動性高気圧が進んでくると、一時的に西高東低の冬型の気圧配置に戻ることがあります。

春北風はこのときに吹く北寄りの風のことです。「ならい」は、もともと東日本の太平洋側、特に関東地方で吹く冬の季節風の呼び名でした。春先に吹くため「はるならい」といいます。


<光>
夜の浜辺
月の光と波の音が私を包む

目を閉じて
淡い朱鷺色の光を感じる

光は私の中に流れ込み
私はその流れと溶け合って
空間に浮かんでいる

もたらされる力は穏か
けれど
ゆるぎない


今日の名言:雨はあなただけに降り注ぐわけではない。


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□◆□…優嵐歳時記(2117)…□◆□

  鶯の声友として山路ゆく   優嵐

先日、初音を耳にしたと思ったら、ほぼ毎日聞こえるようになりました。散歩に行く自然歩道で囀っているのを聞きますし、間もなく家の近所でも盛んに聞こえるようになると思います。今は梅林を中心に歩いています。

このところ雨がちですが、梅の花の最盛期なので週末は観梅の人たちと出会います。増位山は梅も桜も楽しめ、さらに静かなのが何よりです。梅は立春前から咲き始め、今は一番遅く咲く八重の白梅が三分咲きくらいです。もっとも早く咲いた紅梅は散り始めています。


<考え、感じ、表現する>
重い石の蓋をあけると
地下に降りる梯子が見えた
暗いホールへ降り立って歩いていく

もうひとつ石の蓋があり
そこを開けてさらに降りると
明るい音楽ホールに出た

その空間の中で自分が内側から
充実してくるのがわかる

手を広げて待っていると
無数の金色の小さな玉が
降り注いできた

掌を通ってそれらは
私の全身を巡り
エネルギーをもたらしてくれる

私に重なるように静かな
力強い存在がいる
エネルギーはそこからも溢れ
私の身体に注がれる

それはなつかしいつながり
安心して万能で恐れることはない
考え、感じ、表現すること


今日の名言:常にあなた自身の中に答えを求めなさい。 周りの人や、周りの意見や、周りの言葉にまどわされていはいけません。


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□◆□…優嵐歳時記(2116)…□◆□ 

  啓蟄の大地をつつみ雨の降る   優嵐

昨日は二十四節気の啓蟄でした。春は仲春に入って来ています。二十四節気のうち春に相当するのは、次の六つです。

早春:立春(2月4日ごろ)と雨水(2月19日ごろ)
仲春:啓蟄(3月6日ごろ)と春分(3月21日ごろ)
晩春:清明(4月5日ごろ)と穀雨(4月20日ごろ)

二十四節気に注意していると、そこを境に五感で味わえる季節が変わっていくのがわかります。ここ数日、ぐずつきがちのお天気が続き、これも春らしさのひとつだと感じます。

昨日、「クロスジェンダー・パフォーマンス」について書き、欧米のラブソングは歌手の性別が変わると歌詞も変わると書きました。歌詞が変わるいい例として"Tennessee Waltz"があります。原曲は1948年に発表されましたが、Patti Page が1950年にカバーして歌ったものが大ヒット。歌詞は偶然出会った友人に恋人を紹介したら奪われてしまった、という悲しいものです。

聴いていただくと、30秒前後のところに出てくるintroduced に続く三人称代名詞が、女性歌手の場合は"her"、男性歌手の場合は"him"になっているのがわかると思います。さすがにスタンダードナンバー、YouTubeには数多くの"Tennessee Waltz"がアップされています。なんと60年前のPatti Pageの映像までありました。今から60年後、坂井泉水さんもZARDのナンバーを変わらず歌っているような気がしますね。


Tennessee Waltz(女性バージョン)  Patti Page



Tennessee Waltz(男性バージョン)  Hank Williams Jr.



今日の名言:君が死を考えるのは、死ぬためじゃない。生きるためなんだ。

□◆□…優嵐歳時記(2115)…□◆□

  風そよぐ播州平野畦青む   優嵐

増位山の頂からは姫路市街、そこを貫いて播磨灘へと流れこむ市川、周辺の山と水田が見渡せます。春が進むにしたがって、緑色が少しずつ増えています。「畦青む」とは、そうした遠目から見た春の姿を示す季語です。畦を青ませているのは、セリ、ヨモギ、ナズナ、ハコベ、タンポポ、オニタビラコ、ハハコグサなどの摘み草です。オオイヌノフグリの姿も見え始めています。

6日、坂井泉水さんの誕生の「日」、今日取り上げるのは、『Teenage dream』です。95年にDEENに作詞家として歌詞提供した曲をZARDの15番目のシングル『愛が見えない』(95.6.5)のカップリング曲としてセルフカバーで歌っています。

田舎からいっしょに都会へ出てきた男の子二人と女の子一人の三人、女の子はそのうちの一人と恋人同士なのだけれど、ちょっとぎくしゃくしている、もうひとりの男の子はひそかにずっとその女の子のことを思いながら見守っている…、というシチュエーションが歌われています。「やがて雨も溶ける」が泉水流ですね。雪が溶けるのではなく、「雨も溶ける」。考えてみると不思議な表現ですが、違和感が全くありません。


Teenage dream 



この歌のように、女性が男性の立場に立って歌うことができる(逆も)のは日本語の歌の特徴のひとつです。欧米のラブソングというのは、女性歌手は女性の、男性歌手は男性の立場でしか歌えないようです。ボーカリストの性別が変ると、sheとheに相当するものが、すべて歌詞を逆転させて歌われます。なぜかわかりませんが、これは文化背景によるものなのでしょう。

ZARDのレパートリーには坂井泉水さんが「僕」と男性の立場で歌う楽曲がいくつかあります。日本ではボーカリストの性別が変っても歌詞を変えたりしませんし、女性歌手が自分の歌として歌詞に「僕」を使っている例は珍しくありません。また、男性歌手が女性心理を歌っているものもたくさんあります。

これを<クロスジェンダー・パフォーマンス>といいます。欧米文化的には大変おかしな現象らしいですが、日本人なら女性が「僕」と歌うことによる独特の魅力を誰も否定しないでしょう。

坂井泉水さんが男性アーティストに提供した楽曲をセルフカバーしたZARDの歌詞を欧米言語に翻訳すると、すべて女性視点からの詞になり、日本語で聴いてイメージする世界とはかなり変化してしまうと気づきます。そもそも『Teenage dream』の主人公が女性だと考えると、この歌詞世界そのものの成立が危うくなります。

また、1月27日に取り上げた『淡い雪がとけて』のように、途中で男女の視点が入れ替わるような歌詞構造は、欧米言語では文化的にも不可能です。これは翻訳以前の問題であり、欧米言語、欧米文化の持っているある種の不自由さをかいま見た気がします。日本語および日本文化はそういうものに寛容、というより全くとらわれておらず、誰もそんなことに気づきもしません。

ヤマトタケルからオスカルまで日本にはクロスジェンダーの主人公が活躍するお話はたくさんあります。また、観音菩薩や興福寺の阿修羅像のように両性具有的な存在を理想とするような面もあります。タカラヅカや歌舞伎を生み出したのも「日本語」ゆえかもしれません。

それはともかく、坂井泉水さんのボーカルによって歌われる「僕」、男性の純粋な思いをより強く感じさせ、暖かい気持ちにしてくれます。「生きるのが下手でもいいじゃない 笑っていよう」、そうだね。歌の最後、「また三人であの故郷(まち)に帰ろう」って、おいおい三人なの?と苦笑しながら思わず尋ねたくなります。


今日の名言:友人とは、あなたについてすべてのことを知っていて、 それにもかかわらずあなたを好んでいる人のことである。

□◆□…優嵐歳時記(2114)…□◆□

  紅梅の蕾に残る今朝の雨   優嵐

俳句は"haiku"として全世界で詠まれています。英語俳句というのは、日本でも詠む人がかなりあるようです。webで検索するとそうしたページをいくつか見つけることができます。mixiの詩のコミュニティで「外国語で詩を書く」というトピックがあります。試しに英語の俳句を作ってみようと思いました。

さまざまなサイトを見ると、日本語で詠んだものを英語に訳するのは邪道だと書いていあるところもありました。しかし、そんなに難しく考えず、何でもありでいいんじゃないかと思います。芭蕉や一茶の句は外国語に訳されているんですから。実際、詠み始めるルールとしては---

1)三行で書き、文頭は原則として小文字。
2)ピリオドはつけず、切れはコンマなどで表す。
3)簡潔性を追求する。

これだけを留意していればいいようです。さらに簡潔にということからbe動詞、冠詞、前置詞を省略するのも表現上で認められています。単数、複数にもあまりこだわらなくていいようです。これはこういうものの扱いに苦慮する日本人としてはありがたいかもしれません。動詞より名詞中心に並べるのがコツのようです。

今日の句を英語俳句にしてみました。

rain drop
remaining
red plum bud  yourun


今日の名言:自分自身を幸福だと思わないあなたは、決して幸福になれない。


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□◆□…優嵐歳時記(2113)…□◆□ 

  梅が香の満つ中にいま初音して   優嵐

春は野鳥の囀りが盛んになる時期です。その中でもウグイスの囀りの美しさは群を抜いています。あの囀りは繁殖期のもので、冬はチャッチャッという地鳴きです。これを「笹鳴(ささなき)」といいます。梅が咲く頃ウグイスらしい囀りを始めます。その年初めてのホーホケキョを「初音(はつね)」といい、季語になっているほどですから、日本人がどれほどこの鳥の鳴声を珍重してきたかわかります。

確かに本当に美しく、澄んだ鳴声が森に響き始めるころは思わず足を止めてじっと聞き入ってしまいます。囀りは繁殖期のホルモンの状態に左右されるため、最初はややたどたどしいところも残っています。「ホーホケ、ッキョッ」という感じのものを聞くと、「おおっ、がんばれ」と励ましたくなります。


<チューニング>
情報が足りないと思っている
そうじゃない
情報は多すぎるのだ

情報が多すぎて
何が何だかわからなくなっている

本当のことは
ずっと目の前にあるのだけれど
余計なものが多すぎて見えなくなっている

一番大事なのは
これ以上詰め込むのではなく
不要なものを遮断して
絞り込むことだ

自分という受信機を
正しい周波数にチューニングせよ


今日の名言:一生の間に一人の人間でも幸福にすることが出来れば君の幸福なのだ。


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□◆□…優嵐歳時記(2112)…□◆□

  風のまだやや冷や冷やと梅を見る   優嵐

清楚で気品があり、早春、百花に先駆けて咲く梅は、「花の兄」との異称があり、桜と並んで日本の春を代表する花です。春の絵巻の巻頭を彩るのが梅、クライマックスからしめくくりを担当するのが桜といえるでしょうか。

今日は新暦の雛祭ですが、「桃の節句」というにはまだ早い季感です。新暦なら「梅の節句」とでも言った方が適切です。このように、新暦は日本の伝統的な行事の季節感を一ヶ月ほど早くしてしまいます。旧暦の弥生三日は今年であれば4月16日です。桃の節句にふさわしい暖かさでしょう。


<初音>
梅林に足を踏み入れたとき
初音が聞こえた

たどたどしくはない
それは確かにしっかりと
もう鶯の鳴声をしていた

梅林は梅の香に満ち
鶯の澄んだ声がその中を渡っていく

春の女神よ
君はまた一歩進んだね


今日の名言:世の中は、あなたが理解する以上に栄光に満ちている。


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□◆□…優嵐歳時記(2111)…□◆□

  部屋に満つあおさの香りいただきぬ    優嵐

あおさは沿岸の浅海で採れる緑藻類アオサ科の海藻です。岩や杭、他の海藻に付着したり、浮遊しているものもあります。10cm〜30cmほどの深緑色の楕円形をしており、薄い葉状のところどころに大小の穴があいています。

晩秋から初夏にかけて繁茂しますが、食用には早春のころに採れたものが最も適しています。そのため春の季語になっています。生でも食べられますが、やや硬く、あおさ汁などとして、汁物に入れると磯の香りがして風味よくいただけます。


<花咲く季節>
三月は花咲く季節
彼女はそう言った

手渡された水晶の中に
とても貴重な何かが入っている

今はいいの
それが何かわからなくても
ハートのチャクラにおさめておいて

あなたのハートのチャクラはもう
いろいろなものと
つながることができる

だからあとはそれにまかせるの


今日の名言:人生は道路のようなものだ。 一番の近道は、たいてい一番悪い道だ。


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