優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

□◆□…優嵐歳時記(447)…□◆□

  雲ひとつなく晴れわたる薄暑かな  優嵐

今日は快晴。午後になっても空は真っ青で雲の影も
ありませんでした。湿気が少なく、遠くの山まで
くっきりと見渡せます。日差しがかなり強くなって
いるのがわかり、ああ、もうすぐ夏本番だと思い
ました。

少し暑さを感じ、車の窓を開けて走りたくなる、
そんな気候を「薄暑」といいます。街行く人の服装
も軽快になり、木陰が恋しく思われたりするのも
このころです。過ごしやすく、一年中で一番気候の
よいころといえます。

□◆□…優嵐歳時記(446)…□◆□

  アイリスよ虹をかけたるその青さ  優嵐

アヤメ科の園芸種、特に外国産のダッチアイリス、
イングリッシュアイリス、ジャーマンアイリスなどを
さします。ただし、アイリスとはアヤメの仲間全体
の呼び名です。ギリシャ神話の虹の神イリス(英語
読みでアイリス)にちなんだ名前です。

花の色は青、青紫、黄色、白などと多彩です。先日
空の青さをそのまま写し取ったようなアイリスを
見ました。

□◆□…優嵐歳時記(445)…□◆□

  満月の大き新樹の上に出る  優嵐

昨夜は満月でした。高松から戻るマリンライナーの車中
で隣り合わせたおじさんたちが、瀬戸大橋から海を見て
「潮の流れがおおけぇのぉ」と話していました。もしや
満月、と思って旧暦表を見てみるとやはりそうでした。

初夏のみずみずしい若葉をつけた樹木を「新樹」といい
ます。その新鮮な緑の息吹、美しさが見るものを元気
づけてくれます。

□◆□…優嵐歳時記(444)…□◆□

  海峡を越えて南は麦の秋  優嵐

「麦の秋」「麦秋」は麦の穂が実り黄熟していくころ
の季節を表しています。週末、四国の高松へいって
きました。今日は雨でしたが、昨日はいいお天気で、
香川県にはいると、いちめんに色づいた麦畑に出会い
ました。

姫路近辺の麦はまだ麦秋と呼ぶには早く青さを残して
いますが、四国の麦はもう金色になっていました。
初夏なのに「秋」というのは一見奇妙に思えますが、
「秋」には取り入れの時期という意味もあるようです。

□◆□…優嵐歳時記(443)…□◆□

  夏の夕光残せる水面かな  優嵐

五月も後半に入り、日が長くなったのを実感します。
窓の外にまだ明るさが残っていると思って時計を見ると
すでに6時半をすぎていたりします。夕暮れが遅いと
気持ちもなんだかゆったりします。一日の時間は変わら
ないのに、不思議です。

夕食前にのんびり近所を散歩したりします。川沿いに
車もほとんど通らない道があり、堤防の上ということ
で川の見晴らしもよく、犬を連れた人たちにもよく
会います。ウォーキングと勢い込んで歩くのではなく、
ぶらぶらと行きたいところまで行く、というのがいい
ですね。

□◆□…優嵐歳時記(442)…□◆□

  楠若葉剥落激し絵馬あがる  優嵐

一昨日訪れた神社には明治時代の日露戦争勝利の模様を
描いた絵馬や、今では絵柄も判然としない江戸時代の
絵馬が拝殿に掲げられていました。もちろん絵馬を奉納
した人たちはすでにずっと前にこの世を去っています。
昔の物を見るとき、時代が昔のものであればあるほど、
そのものの上を流れていった時間のことをふと考えます。

初夏に萌え出した木々の新しい葉を「若葉」といいます。
落葉樹はもちろん、常緑樹の楠、椎、樫などもみずみず
しい葉をつけます。植物の種類を冠して「楠若葉」「柿
若葉」などと詠む場合もあります。また「谷若葉」「窓
若葉」のように場所を入れて詠む場合もあります。

□◆□…優嵐歳時記(441)…□◆□

  薫風に吹かれてひとり境内に  優嵐

今日はお天気が崩れましたが、昨日の昼、近所の里山に
ある八幡神社に行ってきました。九世紀にはすでにここに
神社があったということです。古くから開けていた播磨
地方の歴史を思います。

自転車を押して上がってきたので、少し暑いくらいでした。
平日の昼とて人影も無く、拝殿に腰を下ろしていると、
南風が吹き抜けていきます。日本中あちこち自転車で旅
したとき、神社は好きな場所のひとつでした。

有名な神社でなくても、そこには神社の森があり、ほっと
落ち着ける空間があります。「薫風」は青葉を吹く風が
緑の香を運ぶとみたてた季語です。「風薫る」「南薫」
などとも詠みます。

□◆□…優嵐歳時記(440)…□◆□

  天清和恵まれし風ひかりかな  優嵐

気候が清らかで温和なことを「清和」といい、陰暦四月の
候です。今日は陰暦では卯月十日、まさに清和といっていい
気持ちのいいお天気でした。空は晴れ渡り、少し緑が濃く
なってきた山々の上に広がっています。南風がやや強く
吹いてくるのですが、それもさらなる爽やかさを呼びます。

こんなお天気の日は自転車で走るのが好きです。田も畑も
川も山もみんな輝いていて、まさに天から賜った一日だ
という気がするのです。

□◆□…優嵐歳時記(439)…□◆□

  桜の実つやつや赤く日の高く  優嵐

近所で咲いていたヒガンザクラの一種が実をつけています。
「さくらんぼ」は小アジア原産の西洋みざくらの実で、この
「桜の実」とは種類が異なります。桜の実は赤く色づいて
おいしそうに見えますが、実際のところは酸味と渋みで
おいしくはないようです。

里桜の代表格であるソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒ
ガンの雑種であり、開花しても実はつけません。ですから、
ソメイヨシノは一種のクローンであり、遺伝子が同じなので
条件が整えば一斉に開花します。そのため「桜前線」という
世界でも類を見ない、生物気象観測レーダーになっています。

□◆□…優嵐歳時記(438)…□◆□

  ブログひとつ書き終え冷し中華かな  優嵐

私はこの『優嵐歳時記』も含め、今、6つのブログを書
いています。書くことは子どものころから大好きでした。
自分を表現する場がいろいろあるというのは素晴らしい
ですし、それを読んでくださる方、また、コメントを
くださる方、本当に感謝です。

これもインターネットの凄さだな、と思います。しかも
ブログの凄さ。誰でもいつでも個人のメディアが持てる
ようになったのです。こんなこと、つい十年ほど前なら
考えられなかったことです。インターネットはまだまだ
可能性を秘めていますし、これからどれほどのことを
私たちにもたらしてくれるのか、と想像するとわくわく
してきます。

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