□◆□…優嵐歳時記(87)…□◆□

   若葉に今包まれ我は峠越ゆ   優嵐

オートバイの魅力は、空間に向かって自分の肉体が開かれていること
でしょう。そこが自動車との一番の違いです。ですから、旅する空間
に自分の全身を浸すことができます。潮風も山の空気も、感じる密度
が自動車とは段違いなのです。

九州は想像以上に山深く、峠への道で右も左も、それどころか、最後
には頭上も新緑におおわれて、若葉のトンネルを走るような場所も
ありました。木の種類によって、若葉の色は微妙に異なります。
「柿若葉」「椎若葉」「樫若葉」など、それぞれの木の名前をつけて
その美しさを詠む場合もあります。この句では形、色、濃淡さまざまな
周囲にあふれる若葉すべて、全身を緑に染めるような瑞々しい空気に
包まれる自分自身を詠んでいます。