□◆□…優嵐歳時記(99)…□◆□

    風薫る葉擦れの音と書を読みぬ   優嵐

「風薫る」とは、青葉を吹く風が緑の香を運ぶと見立て、爽やかな
初夏の南風をさしています。風薫る五月、などと言ったりもします。
今日は、芦屋市にある旧山邑家住宅(ヨドコウ迎賓館)へ行って
きました。ここは20世紀最高の建築家と言われるフランク・ロイド・
ライトが設計した住宅で、アメリカ国外に現存する唯一の建物です。

阪急芦屋川駅を降りて、坂を上っていくと、特徴的な車寄せの前に
来ます。ここまで来ると目の前に芦屋の町並みとその向こうの海が
一望できます。あまり知られていないのか、日曜にもかかわらず、
来所者はほとんどなく、じっくり見学することができました。

二階の応接室にはライトのコンセプトを生かして新たに作られた机
と椅子があり、そこでしばらく本を読みました。南の窓は開け放たれ
そこから爽やかな風が吹き込んできます。窓のすぐ側には大きな楠
があり、その葉が風にゆれてさやさやと心地よい音をたてていました。

この居心地のよさは何なんでしょう。いくらでもそこにいて静かに
時を過ごしていたい、そんな気持ちになりました。