□◆□…優嵐歳時記(1942)…□◆□

  深海の秋を詰め込むインク壺   優嵐

パソコンで文書を書くようになってから漢字を書けなくなっているのに気がつき、手書きでもさまざまなものを書くようにしています。このブログは日記のようなものですが、もっと個人的な覚え書きやメモや思いつきは手書きでノートや手帳に記録しています。

その際に万年筆をよく使います。何本か持っていますが、どれにもインクコンバーターをつけています。カートリッジよりはるかに経済的なのです。インクはブルーブラックを使っていて、万年筆らしいのはやはりこの色、と思います。先日、インクを補充しようとインク壺を開けていて、誤ってインクをテーブルの上に大量にこぼしてしまいました。

下にメモ用紙とティッシュペーパーをおいていたおかげで、それらが大半のインクを吸い取ってくれ、床にまでこぼれなかったのが幸いでした。ぶちまけられたブルーブラックのインクは深い海の色を思わせました。詩というのはこうした驚きから生れるものですね。

うまい下手は別にして、驚きを感じられれば誰でも詩を書けるんじゃないかと思いました。誰でもちょっとした驚きを日々の生活の中で感じるのだけれど、すぐに忘れてしまう。詩はそれを文字という形で定着してくれるのです。俳句を始めて、日常のことを細やかに観察できるようになりました。最近始めている自由詩でもまた違う視点で日常や自分の思考を探る機会が増え、詩を書く喜びというのはここにあるのだろう、と思っています。


<秋の扇風機>
ふと気がついた
かたわらに秋の扇風機
あ、そうか
あなたまだそこにいたのね

ばたばたとスイッチを入れた夏は
すでに去り所在なげな風情

人の心はうつろっていく
あんなに好きだったのに
ある日突然何かが終わる
それは仕方のないこと

激しい夏がいつしか秋へと
静まっていくように

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