□◆□…優嵐歳時記(1985)…□◆□

  りんご手に少女の歩く秋日和   優嵐

今日は27日です。坂井泉水さんの月の命日にあたりますので、彼女の詞について書いてみたいと思います。今日取り上げるのは『私だけ見つめて』です。ZARDの7番目のシングル『君がいない』(93.4.21)のカップリング曲です。ベストアルバム『ZARD BLEND II 〜LEAF & SNOW〜』(01.11.21)に収録されています。

私だけ見つめて



まだダークなハードロックの香りが残っています。10月6日に取り上げた『OH MY LOVE』が、や行のやさしい響きで始まる歌だとしたら、この曲は、か行の激しい挑みかかるような響きを生かしたロックです。こういう曲を両方難なく歌いこなしてしまうというのが、ZARD・坂井泉水のボーカリストとしての非凡さです。

か行の言葉は、かける、かつ、きけん、きびしい、きつい、きめる、くるしい、くやしい、くやむ、こまる、ころす、などという、なにかまなじりを決するようなぐっと迫るような感じを持っています。その激しい音の響きを歌詞の中で効果的に生かしています。

サビの部分で「気分しだいで優しくしないで」「危険なシグナルが点滅してるわ」と歌い、この「き」の音をさらに強調しています。「きっぶんしだーいで」「きっけんなシグナルが」と聴こえるでしょう? さらにカクテル、クール、乾いた喉、駆け引き、と”か行の単語”を散りばめてロックのリズムとビートの中で炸裂させ、その刹那感を強調しています。

ZARDの楽曲の中で一番危ないのは『汗の中でCRY』だという人が多いようですが、私はこの曲の方がきわどい、と思います。男女の危険な火遊びを歌い、『汗の中…』のような直接的な言葉ではなく暗示によってその雰囲気を描いています。あからさまに言うよりも暗示する方が人の想像力を刺激でき、効果的です。

例えば「細い腰のカーブなぞりその気にさせるsweet eyes」というフレーズ。これ、歌詞を読むと、あ、そうかと思うのですが、最初に聴いたとき、私は「細い腰の下部なぞりその気にさせるsweet eyes」ととっさに思いこみ、細い腰の下部とはどこ?と考えました。妄想を呼ぶ歌詞です。ま、カーブでも似たようなものですか。