□◆□…優嵐歳時記(2080)…□◆□

  雨あがる冬芽の雫残しつつ   優嵐

春に萌え出す芽は秋のうちにでき、寒さに耐えられるよう固い鱗片で覆われて冬を越します。これを「冬芽」といい、落葉樹の葉が落ちつくした枝の冬芽はとくによく目だちます。

増位山の梅林へ行ってしばし呆然としてしまいました。いつも最初に花を開き、今もようやくいくつか咲き始めた紅梅がほぼ根元近くからばっさり切られていたからです。三つに枝分かれしていたすべての枝がノコギリで切り取られていました。

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28日のお昼ごろはここに来て梅の花を見ましたから、28日の午後から29日の朝にかけての間の出来事です。ほとんど人影のないところなので、誰にも見咎められることもなかったのでしょう。根元が残っていますから、木は生き残るかもしれませんが、仮に生き残ってもしばらく花をつけるのは難しいでしょう。

毎日のように散歩をしていると、樹木にも親しみがわき、それぞれと言葉のない会話をしながら歩いています。特にこの紅梅は寒中から先駆けて花を開き、昨年の梅林での出来事もあって、思い入れがあっただけに残念です。せめて主な枝の一本でも残していてくれたら。

紅梅の木の切り口は紅く、紅梅の色を映しているようでもあり、紅梅自身が血を流しているようでもあり、胸が痛みました。

<紅梅に>
随分ひどいことをされたね
でも君は防ぎようがなかった

痛くても苦しくても
君は声をあげることも
逃げることもできない

寒気をものともせず
やっと咲き始めてくれたのに

もしどこかに植えられているのなら
どうかそこで
美しく咲いてほしい

もしそのまま命を
終えるとしても
君がせいいっぱい生きたことを
知っているよ

美しい花をありがとう


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