□◆□…優嵐歳時記(2133)…□◆□

  初蝶に誘われ歩く真昼かな   優嵐

梅林でのんびりしていると、ルリタテハが飛んできて白梅の蜜を吸い始めました。黄蝶の姿も見えました。蝶は春の季語であり、特にその年初めて目にする蝶を「初蝶」といいます。

色彩が鮮やかでひらひらと軽やかに視界を横切っていく蝶は、それだけで春の明るい気分を象徴しています。ルリタテハは成虫のまま越冬が可能な蝶で、この日見たのもそうした個体だったでしょう。翅のブルーの模様が印象的です。

家の前のソメイヨシノが開花し始めました。三連休明けは雨で始まり、周囲の峰はヤマザクラに彩られています。ヤマザクラの花びらはそばで見るとほぼ白色ですが、離れると淡い桜色がわかります。薄い靄を通してその桜色を見ると、幽玄といいますか、日本の微妙な色彩感覚はやっぱりこれだなと感じます。水蒸気の多い日本の大気にこそ桜は映えるのです。


<雨の日>
雨の日の森は晴天の日とは違う表情をしている
木漏れ日の森を歩くのは素晴らしいが
雨の森を歩くのも素晴らしい

濡れた落葉を踏んで森に入る
木立が靄の中へと溶け込んでいく
その彼方はどこか異界へ
通じているような気にさせてくれる

雨に光る落葉樹の幹
雫を落とす照葉樹の葉
ときおり響く鶯の声

梅の花はもうすぐ終る
最後の八重の紅梅の間で
小さな毛虫が雨宿りをしていた
梅の花びらにも毛虫の毛にも雫が光っている

傍らに立つ山桜の古木の枝先が
ほんのり紅潮し始めている
間もなく開く蕾が息づいている

そして雨はすべてのものの上に
静かに降り続く


今日の名言:あなたは命あるものを、 使い古したら捨ててしまう靴や身の回りの品のように扱うべきではない。


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