□◆□…優嵐歳時記(2178)…□◆□
清流の音こだまして新緑に 優嵐
連休明けの株式市場は大荒れで始まりました。現在の株価は三月初旬とほぼ同じです。その間上昇していましたから、二ヶ月間の上昇分をわずか2日で帳消しにするという急落ぶりです。GW明けは毎年荒れることが多く、今年はギリシャ危機に加え、木曜日のNY市場で誤発注があったらしく、取引時間中に9%以上も下落するという考えられない事態になりました。
現在の機関投資家の取引は、アルゴリズム取引です。アルゴリズム取引とは、コンピューターシステムが株価や出来高などに応じて、自動的に株式売買注文のタイミングや数量を決めて注文を繰り返す超高速システムトレーディングを意味します。
1000分の1秒単位で売買を決定していくというのですから、人間の判断ではとても追いつけません。この売買の対象となるのは、取引量の多い大型株や指数先物などになります。瞬時に値がつき売買が成立するほどの流動性がなければならないからです。
東京証券取引所が年明けから稼働させた新しい売買システム「arrowhead(アローヘッド)」も世界最高水準の超高速処理をうたい、こうしたアルゴリズム取引に対応しています。ところがこうした超高速取引ではいったん大規模な誤発注などが起きてしまうと、それを規制している当局の制御が効かず、市場が暴走してしまいます。それが露わになったのが今回の急落でした。
2008年の投資銀行を葬り去った金融危機も、コンピュータでリスクを計算した金融工学の手法を研ぎ澄ませて行った末に、市場がパニックに陥って流動性が枯渇してしまった結果でした。部分最適を集めてみると全体的には不合理だったということです。人工知能がどれほど進んでもこういうことは避けられないでしょう。
人工知能は与えられたデータを元に計算していくもので、論理の飛躍には対応できません。人間のおかす過ちや心理的パニックには対応しきれず、それどころかそれを増幅させてしまう危険が大きいのです。そして、相場とは、株だろうが通貨だろうが結局は人間の「心理」を売買しているものなのです。
だったらこれからどうしたらいいのか、ということですが、そんなことは誰にもわからないというのが正直なところだと思います。世界はもともとカオスなのだと考えているべきで、秩序の方が幻でしょう。政治家も経済アナリストも本当は何もわからないし、わかっているだろうと期待する方にも無理があるのです。
<光>
昼過ぎに雨があがった
初夏の長い午後の散歩
森の地面も若葉も
しっとりと濡れている
頂はまだ薄もやの中だった
それでも梅林まで来ると
明るい日差しが
小さな梅の実を光らせている
水分をたっぷり含んだ空気を通して
降り注ぐ太陽光線の放射状の広がりが
後光のように杉の大樹を彩る
荘厳な山上のひととき
今日の名言:君が火傷しない火を消そうとするな。
清流の音こだまして新緑に 優嵐
連休明けの株式市場は大荒れで始まりました。現在の株価は三月初旬とほぼ同じです。その間上昇していましたから、二ヶ月間の上昇分をわずか2日で帳消しにするという急落ぶりです。GW明けは毎年荒れることが多く、今年はギリシャ危機に加え、木曜日のNY市場で誤発注があったらしく、取引時間中に9%以上も下落するという考えられない事態になりました。
現在の機関投資家の取引は、アルゴリズム取引です。アルゴリズム取引とは、コンピューターシステムが株価や出来高などに応じて、自動的に株式売買注文のタイミングや数量を決めて注文を繰り返す超高速システムトレーディングを意味します。
1000分の1秒単位で売買を決定していくというのですから、人間の判断ではとても追いつけません。この売買の対象となるのは、取引量の多い大型株や指数先物などになります。瞬時に値がつき売買が成立するほどの流動性がなければならないからです。
東京証券取引所が年明けから稼働させた新しい売買システム「arrowhead(アローヘッド)」も世界最高水準の超高速処理をうたい、こうしたアルゴリズム取引に対応しています。ところがこうした超高速取引ではいったん大規模な誤発注などが起きてしまうと、それを規制している当局の制御が効かず、市場が暴走してしまいます。それが露わになったのが今回の急落でした。
2008年の投資銀行を葬り去った金融危機も、コンピュータでリスクを計算した金融工学の手法を研ぎ澄ませて行った末に、市場がパニックに陥って流動性が枯渇してしまった結果でした。部分最適を集めてみると全体的には不合理だったということです。人工知能がどれほど進んでもこういうことは避けられないでしょう。
人工知能は与えられたデータを元に計算していくもので、論理の飛躍には対応できません。人間のおかす過ちや心理的パニックには対応しきれず、それどころかそれを増幅させてしまう危険が大きいのです。そして、相場とは、株だろうが通貨だろうが結局は人間の「心理」を売買しているものなのです。
だったらこれからどうしたらいいのか、ということですが、そんなことは誰にもわからないというのが正直なところだと思います。世界はもともとカオスなのだと考えているべきで、秩序の方が幻でしょう。政治家も経済アナリストも本当は何もわからないし、わかっているだろうと期待する方にも無理があるのです。
<光>
昼過ぎに雨があがった
初夏の長い午後の散歩
森の地面も若葉も
しっとりと濡れている
頂はまだ薄もやの中だった
それでも梅林まで来ると
明るい日差しが
小さな梅の実を光らせている
水分をたっぷり含んだ空気を通して
降り注ぐ太陽光線の放射状の広がりが
後光のように杉の大樹を彩る
荘厳な山上のひととき
今日の名言:君が火傷しない火を消そうとするな。
コメント
コメント一覧 (8)
「世界はもともとカオスなのだと考えているべきで、秩序の方が幻でしょう」というのは卓見ですね!たしかに、どれだけコンピューターが発達しても、正確な経済予測は難しいでしょう。
むかしですが、キングクリムゾンというロックグループのリーダーのロバート・フリップが「混乱こそわが墓碑銘」という歌詞を書いてました。
光が射し込む今日の写真、素晴しいです♪
いやはや全くヤバいことが起きましたね。話しによると、トレーダーが「million」と入力すべきところを「billion」と入力してしまったそうな・・・。(^_^;
一時間そこそこでダウ平均が900ドルも下がったとなると、この1時間で一生分のおカネを儲けたトレーダーがたぶん何万人かいそうですね。稲盛先生流に言うと、幸運の使い過ぎで、悪い業が彼らに来そうですが・・・。(^_^;
日本でもジェイコムの取り引きで同様に何十億円稼いだトレーダーもいましたし・・・。この0.00000001秒で約定する仕組み、困ったものですな〜。
実を言うと僕も何年か前に或る銘柄を100株だけ買うつもりがゼロを一個間違えて1000株注文してしまい、5秒後に約定してしまったことがありました。(^_^; もちろんそれは想定外なので、慌てて10秒後に900株を売り、予定通り100株を購入しましたが・・・。しかし、この10秒間で2円ほど値下がりしてしまい、200円の取引差損を計上してしまいました。(^_^;
株式取引や銀行振込は、日本中の工場従業員や電車運転士では誰でもやっている「指差し点呼」をボタンを押す前にやらなければなりませんね〜。(笑)
売買差損は200円どころではなく、2円×900株=1800円でした。1800円あれば吉野家牛丼が5杯も食べられる!痛い勉強をしました。(^_^;
”世界はもともとカオス”という考え方、去年読んだナシーム・ニコラス・タレブの『ブラック・スワン』とF・デーヴィッド・ピート の『賢者の石』から教えられたものです。『ブラック・スワン』はリスク管理という名のもとにおこなわれるペテンに苦言を呈したものであり、『賢者の石』はシンクロニシティの背後にあるものについて書いた本なのですが、底に流れている考え方がこれなんですね。
部分最適が全体不合理になる、そしてその逆もまた真で、細部には不公平があるように見えて全体的にはぴったりとおさまるべきところにおさまるという在り方も存在する。科学というのは前者じゃないか、と思います。コンピュータのリスク管理は細部では全く論理的です。論理上は何の齟齬もない。けれど、現実世界はなぜかそのようには動かない。宇宙の法則は恐らく後者なんだと思いますね。
>トレーダーが「million」と入力すべきところを「billion」と入力してしまったそうな・・・。(^_^;
ははは、って関係者にとっては笑い事ではないですよね。ただ、最先端の複雑な数理統計理論を駆使して組み立てられているアルゴリズム取引が、こんな「しょーもない」ミスでがらがらと崩れるというのは、もう悲劇を通り越して喜劇です。
そこまで厳密に計算できるのに、なぜそんなつまらないミスを防ぐ手立てを講じることができないのか、と普通なら思いますが、コンピュータだからこういうことができないのだろう、とも逆に言えますね。人間なら簡単に類推したり予測できるはずのことがコンピュータにはできない。人工知能と人間の知能が根本的に違うなと思うのはこのあたりです。
牛丼5杯は痛かったですね(笑)
>人間なら簡単に類推したり予測できるはずのことがコンピュータにはできない。人工知能と人間の知能が根本的に違うなと思うのはこのあたりです。
ここがアシモくん達を初めとしたロボットくん達の技術進化の伸びしろの部分ですね。
人間のアンニュイな気持ち、あるいは場の空気を読むことができる能力、料亭の女将のような行き届いた粋な計らいができる能力、人工知能を備えたロボットくん達がこういうアンニュイな気持ちを獲得するようにできるのは、間違いなくホンダとかソニーとかPanasonicいった日本企業以外にはないと思うんですね。だって、厳しい言い方ですが、日本人が簡単に感じることができる場の雰囲気や相手への思い遣りのような気持ちは、米国人や中国人やインド人や欧州人は生身の人間の癖に殆ど認識できませんから。彼ら海外企業が作る人口知能やロボットはどんなに思考スピードが速くなってもKYですから実用に耐えうるロボットはできないと思うんですね。(^_^;
僕は50年後ぐらいに「一家に一台アシモ君がいる」のが常識になるときが来ると思っています。しかもとっても場の空気が読めてくれて頼みもしないのに日本旅館の仲居さんのような「粋」な計らいができるアシモ君が。こういう日本製ロボットの参入障壁は限りなく高いものになると僕は予想しています。僕はバフェット流超長期保有の株主なので、参入障壁が極めて高くその参入障壁が極めて長い期間持続する会社の株主にしか僕はなりません。僕がホンダ技研の株式をそこそこ永久保有し続けているのは、別にハイブリッドカーのような自動車部門に期待しているからではなくて、50年後に「粋な計らい」ができるアシモ君を作れるのはホンダぐらいしかない、ホンダの売上高の9割がアシモ君で、1割が燃料自動車になるようなときまで永遠に保有し続けますよ。(^_^;
最大の問題は僕が50年後に生きているかどうかですが、まぁ「永遠に売らないこと」という遺言を残して娘に現物株のまま相続させれば良いことですな。(^_^;
場の空気が読めるロボット…、確かにこれは日本人が得意とする分野ですね。外国に行くと感じますが、日本のサービスはすべて「かゆいところに手が届く」ようなものになっていますね。日本のサービスや技術について、アジア各国の成長ぶりからすぐにも追い越される、とマスメディアでよく聞きますが、そう簡単にはいかないだろう、と私は思っています。
なぜなら、日本のサービスや技術には「具体的に記述できないけれど、いったんそれを受けとってしまうと他のものでは満足できない」、「暗黙知」とでもいえそうな高度な要素があるからです。そこを記述しきれないから日本人自身すら理解し切れていないし、まして諸外国の方に真似できるはずもない、こう思っています。
明示知の差は比較的キャッチアップするのは容易だと思います。人工知能の計算みたいなものですから。でも暗黙知の部分は計算できない。何を入力すればいいかがわからないんですから。