□◆□…優嵐歳時記(2566)…□◆□ 

  ライブとて梅雨の嵐の中をゆく  優嵐

日曜日には、大阪国際会議場グランキューブ大阪メインホールでおこなわれた、ZARDの二十周年ライブ『What a beautiful memory 〜forever you〜』に行ってきました。台風2号の強い風のため、一時JRが運転を見合わせるというひやりとした時間もありましたが、ライブは素晴らしいものでした。ZARDは私だけのものではない、と坂井泉水さんが生前から言っていたことの意味がよく理解できました。

ライブの中での一番のサプライズは、ZARDとしてデビューする前、彼女がビーイングのオーディションで歌った『六本木心中』の原音にあわせて、モデル時代の映像が流されたことでした。これらの映像はすでにYouTubeにはいくつもありますから、知っている人は少なくないと思います。それでもZARDのライブでこれが流されたということが大きい、と感じました。ZARD以前の彼女を正式にZARDの中に組み込んだからです。

また、今回はカメラ目線の彼女の姿がいくつか流れました。特に最後、手書きのメッセージとともに映されたのは、彼女のこちらを見るまなざしのアップでした。坂井泉水をずっと支えたスタッフの力の凄さを見た気がしました。定番のZARDで終わらせず、かなり長い時間こちらを見つめる彼女の視線でフィナーレ。

この全体の映像の組み立てが見事だと思ったと同時に、もし、彼女がカメラ目線を多用していたら、随分イメージが違っていたことだろう、とも思いました。視線には力があり、クリエイターとしての強い意志を彼女が常に持ち続けていたということを教えてくれます。

坂井泉水さんが持っていたその時代における”強さ”と”弱さ”をスタッフは見極め、的確にサポートしました。もしほんの数年前、バブル全盛期にデビューしていればZARDを象徴する<視線を外したポートレイト>は生まれなかったのでは、と思います。

ZARDとかかわりのあった作曲家、アレンジャーなどの五人の方がゲストとして参加されていました。そのうち、葉山たけしさんが、命日の27日に東京でおこなわれたライブを振り返って、「ずっと楽屋で声だけを聴いていて、ある瞬間に『あれ、坂井さんは実はここにいて歌っているんじゃないか』と思った事がありました」と言われていました。

同じことを私も感じました。舞台中央には彼女が2004年の生前唯一のライブで使用したマイクと椅子などがセットされ、その周囲でバンドが演奏し、映像が流れる形で進みました。ほんの一瞬、私の場合は『マイ フレンド』でしたが、冒頭の「あなたを想うだけで 心は強くなれる ずっと見つめてるから 走り続けて」という部分で、「あ、泉水さんはここにいるじゃないか」と思いました。会場に来られていたファンにも、そういう感触を持たれた方は、きっと多かったと思います。





コンサートグッズというものをほとんど買わないのですが、パンフレットだけは手に入れます。今回のパンフレットは写真がとても素敵です。そこに彼女の言葉が添えられています。今の自分にぴったりくる言葉に出会いました。

---「強さ」は「弱さ」の裏返しで、「弱さ」は「強さ」の源でもあると思います---

これはそのまま彼女にあてはまることです。