□◆□…優嵐歳時記(2575)…□◆□
野茨や風のそよぎを身に受けて 優嵐
野茨(のいばら)はノイバラという種の名であると同時に、山野に自生するバラ科の落葉低木の総称でもあります。高さは2mほど、蔓性の細い枝に鋭い刺があります。初夏のころ、白い五弁の花がたくさん開き、芳しい香りがします。
坂井泉水さんの肖像画をきっかけに、絵に描かれた人物とそれを見る人のものの見方について昨日は考えました。絵巻物について、もうひとつ連想が働きましたので、今日はそれについて書きます。『平治物語絵巻』のような激しい動きを描く絵巻物とは対照的な作品が『源氏物語絵巻』です。
源氏物語の場面を絵巻物にしたもので、「引目鉤鼻」と言われているように、登場人物は、顔だけでは個人の特定ができないような描き方がされています。坂井泉水さんの「顔」を描こうとして、戸惑ったのは、視線がこちらを向いた顔が少ないだけでなく、目のまわりがはっきりしないものが多いことでした。
これまで人を描く時のポイントは目でしたし、実際、目の部分を黒く塗りつぶすと写真は匿名状態になります。はっきりとしたきれいな目元の人なのに、なぜこんな写真を使っているのだろうと不思議でした。わざわざピントが外れているような写真を使ったりもしています。
その理由を考えたとき、単に彼女が緊張しやすいというだけではなかろう、と思い、ふと『源氏物語絵巻』に思い至りました。あの絵巻物の中で人物はどんな場面でも同じ顔をしています。これは不親切なようでいて、逆に見る側の想像にまかせるという利点があります。
彼女のポートレイトは現代版の引目鉤鼻かもしれない、と思いました。顔立ちがきれいな人だということはわかります。それをあえてはっきり出さず、微妙な角度の写真でその「雰囲気」を見る側に想像してもらう、それがあの写真なのでしょう。
いまのカメラは非常に進んでいますから、明るさやピントをぴたっとあわせてきれいに撮影することは素人でも簡単です。しかし、そうしてしまうと何かが消えてしまうのです。くっきりはっきり描いたカラヴァッジョの油絵から「動き」が消えている、それと似たことが写真で起こるのではないかと思います。
油絵に動きを与えるためにその後の画家、特に印象派以後の画家がさまざまな試みをしたように、ZARDのポートレイトというのは、くっきりはっきり写真によって消えてしまう何か、「坂井泉水が持っているたたずまい、雰囲気、空気」そういうものを写真で表現しようとした結果なのだろう、と思いました。

野茨や風のそよぎを身に受けて 優嵐
野茨(のいばら)はノイバラという種の名であると同時に、山野に自生するバラ科の落葉低木の総称でもあります。高さは2mほど、蔓性の細い枝に鋭い刺があります。初夏のころ、白い五弁の花がたくさん開き、芳しい香りがします。
坂井泉水さんの肖像画をきっかけに、絵に描かれた人物とそれを見る人のものの見方について昨日は考えました。絵巻物について、もうひとつ連想が働きましたので、今日はそれについて書きます。『平治物語絵巻』のような激しい動きを描く絵巻物とは対照的な作品が『源氏物語絵巻』です。
源氏物語の場面を絵巻物にしたもので、「引目鉤鼻」と言われているように、登場人物は、顔だけでは個人の特定ができないような描き方がされています。坂井泉水さんの「顔」を描こうとして、戸惑ったのは、視線がこちらを向いた顔が少ないだけでなく、目のまわりがはっきりしないものが多いことでした。
これまで人を描く時のポイントは目でしたし、実際、目の部分を黒く塗りつぶすと写真は匿名状態になります。はっきりとしたきれいな目元の人なのに、なぜこんな写真を使っているのだろうと不思議でした。わざわざピントが外れているような写真を使ったりもしています。
その理由を考えたとき、単に彼女が緊張しやすいというだけではなかろう、と思い、ふと『源氏物語絵巻』に思い至りました。あの絵巻物の中で人物はどんな場面でも同じ顔をしています。これは不親切なようでいて、逆に見る側の想像にまかせるという利点があります。
彼女のポートレイトは現代版の引目鉤鼻かもしれない、と思いました。顔立ちがきれいな人だということはわかります。それをあえてはっきり出さず、微妙な角度の写真でその「雰囲気」を見る側に想像してもらう、それがあの写真なのでしょう。
いまのカメラは非常に進んでいますから、明るさやピントをぴたっとあわせてきれいに撮影することは素人でも簡単です。しかし、そうしてしまうと何かが消えてしまうのです。くっきりはっきり描いたカラヴァッジョの油絵から「動き」が消えている、それと似たことが写真で起こるのではないかと思います。
油絵に動きを与えるためにその後の画家、特に印象派以後の画家がさまざまな試みをしたように、ZARDのポートレイトというのは、くっきりはっきり写真によって消えてしまう何か、「坂井泉水が持っているたたずまい、雰囲気、空気」そういうものを写真で表現しようとした結果なのだろう、と思いました。

コメント
コメント一覧 (2)
ノイバラ(野茨、学名:Rosa multiflora)は、バラ科の落葉性のつる性低木。 日本のノバラの代表的な種。
種名ローマ字の学名でしか決まっていないのだが・・・。
総称はノバラだろうね。 ポリポリ
>かな書きのノイバラは種名と考えるべきです。
確かに。この辺が日本語の難しいところですね。歳時記には、ノイバラの項目に「野茨はノイバラという種の名前であると同時に、テリノイバラなどを含むいくつかの野生バラの総称でもある」---『草木花歳時記・夏』(朝日新聞社)とありまして、こう書いたのですが、「野茨」と漢字のままで書くほうが適切でしょう。訂正します。