□◆□…優嵐歳時記(2582)…□◆□

  夏鶯鳴くほど森の静かなり  優嵐

鶯は春の季語ですので、夏に入ると「夏鶯」として詠みます。春よりもむしろ夏の方が囀りが華麗になりますが、俳句は季節の兆しや初物を尊重して詠む傾向があります。蝶も春の季語ですが、実際には夏になってからの方が種類も活動もはるかにバラエティに富んでいます。もっとも「初物」「走り」というのは何でも珍重されます。

その年初めて聞く鶯の声や咲き始めた梅や桜というのは心をときめかせてくれるものがあります。桜は花の代名詞ですからもちろんなのですが、鶯や梅はまだまだ寒さの残る中で感じるために、感動が大きいのでしょう。感動というのは「落差」だと思います。

IMG_1142<手間をかける>
境内の池のほとりに咲く花菖蒲
それを見て
そのまま本堂への階段をあがろうと思った

ふと池の周りを歩いてみたらと声がした
一周したところで百メートルにも満たない
のんびり浮かんでいた亀が
気配を察してそそくさと隠れる

反対側に回って振り返ったとき
花菖蒲に目を見張った
静かな池の水鏡に映ったその姿

ちょっと視点を変えてみれば
同じものがさらに美しくなって立ち現れる
手間を惜しまないこと