□◆□…優嵐歳時記(2593)…□◆□  

  雲の峰四方八方立ち上がる  優嵐

雲の峰とは、夏空に湧く積乱雲を意味します。日差しを受けて白く輝き、その偉容を「雲の峰」と呼んだ先人のセンスに脱帽です。土曜日は急激に気温があがり、播磨灘の上にも中国山地の山なみの上にも入道雲が湧き上がっていました。

坂井泉水さんの月命日です。今日はZARDの三枚目のシングル『もう探さない』(91.11.6)のカップリング曲『こんなに愛しても』を取り上げます。三枚目のオリジナルアルバム『HOLD ME』(92.9.2)にも収録されていますが、アルバムタイトルの「HOLD ME」はこの曲のワンフレーズから取られたのではないか、と思います。

こんなに愛しても



歌詞を聴いて、「はー」という気分になりました。内容は、彼女が彼の部屋に来ているのだけれど、真夜中になっても彼は帰ってきません。すでに彼の気持ちは離れていて新しい恋人のもとへ行っているようです。それをわかっていながら彼のことを思い切ることができない彼女の独白…。聴いているとつらくなりますね。

さっさと関係を清算して、次のステップに進んだ方がいいよ、と言ってあげたくなりますが、人間はそういうことがなかなかできないから人間なのでしょう。弱く迷い、愚かで滑稽、それが人間の姿なのだ、としみじみ思います。ここで切ない心をかかえてつぶやいている彼女だけが弱いわけではなく、正面きって彼女に向かうことが出来ない彼もまた弱い人間なのです。

そういう弱い人間同士が傷つけたり傷つけられたりしながら生きている、それがこの世界です。ZARDの楽曲のうち、『負けないで』でブレイクする以前のものは、特にこういうもどかしい切ない世界を歌ったものが多く、友人はこれらの楽曲を聴いて「この人はよっぽどつらい恋愛をしてきたのかと思った」と言いました。

もちろん、彼女自身の体験かどうかはわかりません。体験していなくても描けるのがプロです。小説だろうと歌だろうと、体験の有無にかかわらず、むしろ体験を超えた普遍的な何ものかを掴み取って人々の前に提示できる、それが優れたクリエイターだろうと思います。その点で彼女は群を抜く才能を持っていたことは間違いありません。