彼岸花
ヒガンバナは日本全国に分布しますが、人里に限られているため、歴史に記される以前に中国から帰化し、人の手で広がったものと考えられています。

秋の彼岸入りのころから一斉に咲き始めます。ヒガンバナは種子をつけません。遺伝子が三倍体で繁殖力のある種子ができないのです。そのため、全国に咲くヒガンバナはクローンです。同じ地域の花が同時期に一斉に咲くのはそうした理由があったのです。

これとよく似ているのがソメイヨシノです。ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンから人工的に作り出された品種で、全国のソメイヨシノはすべて同じ遺伝子を持ち、それゆえに一斉に咲いて「桜前線」という現象を生み出しました。

稲が稔りその畦にヒガンバナが咲きそろっているのは日本の原風景です。ヒガンバナは鱗茎に多様なアルカロイドを持つ有毒植物であるため、畦に植えるとミミズが寄り付かず、モグラが穴をあけることを避けられるからだそうです。

さらに鱗茎はデンプン質に富み、すりおろして水にさらせば毒を抜いて食用も可能なことから、救荒作物にもなりました。
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