優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2004年04月

□◆□…優嵐歳時記(54)…□◆□

    花吹雪のせて地球の回りけり   優嵐

姫路は夕方から雨が降り始めました。今年の桜もこれでいよいよ見納め
です。すでに満開になって数日が過ぎていた桜は2、3日前から散り
始めていました。「久方のひかりのどけき春の日にしづごころなく花の
ちるらむ」と紀友則が詠んだように、桜が散っていくのを見るのは
なんともいえない心地がします。容赦ない時の経過を目の前に見せられ
るとでもいうのでしょうか。無常観…。

今日の午前中は仕事で最後のお花見を楽しむことができました。桜を
そば見ていると、やはり生きている花というのはいいなあと思いました。
どんなに人間が工夫をこらして実物に近い造花を作っても、やはり生花
にはかないません。「生きている」ということの不思議を思いました。
「生きている」というのは説明がつかない神秘な現象です。内側から
輝きが溢れてくるのです。

そんな姿のまま、桜は散っていこうとしています。花吹雪、やはり切なく
なります。

□◆□…優嵐歳時記(53)…□◆□

    ゆらゆらとゆうべにゆれて雪柳   優嵐

ユキヤナギはその名のとおり真っ白な小さな花を枝いっぱいにつける
バラ科の落葉低木です。花の期間は長く、少しずつ咲き始め、伸びた
枝は垂れてわずかの風も敏感にとらえて揺れます。関東以西の川岸の
岩の裂け目などに自生していましたが、園芸種としても広く栽培され
ています。

先週訪れた加賀市の「中谷宇吉郎・雪の科学館」では、生垣にこの花
が使われていました。「雪は天から送られた手紙である」という言葉
で知られる宇吉郎は、雪や氷に関する科学の分野を次々と開拓し、世
界で初めて人工雪を作り出した科学者です。また、名随筆家としても
知られています。柴山潟に面した建物の脇で揺れる真っ白な花、美しい
光景でした。

□◆□…優嵐歳時記(52)…□◆□

    花見して顔の火照りを持ち帰る   優嵐

姫路城へお花見に行ってきました。青空の下、桜は満開、風もなく、
絶好のお花見日和でした。平日にもかかわらず、三の丸広場は
お花見の人で埋め尽くされていました。いろいろなグループ、
家族連れ、カップルetc...思い思いに桜と天守閣の眺めを楽しんで
います。私たちが座っていた隣では民謡のグループがお花見中で、
自転車くくりつけたカセットデッキから民謡を流しながら、輪に
なって踊っていらっしゃいました。

花の下で、あるいは歌いあるいは踊り、酒に酔い花に酔う。お花見
という習慣がいつごろから日本人の間に定着したのかはわかりませ
んが、桜の花がある限り、千年のちも日本人はやはりお花見を楽しん
でいることでしょう。今日はとてもお天気がよかったので、日に焼け
ました。花に酔った顔が少し火照っています。

□◆□…優嵐歳時記(51)…□◆□

    満月の光さやかに花の冷え   優嵐

今日は閏如月15日、満月です。姫路では昼過ぎまで降っていた雨
があがったあと、気温が下がりました。花冷えです。桜の咲く季節
は寒暖の差が大きく、またお天気もめまぐるしく変わることから、
体調を崩しやすい時期でもあります。照っても曇っても雨でも美しい
桜、心憎いです。こうしてどきどきさせて一夜の嵐でさっと散って
しまうのですから。

さきほど階下におりて桜を見てきました。すでに散り始めて木の
根元には花びらが散っています。見上げると満開の桜の間から満月が
見えました。気温が低いせいか月光が冴えています。桜、こうして
見上げていると、いろいろなことを思い出します。そしてこうして
見上げた桜のことをまた思い出す日がくるのでしょう。

□◆□…優嵐歳時記(50)…□◆□

    カーブごと花新しき道を行く   優嵐

この国で花といえば桜です。今日は午後からオートバイを走らせて
加西市、八千代町、中町、加美町と中播磨から北播磨を周って、
兵庫の内陸部を走ってきました。里も山も桜が満開です。カーブを
曲がっていくとその先にまた新たな桜が枝を広げています。平凡な
山里がこの季節は見違えるような華やかさです。

オートバイで走りながら見る桜というのもいいものです。次々に
花が現れそれが流れ去っていきます。数年前に東北で桜のトンネルの
下を自転車で走り抜けたことを思い出しました。国道に沿って桜並木
が続いていたのですが、陶然とするような美しさでした。このまま
ずっとずっと走って桜と溶け合ってしまいたい…、そんな思いが
よぎりました。桜、罪作りな花です。

□◆□…優嵐歳時記(49)…□◆□

    桜咲くその寂しさに立ち尽くす   優嵐

姫路では、桜がほぼ満開です。私が住んでいるアパートの前の桜は
ライトアップされて、闇の中にあの桜色が浮かび上がっています。
夜遅く、自分の車に忘れ物をしたことを思い出して、階下に降り
ました。静かで誰もいない駐車場の向こうに、桜がいっぱいに花を
開いて立っています。しばし足を止め、魅入られるようにその花の
色を見つめていました。

桜、華やかで美しく、けれど儚くてせつない花。花はどんな花でも
好きですが、やはり桜は特別です。絢爛として咲きながら、どこか
寂寞とした空気をまとってやまない花です。日本人がなぜこんなにも
桜が好きなのか。日本人のひとりとして不思議ですが、日本の美意識
と切っても切れないものを、桜が表しているのだろうと思います。

桜、誰かといっしょに楽しむのもいい花ですが、私はひとり静かに
満開の桜と対峙するのが好きです。そして心の中に湧いてくる寂しさ
をゆっくり味わうのです。

□◆□…優嵐歳時記(48)…□◆□

    四月くる制服替えて出勤す   優嵐

今日から新年度。私は、3年いた部署から元のところに戻りました。
3年の間に機構改革があったり、イントラネットが導入されたりと
職場は様変わりでした。しかし、すぐに慣れると思います。こうして
部署を変わるのも気分が一新していいものです。何事も節目という
のは大切ですね。

四月、桜をはじめ、花々がいっせいに咲き始め、春の華やかさが頂点
に達する月です。入学、新入社員など、初々しい輝きが町にあふれる
ときでもあります。俳句では、四月はすでに晩春と考えます。
たけなわの春はすでに春の終わりでもあるのです。うつろいゆくもの
への愛惜をもっとも感じるのがこの季節かもしれません。

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