優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2004年07月

□◆□…優嵐歳時記(149)…□◆□

    よき仕事期してビールで乾杯す     優嵐

昨日は8月20日から始まるオリベ編集学校(ISIS編集学校の岐阜県
版です)のキックオフミーティングのために岐阜へ行ってきました。
県の担当者の方も交えて数時間に渡る打ち合わせ会議をしたあと、
スタッフで懇親会をしました。これから終了の12月まで、またひとつ
のプロジェクトを運営していくメンバーの一人になります。何かが始まる
ときというのはいいものです。

私はあまりアルコールが強くありません。その日によっては少しビール
を飲んでも平気なこともありますが、だいたいは眠くなってしまいます。
昨日は乾杯のあと、飲み干したビールがことのほかおいしかったのです
が、最後はちょっと眠っていましたね(笑)

□◆□…優嵐歳時記(148)…□◆□

    自動ドア抜けて蝉しぐれの中へ     優嵐

蝉は真夏を代表する昆虫です。多くの蝉がいっせいに鳴くと、まるで
驟雨のように聞こえるので「蝉しぐれ」といいます。腹部の特別な
室に張られている薄い鼓膜を筋肉の力で振動させて鳴きます。鳴くのは
雄だけです。

蝉は大都会でも普通に見られます。冷房の効いたビルから一歩外へ出た
とたん、頭上から降るような蝉しぐれ。皮膚にまとわりつくような暑さ
とともに一気に汗が吹き出します。アスファルト上に蝉の抜け殻が転
がっていました。蝉の羽化は早朝です。背中が割れて、薄い色をした
蝉が姿を見せます。まだ羽が十分伸びておらずしばらくは飛ぶことが
できません。長い幼虫期間に比べると、成虫として過ごすのはほんの
短い間です。

□◆□…優嵐歳時記(147)…□◆□

    夜の雷静かに雲を光らしむ     優嵐

ここ数日、午後から積乱雲が発生し、夜になると決まってどこかで
雷が鳴っています。どうやら山沿いでは雷雨がきているようなの
ですが、私の家からは雲が光るのが見えるくらいで、雨はありません。
「雷」は年中発生しますが、夏が最も多く、夏の季語になっています。
雲の中の電気が他の雲や地面との間に放電する現象です。

古来日本人は雷を鬼の姿で思い描いており、今も太鼓を背にした
鬼の神が雷さまのイメージとして定着しています。そういえば、
子どものころは雷さまがおへそを取りに来るよ、なんて言われたもの
ですが、今ではもうそんなことは言わないのでしょうか。せいぜい
コンピュータの電源を落とせ、と言うくらい?(笑)

□◆□…優嵐歳時記(146)…□◆□

    真ん中にスイカを置いて車座に      優嵐

「スイカ」は季語の分類では、初秋ということになっています。
しかし、現実の感覚としては夏のものでしょう。実際に他のスイカ
関連の季語「西瓜割り」や「西瓜冷やす」が夏の季語になっている
のですから、奇妙な感じです。

職場のスタッフが家でとれたスイカを持ってきてくれました。私に
とってスイカといえば、圧倒的に夏休みの食べ物です。暑い日の午後、
縁側で冷やしたスイカを切ってもらい、口の周りや胸を果汁で濡らし
ながら食べた記憶がいくつも蘇ってきます。スイカは上品にスプーン
でちょぼちょぼっと食べるより、大きく切り分けたのを手づかみで
とり、かぶりつくのが一番おいしい食べ方だと思います。

□◆□…優嵐歳時記(145)…□◆□

    夕涼のテニスコートに球を打つ      優嵐

私は毎週一回ナイターでテニスをしています。昼間は強い日差しが
照りつけるコートも夕暮れ時ともなれば涼しい風が吹いて、かなり
しのぎやすくなります。プレーをすれば汗だくになりますが、それ
でも気持ちのいいものです。

夏は暑い季節ですから、涼しさというものがとりわけ珍重されます。
クーラーの行き渡った現代でも、やはりそれは変わらないでしょう。
一歩建物をでれば炎天であり、冷房に慣れた身体にはそれがいっそう
堪えます。だからこそ、ほんの少しの涼気や朝夕の涼しさがうれしく
感じられるのではないでしょうか。

□◆□…優嵐歳時記(144)…□◆□

    あこがれを映して高し雲の峰      優嵐

「雲の峰」とは積乱雲のことです。入道雲ともいいますね。強い
日差しによって地表が熱せられ、激しい上昇気流が起こって、晴天の
真夏の午後にむくむくと立ち上がります。場合によっては上空数千
メートルに達します。その輪郭は鋭く、青空を背景に夏の陽を反射
して輝いているさまには、むき出しの真夏のエネルギーを感じます。

ただし、歌言葉として用いられた形跡はなく、むくつけき入道雲は
貴族の歌の題にはとりあげられませんでした。もともとは漢詩から
きた言葉で、それが俳諧に取り入れられ、詩語として定着したのは
元禄時代以降です。芭蕉が「雲の峰いくつ崩れて月の山」と詠んで
います。

□◆□…優嵐歳時記(143)…□◆□

    梅雨明けの紺天へバイク走らせる      優嵐

近畿地方も梅雨明けしました。すでに7月に入って以来あまり梅雨
らしくないお天気が続いていましたから、気象庁の梅雨明け宣言が
むしろ遅い感じがしました。気分的なものですが、やはり梅雨明け
の声を聞くと、「真夏なんだ!」とウキウキした気分になります。
猛暑が続きますので、多くの方がげっそりされているようですが、
私は真夏という響きが大好きです。

今年の梅雨、姫路周辺ではやや雨量が少なめかなという印象を受け
ます。7月に入ってからはほとんど梅雨らしい空模様はなく、台風
が来ていなければ、空梅雨気味だったかもしれません。

□◆□…優嵐歳時記(142)…□◆□

    翻る青葉それぞれ陽を返す      優嵐

職場のすぐ近くにある公園にはユリノキが公園樹として植えられて
います。北アメリカ原産で葉が半纏の形に似ているところから日本
ではハンテンボクとの別名もあります。大木になり、樹形が美しい
ことから街路樹として植えられることの多い木です。今は青々とした
広い葉を茂らせ、気持ちのいい木陰を作ってくれています。

暑い盛り、公園も人影が途絶えています。しかし、ユリノキの木陰
に入って見上げると、それぞれの葉が風にゆれながら陽の光を反射
しているさまが見えて、涼しさを感じました。

□◆□…優嵐歳時記(141)…□◆□

    きらきらと夏の夕陽に天気雨      優嵐

俳句で「夏」といえば、立夏から立秋の前日までを指します。2004年
であれば、5月5日から8月6日までということになります。夏と
いっても、若葉の頃、梅雨、盛夏とそれぞれ随分趣が違います。日本の
季節は、いわゆる「四季」ではなく、もっと細やかに移り変わって
いきます。水原秋櫻子は「俳句作者はその相違を詳しく観察するのが
大切だし、またそれがまことに興味深いのである」と言っています。

このところ夕方になると積乱雲が発生し、あちこちで雷雨が発生して
います。九州、四国、中国地方は梅雨明け宣言がありました。昨日も
姫路の北の山を巡って夕立が走っていくのが見えました。こちらまで
くるのかな、と思っていたのですが、そこまでは至らず、夕陽が指す
中に大粒の雨がさっと通って、それでおしまいでした。

□◆□…優嵐歳時記(140)…□◆□

    ひまわりや青空を背に汝も我も      優嵐

真夏を象徴する花といえば、やはり「ひまわり」です。太陽の
化身のような花で、英語、ドイツ語、フランス語でもやはり
太陽にちなんだ名前がつけられています。ブルボン王朝絶頂期
の太陽王ルイ14世の紋章もヒマワリだったそうです。

ヒマワリは北米大陸の中西部原産で、高さ1〜2メートルにも
なり、日本へは17世紀半ばに中国経由でやってきました。
中国語でも「向日葵」というそうです。種子には多量の油脂が
含まれ、食用にしたり、油脂をとるために栽培される品種も
あります。アジサイは雨が似合う花ですが、ヒマワリは圧倒的に
晴天が似合う花ですね。

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