優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2004年08月

□◆□…優嵐歳時記(189)…□◆□

    嵐去り二百十日のものの影   優嵐

昨夜は6時間近く停電していました。これほど長時間の停電を経験した
のは本当に久しぶりでした。朝、目が覚めると昨日の大嵐は嘘のような
青空でした。しかし、あちこちに大枝やら小枝が飛び散り、看板が倒れ
ているのも目にしました。通行止めになっている道路も。

今日は「二百十日」、立春から数えて二百十日目です。稲の開花期に
あたり、台風の襲来する時期ということで、農家では昔から厄日として
警戒してきました。二百二十日も同じです。台風16号は見事に厄日を
狙ってやってきたということになりますね。


□◆□…優嵐歳時記(188)…□◆□

    暴風雨雲の彼方は盆の月   優嵐

さきほどから停電している姫路です。台風の風は午後7時ごろから
強くなり、今、家のまわりでは風がうなりをあげています。時おり
ぐわっとくるのが凄いです。停電しているので、扇風機も使えず
蒸し暑い夜です。

今日は旧暦の7月15日、お盆です。旧暦ではお盆は必ず満月でした。
この満月を「盆の月」と呼びます。ちなみに次の満月が「中秋の名月」
(9月28日)、その次が「後の月」(10月28日)という
ことになります。季語には月に関するものがたくさんあり、昔の人が
月に寄せる思いは今とは比較にならないほど大きなものだったのだな
と感じます。今夜の姫路の「盆の月」は台風の雲のむこうです。

□◆□…優嵐歳時記(187)…□◆□【野分】
 
   野分くるはためくものをはためかせ  優嵐

「野分」は秋の暴風雨のことです。台風の古風な呼び名と
いえます。草木を分けるということから野分と名づけられた
ようです。『枕草子』や『源氏物語』に野分の描写がある
ように平安時代からすでに使われていた言葉です。

台風よりは意味する範囲が広く、台風の前触れの強風や台風が
それた場合の余波も「野分」といえます。

□◆□…優嵐歳時記(186)…□◆□

    一日を終え白粉の咲く道を   優嵐

「白粉(おしろい)」とは、オシロイバナのことです。熱帯アメリカ
原産の多年草ですが、日本では一年草になります。17世紀にはすでに
日本に渡来している記録があります。フォー・オクロックと呼ばれる
ように、夕方から芳香を放ちながら咲き始め、朝には萎みます。花は
赤、白、黄色、絞りなどがあります。

オシロイバナとの名称は一個ずつできる黒い種子の中に白い粉が
詰まっていることからきたもので、江戸時代には、大人の女性も実際
に白粉として使っていたと解釈できる文献があるそうです。

職場の前の家のまわりにオシロイバナが植えられてています。仕事を
終えて帰ろうとしていると、白と赤のオシロイバナが咲いているのに
出会いました。

□◆□…優嵐歳時記(185)…□◆□

    朝顔や空澄みわたり晴れわたり   優嵐

意外な印象を受けられるかもしれませんが、「朝顔」は秋の季語
です。東南アジア原産といわれるヒルガオ科蔓性の一年草で、花は
朝開いて昼ごろにはしぼみます。葉は三裂して対生です。日本に
渡来したのは奈良時代の末と古く、朝顔の名はすでに『万葉集』や
『源氏物語』『枕草子』に登場します。これらの花は実際はキキョウ
やムクゲであるという説もありますが、実態ははっきりしていません。

当初は薬用として入ったようですが、観賞用の花になりました。
江戸時代に改良が進み、色、形ともに多様なアサガオが生み出され
ました。子どものころは、アサガオの観察日記を書いたものでした。
もうすぐ夏休みも終わりですね。

□◆□…優嵐歳時記(184)…□◆□

    歩み出てすでに秋めく影法師   優嵐

「秋めく」とは、風や空気、空の様子、光の差し具合などがどこ
となく秋らしくなることをさす季語です。残暑の中にそれでも確実
に訪れている秋らしさ、秋の気配を言います。何を秋めくと感じる
かは主観的なものですが、いかにも日本人の感性にあった季語だと
思います。

昼間はまだ、かなり残暑が残っていますが、ひとたび日が傾くと、
その傾き加減にはっきり秋の訪れを感じます。勤務を終えて夕刻の
日差しの中へ歩み出ると、足元から前に長く影法師が伸びていき
ました。

□◆□…優嵐歳時記(183)…□◆□

    蒼空を映して水の澄みにけり   優嵐

秋の水には澄んだイメージがあります。「秋の水」という季語もあり
ますが、水澄むはそこから派生してきた季語です。夏にはどこかなま
ぬるい感じがしていた水、それが秋を迎えてしだいに冷たく澄んで
くる様子を表しています。

今日は午後から澄んだ青空が広がった姫路でした。稲が日に日に
熟れていき、早稲の田はすっかり黄金色です。この稲穂の色に
ふさわしいのが澄んだ空と澄んだ水なのです。

□◆□…優嵐歳時記(182)…□◆□

    秋の夜のジャズの流れる静けさに   優嵐

ジャズに詳しいわけではありませんが、ヨーロピアン・ジャズ・トリオ
はよく聴きます。今これを書きながら聴いているのは『天空のソナタ』
というCDで、バッハやショパンといったクラシック曲をジャズ風に
アレンジしたものです。

静かなジャズは真夏よりも、しだいに長くなっていく秋の夜に
ふさわしいと感じます。気持ちが穏やかに内側に落ち着いていって、
夏の喧騒や激しいエネルギーの発散のあとの、内省的な気分によく
あいます。こういう曲を聴きながらものを書いたり、本を読んだり
するひとときが好きです。

私はアウトドアでの活動が好きですが、それと同様にひとりで静かに
ゆっくりと過ごす時間も大好きです。静と動、陰と陽、どちらも
大切な時間です。

□◆□…優嵐歳時記(181)…□◆□

    処暑の雨燕は低く縦横に   優嵐

今日は二十四節気の処暑でした。立秋から数えて15日にあたり、
太陽の黄経は150度です。処暑とは、暑さがやむ、との意味で
今日は姫路も雨模様であったため気温が低めでした。アテネの女子
マラソンは35度の猛暑の中の戦いでしたが、東京の今日は9月
中旬から下旬の気温だったとか。

また台風が接近しています。すでに熟れた早稲の中には続く台風の
おかげでべったりと倒れ伏しているものがあります。本来台風の
季節は9月以降という気がするのですが、今年は梅雨の最中から
台風が襲来し、すでに4、5個が日本列島を通過していったのでは
ないでしょうか。

処暑を過ぎると朝夕は本格的に秋の気配が増していきます。まだ
残暑がぶりかえす日もありますが、やはり秋はしだいに深まって
いくのです。

□◆□…優嵐歳時記(180)…□◆□

    蜩の透き通らせて夕景色   優嵐

蜩(ひぐらし)は晩夏から初秋にかけて、カナカナカナと響きのある
声で鳴きます。カメムシ目セミ科、セミの中では最も品のある美しい
声で鳴きます。どっと暑さを感じる蝉しぐれとは異なり、蜩の声を
聞くと、すーっと涼しい気持ちになります。

早朝や夕刻に鳴くことが多く、特に夕刻の鳴き声が印象に残るところ
から、この名前がついたようです。別名かなかなとも言います。
ホウシゼミとともに夏休みの終わりを告げるセミでもあります。
そろそろお子さんのある家では夏休みの工作や宿題の仕上げにかかって
いらっしゃるのではないでしょうか(笑)。

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