優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2004年08月

□◆□…優嵐歳時記(179)…□◆□

    髪切って新たに涼し午後の風   優嵐

単に「涼し」でしたら、夏の季語ですが、「新たに涼し」は秋の季語
です。このあたりが季語のややこしいところです。「新たに涼し」は
「新涼」「初涼」などとも言います。句の語感で用いる季語を変えて
いきます。「新たに涼し」は秋に入ってから感じる涼気のことで、初秋
の新鮮な空気を心地よく感じる言葉です。

久しぶりに髪を切ってきました。髪が多いので随分軽くなりました。
カットというのは気分転換にはなかなかいい手段かもしれません。
シャンプーしてもらったり、マッサージを受けたりするのもいいもの
です。ささやかな贅沢?

□◆□…優嵐歳時記(178)…□◆□

    文月や明日切る髪を洗う夜   優嵐

「文月」は陰暦の七月の異称です。別称の中に「七夕月」「文披月」
などがあります。文披月の略称が文月になったというのが定説です。
今日は文月五日、陰暦では明後日が七夕です。新暦の七月七日は梅雨
の最中ですが、旧暦の七夕は空が澄み始め、雨も比較的少ない初秋に
あたります。七夕の伝統的な季感はこちらにあり、古典に登場する
七夕はすべて初秋の行事として読まなければ、古人が感じた趣とは
離れてしまいます。

その他の別称としては、「女郎花月」「秋初月」「涼月」「親月」
「穂含月」などがあり、いずれも季節感に富んだ美しい名称だと思い
ます。

□◆□…優嵐歳時記(177)…□◆□

   ひそやかに強きのもなり女郎花  優嵐

「女郎花(おみなえし)」はオミナエシ科オミナエシ属の
多年草です。1mほどの細茎を分岐して、黄色の五弁の細かな
花を傘のように開きます。秋の七草のひとつで、全国に分布し、
万葉集の昔から詩歌に詠われています。

繊細な姿が女らしく感じられてこの名がついた模様です。
しかし、盆花に用いられるだけあって、花のもちはよく、
この点もたおやかなれども芯が強いという女性らしさに通じ
ているようです。

□◆□…優嵐歳時記(176)…□◆□

    鬼灯を挿して人無きテーブルに   優嵐

今日は一日中雨が降ったりやんだりの姫路でした。それも一気に
どっと降ってはしばらく晴れる、という降り方で、秋の雨らしく
ありません。これも台風の影響かと思います。それでも今は雨が
やみ、窓の外では虫の声がしています。静けさを感じるひととき
です。

「鬼灯」は東アジア原産のナス科の多年草です。ひと目見れば誰
でも記憶してしまう独特の色と形をしています。現在は観賞用と
して育てますが、もともとは薬用として栽培されました。七月に
浅草の浅草寺でおこなわれる「鬼灯市」(夏の季語)も、鉢植え
の鬼灯をあとで薬として利用するためだったそうです。

□◆□…優嵐歳時記(175)…□◆□

    それぞれの墓にありけり秋の花   優嵐

お盆でお墓参りに行くと、お墓ごとに女郎花、鶏頭などの秋の花が
供えられていました。この時期はふだん遠く離れて住んでいる親族
と顔をあわせる機会でもあります。先祖のお墓参りと言いながらも、
こういう機会がないと、成長した子どもたちが親元に集まるときが
ないのかもしれません。それゆえに激しい渋滞にも耐えて、多くの
人が故郷を目指すのでしょう。

お盆が終わり、今日の姫路は午後から激しい雨が降ったりやんだり
でした。台風の影響かとも思われます。台風が上陸する心配はなさ
そうですが、台風が行ってしまえば、さらに秋が進むことでしょう。

□◆□…優嵐歳時記(174)…□◆□

    風吹いて空高くなり盆休み   優嵐

さすがにお盆です。あれほどの猛暑がそれでもここ二三日でぐっと
なりを潜めた感があります。「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、
酷暑といわれるほどの暑さは、やはりお盆までのものだという気が
します。確かに日中はまだまだ大変暑いのですが、朝夕の涼しさは
はっきり秋を示しています。

昨日も父方と母方、両方のご先祖の墓参りを終えて車で帰っていると、
空にはうろこ雲が出ていました。秋の空の主役です。子どもの夏休み
が8月いっぱいあるために、8月は夏だと思い込んでいるようですが、
8月の半ばを過ぎれば、そこはもう秋の中です。

□◆□…優嵐歳時記(173)…□◆□

    鉦の音のそちこちにあり送り盆   優嵐

今日はお墓参りに行きました。その後、供物と線香を持って家の裏を
流れる市川の川原へ行きました。「送り盆」とは盂蘭盆の間、家に
来ていた先祖の霊を送る行事のことです。茄子や胡瓜の馬を川や海
に流し、霊たちはそれに乗って帰っていくと考えられています。
川原の一角が誰いうともなくその場所になっており、供物が備えられ
読経と鉦の音があちこちから聞こえていました。

子どものころは祖母に連れられて、「送り盆」をしたものでした。
あのころとは随分周囲の様子が変わり、今は祖母を祖先の精霊の
ひとりとして迎え、送り出すようになりました。川にものを流すのは
環境のことを考えるとあまり望ましくないのでしょうが、大事な習俗
としてまだしばらくは許されるようです。

□◆□…優嵐歳時記(172)…□◆□

    盆の雨静かに夜を包みける   優嵐

姫路ではさきほどから雨が降り始めました。お盆の雨、珍しいように
思います。お盆は「盂蘭盆会」「魂祭」とも言います。サンスクリット
語のウラバンナが語源といわれ、釈迦の高弟目蓮が餓鬼道に落ちた母
の苦しみを救うために始めたのが起源といわれています。

日本で現在のようなお盆の形が完成されたのは江戸時代です。現代も
地方によって新暦、月遅れ、旧暦とさまざまな時期にお盆の行事を
おこないますが、一般には8月13日から15日の月遅れのお盆が
もっともポピュラーなようです。年末年始と同様に休暇をとって故郷
へ戻る人が多いのもこの時期ですね。

□◆□…優嵐歳時記(171)…□◆□

    彼の人の病のしらせ木槿咲く   優嵐

昨日、ISIS編集学校から松岡正剛校長が胃の手術をされるとのメール
が届きました。千夜千冊の満願に向けて無理に無理を重ねられたのが
たたったのだと思いました。普段から身体のことには無頓着な方だけ
に、これを養生の機会としていただきたいと思います。

「木槿(ムクゲ)」はアオイ科の落葉低木。樹高は3mあまりで、花
は白、薄紫、淡紅などいろいろあります。ハイビスカスと同じ仲間で
夏から秋にかけて咲きます。インドから中国が原産地といわれています。
白い花で中心部が紅色のものを底紅と呼びます。

□◆□…優嵐歳時記(170)…□◆□

    稲の花かすめて燕飛び交わす   優嵐

早稲はすでに稲穂が垂れていますが、中稲は今が稲の開花の時期
です。厳密にいうと、花は後に籾殻になる頴(えい)の下に隠れて
見えず、6つある雄しべの先が飛び出る格好になります。その年
の米の収穫量は開花時期の晴天と高温が頼みです。目立たない
花ですが、稲田のそば近く寄って見ると、粉をまぶしたような繊細
な白い花が目につきます。

今日も快晴の姫路でした。お盆も近く、朝夕は少し涼しくなって
しのぎやすくなりました。空の雰囲気もどことなく秋の色で、着実
に季節が進んでいるのを感じます。筑豊や練馬といったナンバー
の車を見かけました。帰省シーズンですね。

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