優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2004年09月

□◆□…優嵐歳時記(217)…□◆□

    まぶしさや雲美しき九月尽   優嵐

今朝は久しぶりに青空をみました。今は夜空に17番目の月が
でています。台風が洗い流していったような空に、朝はまだ
なごりの雲が残っていました。その雲のかたちがやや強めの
風の中で刻々と変わっていくのがきれいでした。

「九月尽」は文字どおり、9月が終わるという意味です。もと
もとは旧暦の9月末日をさしていましたから、新暦なら11月
初めごろにあたります。しかし、最近ではほとんどの場合、
新暦で詠まれることが多いようです。明日から10月、今年も
ラストクォーターにはいります。


□◆□…優嵐歳時記(216)…□◆□

    十六夜の嵐の去って虫の声   優嵐

姫路はすでに暴風雨圏を抜けました。風の音が静かになるとともに
虫の音が聞こえてきました。今日は旧暦の8月16日、この夜に
出る月を十六夜(いざよい)と呼びます。十五夜よりやや遅れて
出るので、ためらいながら出る月という意味です。いざよう月とも
いいます。「いざよふ」はたゆたい、ためらうということです。

今夜は台風の影響で十六夜を楽しめるところは日本でもごく
限られた地域だったのでは、と思います。今年日本に上陸した
台風は8個。観測史上最高だそうです。そういえば、梅雨のさなか
から、はやくも台風が来ていました。これが今年最後であるよう
祈りたいものです。

□◆□…優嵐歳時記(215)…□◆□

    雨月とてメールを打つやひたすらに   優嵐

今宵は旧暦の8月15日、中秋の名月です。しかし、あいにく姫路
では夕方から雨が降り始めました。台風21号の影響です。明日の
夜も雨になるでしょうから、十六夜も楽しめそうにありません。
満月は数あれど、やはり中秋の名月の美しさは特筆に価します。
名月を詠んだ句は数知れず、

  名月や池をめぐりて夜もすがら 芭蕉
  名月や畳の上に松の影     其角
  名月を取てくれろと泣く子かな 一茶

などはとくによく知られています。名月の夜に雨が降ったときは、
「雨月」といいます。単に曇って月が見えない場合は「無月」です。
秋の季語には月にまつわるものがたくさんあり、いにしえの人が
いかに月を愛でていたかがよくわかります。

□◆□…優嵐歳時記(214)…□◆□

    カンナ咲く明るき峠を越えにけり   優嵐

カンナはカンナ科の多年草です。芭蕉に似た楕円形の葉の間から花茎
を出し、大きな唇形花を開きます。色は赤、黄色、オレンジなど熱帯
原産らしい鮮やかです。花期は長く、7月ごろから秋が深まるまで
咲いています。

日本へは明治時代にヨーロッパで品種改良されたものが、観賞用として
入ってきました。カンナの鮮やかな色から夏の花との印象が強いの
ですが、季語では秋に入ります。

□◆□…優嵐歳時記(213)…□◆□

    秋の薔薇清しき香を放ちけり   優嵐

「薔薇」そのものは四月、五月に咲きますので夏の季語ですが、
一段落して、盛夏を過ぎ、再び咲いたものを「秋薔薇」といいます。
二度目ですから花はやや小ぶりになります。秋が深まる中で咲く
薔薇も風情があってよいものです。

今日の午前中、散歩をしていて秋薔薇を見つけました。確かに夏の
大輪の華やかさはありませんが、近づくと薔薇の香りがしてきました。
まだ残暑の気配もありますが、森にはいればどんぐりが落ちています
し、店先にはりんごが並び始めました。

□◆□…優嵐歳時記(212)…□◆□

    雲流れ秋光遠き大橋に   優嵐

「秋光」は「秋の色」「秋景色」などと同じ意味で使われる季語です。
秋らしい景色、彩り、さらには秋の気分や秋の気配までも含んで
います。しいていえば、「秋の色」には伝統的な雰囲気が、「秋光」
には秋の明るい外光を感じます。

今日の兵庫県南部地方は朝から晴天で、遠くのものまではっきりと
見える秋らしいお天気でした。日の当たる場所は、まだ暑いですが、
風が肌に心地よく、何をするにもいい気候になってきました。
空には鰯雲、遠くに見える瀬戸内海と淡路島、そしてそこにかかる
明石海峡大橋も、すべて秋の光の中にあります。

□◆□…優嵐歳時記(211)…□◆□

    秋雨の中を流れる人の波   優嵐

ビルの上階から下を見ていると、人々があちこちと行き交っている
さまがよくわかります。雨が降り出したことも傘が開くので気が
ついたほどでした。みんな忙しそうに広場を横切っていきます。
それぞれ行く場所があり、することがあるのだなあと思うと人の
流れを見ているのが面白くもあり、不思議でもあります。

今日もお天気がぐずつき、朝方はかなり激しい雨が降りました。
「秋雨」は細かく、ときには梅雨のように降る雨をさすのが本意
ですが、それはそれ、いろいろな雨を詠んでまったくかまわないと
思います。

□◆□…優嵐歳時記(210)…□◆□

    鉛筆をいっぱい削る秋の昼   優嵐

最近では、鉛筆を削ることがほとんどなくなっています。ボールペン
やシャープペンに押されて、ふだんはあまり鉛筆を使いません。
しかし、集団検診の間、検診票に書き込むのは、すべて鉛筆でした。
いっぱい鉛筆を用意して、一日の検診が終わると、まとめて鉛筆
を削りました。

子どものころは、手回しの鉛筆削りでごりごりと鉛筆を削って
いました。小学校の高学年になったとき、ナイフで削る鉛筆に憧れて、
切り出しナイフで削るようになりました。絵を描くときはもっぱら
ナイフで削った方がいいのです。軸によく切れるナイフの刃をあてて
すっすっと削っていくときはある種の気持ちよさがありました。

□◆□…優嵐歳時記(209)…□◆□

    コーヒーにフルーツケーキ秋湿り   優嵐

今日は一日中雨模様の姫路でした。そのせいか一気に気温が下がり、
肌寒さを感じるほどでした。つい先日汗だくでテントをたてたのとは
うって変ったこのお天気。「秋湿り」とは、秋の雨のために空気が
湿ってしっとりと冷たい感じになっていることです。「しけ寒」とも
いいます。秋が一足跳びに進むのはこういう雨のあとだなと思います。

今日は先週からずっと続いていた町の集団検診がひとまず終わりほっと
しました。おいしいケーキをスタッフでわけてコーヒーを飲みながら
くつろぎます。こういうときというのはいいものです。仕事に緩急が
でき、一区切りついた、という気分を味わえるのですから。

□◆□…優嵐歳時記(208)…□◆□

    すすき分け町見下ろせる峠へと   優嵐

すすきは秋の七草の尾花としても知られ、十五夜のお月見にも欠かせ
ないものとして、日本人の暮らしになじみの深い植物です。イネ科の
多年草で、山野のいたるところに群生します。尾花は黄褐色からしだい
に色あせて最後は白色となります。秋風になびくすすきの風景は日本
独特のさびしさの風情があり、万葉集のころからすでに歌に詠まれて
いました。

すすきは茅葺屋根の材料の茅でもあります。かつてはそれぞれの集落に
茅葺の材料のすすきを刈る「萱場」がありました。低地から亜高山帯
まで自生し、日本全土、朝鮮半島、中国に分布しています。青すすきは
夏の、枯すすきは冬の季語になります。

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