優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2004年12月

□◆□…優嵐歳時記(297)…□◆□

   陽の中に出でて楽しき今日冬至   優嵐

今日は冬至です。クリスマスは、元々ヨーロッパにあった冬至の
太陽の復活を祈る祭りがキリスト教信仰と結びついたのだときいた
ことがあります。太陽黄系が270度になり、太陽は北半球から最も
遠ざかります。昼間の時間が最も短い日です。

この日を境にまた日が長くなってくることから「一陽来復」とも
言います。冬至のころから、本格的に冬の寒さが厳しくなってくる
ことから、「冬至冬なか冬はじめ」といったりもします。姫路でも
今朝は少し冷え込みました。

今日は忘年会でした。冬至にちなんでかぼちゃが出てきました。

□◆□…優嵐歳時記(296)…□◆□

   読みかけてまたうたた寝の冬の昼   優嵐

コタツに入り、そこで読みたいと思っていた本をゆっくり読み
始めるときというのは幸せです。次々と読みたい本は現れる
のですが、時間がなかなかとれません。いつも本は鞄に入れて
どこでも読めるようにしていますが、それでも家でゆっくり、
というのは格別です。お茶でもいれて、本を開いて読み始め
ます。

しかし、探偵小説や冒険小説のようなエンタティメントであれば、
そのまま一気にひきこまれて最後のページまで、ということに
なるのですが、今、私が読んでいるのは「認知科学」に関する本。
知的なおもしろさにわくわくもするのですが、いかんせん、かな
り専門的でこみいった話もあり、睡魔がふらっとやってきます。
こういうとき、コタツは睡魔の協力者になるんですね。

□◆□…優嵐歳時記(295)…□◆□

   大半はパソコンまかせ賀状書く   優嵐

年賀状、ここ2,3年は完全にパソコンまかせになっています。
年賀状ソフトを使えば、あっという間に住所まで完璧な年賀状
のできあがりです。かつては何日もかかって絵を描いたり、
版画をしたり、あれこれ大変だったものですが、あっけない
ものです。

年賀状を印刷しながらも、これもそのうち廃れていく風習だろう
と思いました。すでに人脈はインターネットを介して作られる
ようになっており、メールで話がすむ人とは住所さえ知らない
ことが多いのです。そんな中で育つ21世紀生まれの子どもたち
が大人になるころ、「賀状書く」という季語も過去のものになっ
ているかもしれません。

□◆□…優嵐歳時記(294)…□◆□

   舌焼いてコーヒーを飲む霜夜かな   優嵐

私はコーヒーが好きで一日に何杯も飲みます。最近デンマーク
製のユニークなコーヒーメーカー「Cafe Solo」を手に入れま
した。コーヒーメーカーというと、かなり大げさなものが多く、
今まではペーパードリップ式のもので入れていたのですが、
これはそのアイディアのおもしろさとコンパクトさにひかれて
思わず買ってしまいました。

「霜夜」とは、よく晴れて寒気が厳しく霜の降る夜のことをいい
ます。戸外がしんしんと冷えてくる夜、机に座って熱いコーヒー
を飲むひとときは、いいものです。

□◆□…優嵐歳時記(293)…□◆□

   ひとつずつもの片づけて日つまる   優嵐

「日つまる」または「短日」「日短か」「暮早し」などと
詠みます。冬のあわただしく暮れる一日の感じを表した
季語です。俳句では、この一日の感じを代表する季語が季節
ごとに決まっていて、春は「日永(ひなが)」、夏は「短夜
(みじかよ)」、秋は「夜長(よなが)」、冬は「短日
(たんじつ)」です。

実際の昼と夜の時間を考えると理屈にあいませんが、季語は
人間の主観、実感から生まれています。夜長と短日は考えて
みれば同じことなのですが、秋と冬の微妙な感じ方の違いが
この季語のうえに出ています。

今年もあと二週間。あれこれと年内に片付けることも多く、
あわただしい日が続きます。そして、一日はあっという間に
暮れていくのです。

□◆□…優嵐歳時記(292)…□◆□

   冬林檎しゃきしゃき噛めば風の音   優嵐

りんごの収穫は十一月半ばまでには終わります。「林檎」
そのものは秋の季語です。しかし、冬から春にかけてみかん
とともに冬の果物として親しまれています。林檎の種類は
年々改良され、冬から春にかけての貯蔵を満たすため、
産地には大規模な低温度貯蔵庫もあります。

信州のスキー場へ連休ごとに通っていたころ、よく途中に
立ち寄ったドライブインでりんごを食べたものでした。
りんごの独特の皮剥き器があり、そこに差し込んでハンドル
を回すと、見る間にくるくるっと皮がきれいに剥けます。
雪がちらつく中でそれを丸かじりしました。

□◆□…優嵐歳時記(291)…□◆□

   置炬燵部屋のあるじとなりにけり   優嵐

今夜は少し冷えてきています。ようやく冬らしくなってきた
のかもしれません。先週末に炬燵(コタツ)を出しました。
私は真冬でも暖房器具は炬燵しか使いませんので、これで
部屋は真冬仕様になりました。

炬燵はもともと囲炉裏の上に櫓を乗せて布団をかけた
「切炬燵」から始まっています。それが火鉢などを中に
いれるようになり、「置炬燵」と呼ばれるようになりま
した。電気炬燵も一種の置炬燵といえるでしょう。

北風の音を聞きながら、ぬくぬくと炬燵に入るひととき、
ああ、幸せと感じます。

□◆□…優嵐歳時記(290)…□◆□

   仲冬の森の奥まで陽のあたる   優嵐

「仲冬」は冬三ヶ月の真ん中の月のことで、陰暦十一月の
異名のひとつです。「冬半ば」などとも詠まれます。しかし、
今日も大変暖かく、日中は日ざしがあると上着もいらない
ような陽気でした。この暖かさのせいか、今ひとつ歳末の
気分が盛り上がりません。

冬で商売をされているところはいずこも深刻な問題のよう
です。スキー場、暖房器具、冬物衣料…。寒しとか、凍てる
などといういかにも冬らしい季語を詠めるようになるのは
いつごろか、と少し危惧しています。

□◆□…優嵐歳時記(289)…□◆□

   飾られて聖樹ひっそり人を待つ   優嵐

「聖樹」とはクリスマスツリーのことです。俳句ではそのまま
使うと大変長くなってしまいますので、クリスマスケーキを
「聖菓」と言い換えたりもします。クリスマスツリーよりも
なんだか厳かな雰囲気が感じられますね。

12月に入ると町はどこへいってもクリスマスソングです。
日本では宗教的な意味は横において、新年を迎える前の景気
づけのような雰囲気になっています。歳末セールにぴったり
なのかもしれません。でも、誰もいない部屋に飾られたツリー
の前にひとりで立つというのもまたいいものです。

今日から神戸のルミナリエも始まりました。震災から間もなく
10年なのですね。

□◆□…優嵐歳時記(288)…□◆□

   葉牡丹の列ゆっくりとカーブする   優嵐

ハボタンの姿を見かけるようになると今年も終わりが近い
と感じます。花の少なくなる冬の花壇の主役です。重なり
合った葉があるいは紅紫に、あるいは白色になり、この対照
的な葉色の品種を使って、花壇に色模様が描かれます。

原産地のヨーロッパではキャベツの仲間として野菜用に
栽培されていました。日本には江戸時代の初めにオランダ
から入りました。観賞用に本格的な品種改良が始まった
のは明治の中ごろです。ハボタンという名前は重なり合った
葉がボタンの花のようだという意味からきています。

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