優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2005年05月

□◆□…優嵐歳時記(453)…□◆□

  新緑の枝差し伸べしお堀端  優嵐

お昼休みにマウンテンバイクで姫路城までいってきました。
20分ほど走れば野里門に着きます。自分でも意外だった
のですが、お城まで自転車で行ったのはこれが初めて
でした。地元といっても路地にはまだ通ったこともない
ところがいくらでもあり、新鮮でした。

人は一つの経路を見つけるとつい同じ道を通りがちです。
しかし、少し違う道を走るだけでこんなに街の風景も
違うのかと驚きました。姫路は戦時中に陸軍の師団が置か
れていたこともあって、終戦時にはお城を除いて市の中心部
は空襲で丸焼けになりました。

ですから、古い面影を残す町並みはほとんど残っていない
のですが、今日走ったところは格子戸や家並みに城下町に
続く街道筋の雰囲気が残っていて、「あれぇ、こんなところ
もあったんだ」と新鮮な気持ちになりました。


□◆□…優嵐歳時記(452)…□◆□

  代掻きの田の少しずつ増えていく  優嵐

姫路近辺でも田植えのシーズンが近づいてきました。
昔は重労働で何日もかかった農作業もいまではほんの
半日ほどですんでしまうようです。農作業に関する季語は
たくさんありますが、代馬(代掻きをする馬)、早乙女
(田植えをする女衆)、など今ではみられなくなって
しまったものもあります。

自然に関する季語は昔とほとんど変わりませんが、生活を
めぐる季語は大きく変化しているようです。「白絣」
「衣紋竹」「蚊帳」など、いまでは日常生活の中から姿を
消してしまいました。二十一世紀末にはどんな季語が生き
残っているのだろう、と考えたりもします。

□◆□…優嵐歳時記(451)…□◆□

  ふんだんにパセリを刻む夕餉かな  優嵐

「パセリ」は南ヨーロッパ原産のセリ科の野菜です。日本
には江戸時代にオランダ経由で入ってきたため「オランダ芹」
とも詠まれます。本格的に栽培されるようになったのは、
明治時代に入り、洋食が一般にも食べられるようになって
からです。

今日の夕食はハヤシライスにスープ、サラダでした。すべてに
刻んだパセリを入れました。パセリはビタミンCが豊富な野菜
です。また独特の味と香りからハーブの一種と考えてもいい
ようです。コーンスープの黄色に鮮やかなパセリの緑色、
食欲がわいてきます。

□◆□…優嵐歳時記(450)…□◆□

  新刊書届く緑の風の中  優嵐

単に「緑」というよりも「新緑」といった方がイメージが
湧くかもしれません。初夏のころのみずみずしく鮮やかな
緑のことです。盛夏のころの緑は濃く力強いのですが、
あえてフレッシュで柔らかな初夏の緑を「緑」の代表として
いるあたりが俳句らしい、と思います。

私は本を読むのが大好きです。本の購入にはほとんどインター
ネット書店を使います。今日も注文していた本が届きました。
新しい本の香り、手触り、内容への期待、いずれもいいもの
です。図書館の本も好きですが、新品の本にはまたそれなら
ではの魅力があります。

□◆□…優嵐歳時記(449)…□◆□

  やわらかき夕陽を受けし柿若葉  優嵐

柿の若葉は柔らかくつやつやと光沢があります。新緑
の中でもとくに明るく目をひきます。五月も間もなく
終わり、これからまだ一ヶ月近くの間は夕暮れの時間
が伸びていきます。ただ、梅雨に入ると日差しが出る
日が減り、最も、夕暮れの遅さを感じるのは入梅まで
かもしれません。

アパートの部屋から、隣の畑の真ん中にある柿の木が
見下ろせます。甘柿は日本で作り出されたもので、
代表格のフユウ(富有)は岐阜県原産だということです。

□◆□…優嵐歳時記(448)…□◆□

  竹の皮脱ぎ捨て天に向かいける  優嵐

筍は生長するにつれて、皮を脱ぎ、青々とした若竹
が姿を現します。見上げると先はまだ筍の面影を
残しています。わずかな時間にこれだけ生長したの
かと思うと、その素早さに驚きます。

かつては竹の皮は笠や草履を編んだり食品などを包む
のに利用されていました。竹の皮は葉鞘が変化した
ものです。

□◆□…優嵐歳時記(447)…□◆□

  雲ひとつなく晴れわたる薄暑かな  優嵐

今日は快晴。午後になっても空は真っ青で雲の影も
ありませんでした。湿気が少なく、遠くの山まで
くっきりと見渡せます。日差しがかなり強くなって
いるのがわかり、ああ、もうすぐ夏本番だと思い
ました。

少し暑さを感じ、車の窓を開けて走りたくなる、
そんな気候を「薄暑」といいます。街行く人の服装
も軽快になり、木陰が恋しく思われたりするのも
このころです。過ごしやすく、一年中で一番気候の
よいころといえます。

□◆□…優嵐歳時記(446)…□◆□

  アイリスよ虹をかけたるその青さ  優嵐

アヤメ科の園芸種、特に外国産のダッチアイリス、
イングリッシュアイリス、ジャーマンアイリスなどを
さします。ただし、アイリスとはアヤメの仲間全体
の呼び名です。ギリシャ神話の虹の神イリス(英語
読みでアイリス)にちなんだ名前です。

花の色は青、青紫、黄色、白などと多彩です。先日
空の青さをそのまま写し取ったようなアイリスを
見ました。

□◆□…優嵐歳時記(445)…□◆□

  満月の大き新樹の上に出る  優嵐

昨夜は満月でした。高松から戻るマリンライナーの車中
で隣り合わせたおじさんたちが、瀬戸大橋から海を見て
「潮の流れがおおけぇのぉ」と話していました。もしや
満月、と思って旧暦表を見てみるとやはりそうでした。

初夏のみずみずしい若葉をつけた樹木を「新樹」といい
ます。その新鮮な緑の息吹、美しさが見るものを元気
づけてくれます。

□◆□…優嵐歳時記(444)…□◆□

  海峡を越えて南は麦の秋  優嵐

「麦の秋」「麦秋」は麦の穂が実り黄熟していくころ
の季節を表しています。週末、四国の高松へいって
きました。今日は雨でしたが、昨日はいいお天気で、
香川県にはいると、いちめんに色づいた麦畑に出会い
ました。

姫路近辺の麦はまだ麦秋と呼ぶには早く青さを残して
いますが、四国の麦はもう金色になっていました。
初夏なのに「秋」というのは一見奇妙に思えますが、
「秋」には取り入れの時期という意味もあるようです。

このページのトップヘ