優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2005年05月

□◆□…優嵐歳時記(443)…□◆□

  夏の夕光残せる水面かな  優嵐

五月も後半に入り、日が長くなったのを実感します。
窓の外にまだ明るさが残っていると思って時計を見ると
すでに6時半をすぎていたりします。夕暮れが遅いと
気持ちもなんだかゆったりします。一日の時間は変わら
ないのに、不思議です。

夕食前にのんびり近所を散歩したりします。川沿いに
車もほとんど通らない道があり、堤防の上ということ
で川の見晴らしもよく、犬を連れた人たちにもよく
会います。ウォーキングと勢い込んで歩くのではなく、
ぶらぶらと行きたいところまで行く、というのがいい
ですね。

□◆□…優嵐歳時記(442)…□◆□

  楠若葉剥落激し絵馬あがる  優嵐

一昨日訪れた神社には明治時代の日露戦争勝利の模様を
描いた絵馬や、今では絵柄も判然としない江戸時代の
絵馬が拝殿に掲げられていました。もちろん絵馬を奉納
した人たちはすでにずっと前にこの世を去っています。
昔の物を見るとき、時代が昔のものであればあるほど、
そのものの上を流れていった時間のことをふと考えます。

初夏に萌え出した木々の新しい葉を「若葉」といいます。
落葉樹はもちろん、常緑樹の楠、椎、樫などもみずみず
しい葉をつけます。植物の種類を冠して「楠若葉」「柿
若葉」などと詠む場合もあります。また「谷若葉」「窓
若葉」のように場所を入れて詠む場合もあります。

□◆□…優嵐歳時記(441)…□◆□

  薫風に吹かれてひとり境内に  優嵐

今日はお天気が崩れましたが、昨日の昼、近所の里山に
ある八幡神社に行ってきました。九世紀にはすでにここに
神社があったということです。古くから開けていた播磨
地方の歴史を思います。

自転車を押して上がってきたので、少し暑いくらいでした。
平日の昼とて人影も無く、拝殿に腰を下ろしていると、
南風が吹き抜けていきます。日本中あちこち自転車で旅
したとき、神社は好きな場所のひとつでした。

有名な神社でなくても、そこには神社の森があり、ほっと
落ち着ける空間があります。「薫風」は青葉を吹く風が
緑の香を運ぶとみたてた季語です。「風薫る」「南薫」
などとも詠みます。

□◆□…優嵐歳時記(440)…□◆□

  天清和恵まれし風ひかりかな  優嵐

気候が清らかで温和なことを「清和」といい、陰暦四月の
候です。今日は陰暦では卯月十日、まさに清和といっていい
気持ちのいいお天気でした。空は晴れ渡り、少し緑が濃く
なってきた山々の上に広がっています。南風がやや強く
吹いてくるのですが、それもさらなる爽やかさを呼びます。

こんなお天気の日は自転車で走るのが好きです。田も畑も
川も山もみんな輝いていて、まさに天から賜った一日だ
という気がするのです。

□◆□…優嵐歳時記(439)…□◆□

  桜の実つやつや赤く日の高く  優嵐

近所で咲いていたヒガンザクラの一種が実をつけています。
「さくらんぼ」は小アジア原産の西洋みざくらの実で、この
「桜の実」とは種類が異なります。桜の実は赤く色づいて
おいしそうに見えますが、実際のところは酸味と渋みで
おいしくはないようです。

里桜の代表格であるソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒ
ガンの雑種であり、開花しても実はつけません。ですから、
ソメイヨシノは一種のクローンであり、遺伝子が同じなので
条件が整えば一斉に開花します。そのため「桜前線」という
世界でも類を見ない、生物気象観測レーダーになっています。

□◆□…優嵐歳時記(438)…□◆□

  ブログひとつ書き終え冷し中華かな  優嵐

私はこの『優嵐歳時記』も含め、今、6つのブログを書
いています。書くことは子どものころから大好きでした。
自分を表現する場がいろいろあるというのは素晴らしい
ですし、それを読んでくださる方、また、コメントを
くださる方、本当に感謝です。

これもインターネットの凄さだな、と思います。しかも
ブログの凄さ。誰でもいつでも個人のメディアが持てる
ようになったのです。こんなこと、つい十年ほど前なら
考えられなかったことです。インターネットはまだまだ
可能性を秘めていますし、これからどれほどのことを
私たちにもたらしてくれるのか、と想像するとわくわく
してきます。

□◆□…優嵐歳時記(437)…□◆□

  青空と静けさとあり麦畑  優嵐

「麦」は大麦、小麦、裸麦、燕麦、ライ麦などの総称です。
日本では主に稲の裏作として栽培されてきました。秋に
播かれた麦は冬期に分枝し、五月ともなれば伸びた茎の先
に花穂をつけます。やがて麦畑が黄金色に熟れてきます。

コシヒカリなどの早稲を栽培しているところでは、すでに
ゴールデンウイークには田植えが終わっているようです。
姫路周辺では、中稲が多いのでしょう、田植えは六月に
入ってから始まります。今は麦が熟れはじめる季節です。

□◆□…優嵐歳時記(436)…□◆□

  未熟なることを楽しむ夏浅し  優嵐

物事を習得していくとき、もっとも楽しいのは、目標が
見えていて、そこへ少しずつ近づいているのがわかるとき
です。自分の実力からあまりにも遠いところではやる気が
失せますし、簡単すぎると物足りなくておもしろくなく
なってしまいます。このあたりの加減が難しいところです。

「夏浅し」は新緑の美しい夏のはじめを表す季語です。
たしかに夏ではあるけれど、夏本番というには早い、そう
いう感じです。

□◆□…優嵐歳時記(435)…□◆□

  芍薬の一輪残して摘み取られ  優嵐

私の家の近所にシャクヤクを栽培している園芸農家が
あります。シャクヤクの原産地は中国北部です。2〜3
世紀には観賞用に栽培され始め、隋から唐の時代(6〜
10世紀)にかけて多くの園芸品種が生まれました。日本
には薬用として平安時代には渡来していた記録があります。

シャクヤクはボタン科ですが、ボタンが低木なのに対し、
シャクヤクは多年草です。出荷用に栽培されているため、
花はつぼみのうちに最も美しいものを残して、まわりの
ものが摘み取られてしまうようです。畑の一角が摘み取
られた花で彩られていました。

□◆□…優嵐歳時記(434)…□◆□

  時を越え話弾ませ夏料理  優嵐

今宵は、学生時代の友人が集まって私の独立祝いの会
を開いてくれました。卒業以来ずっとあっていなかった
友人もいたのですが、顔をあわせるなり、すっかり昔
に戻って次々と話が弾みました。

仕事を通じてご縁を得た方、趣味を通じての知り合った
方、友人、知人にも知り合うきっかけというのはいろいろ
ありますが、学生時代の友人というのはまた独特の魅力
があり、楽しいものです。

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