優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2005年06月

□◆□…優嵐歳時記(479)…□◆□

   南吹く中に寝転び書を読みぬ   優嵐

私の部屋はアパートの5階にあります。大都会では10階
以上でもすぐ隣にビルがあるのが普通でしょうが、まだ
田んぼが残るこのあたりでは、ほとんどさえぎるものが
ありません。夏の昼間は南北の窓を開けておけば爽快な
ほど風が通ります。

自然の風はやはりエアコンとは異なり実に心地よいもの
です。ちょっと身体を動かしたあと、シャワーを浴びて
さっぱりした肌の上を風が通り過ぎていくのを感じている
ときが好きです。幸せというのはこういう感じじゃない
だろうか、と思ったりするのです。

南とは、夏の季節風のことです。「南風」と書いて単に
「みなみ」と読むこともあります。


□◆□…優嵐歳時記(478)…□◆□

   驟雨去り風に吹かれておりにけり   優嵐

久しぶりに雨が降りました。といっても梅雨らしい雨では
なく通り雨っぽい雨が昼過ぎと夕方にありました。それでも
雨音を聞きながら本を読んでいると、気持ちがしっとりして
きました。雨があがったあと、窓際へ行って景色を眺めました。

気温が下がり、湿り気を帯びた風が肌に心地よく感じられます。
あたりの緑すべてがなんだかずいんぶん生き生きとして
見えました。市川はまだたっぷりと水をたたえていますが、
今日、姫路平野へ流れ込むもう一方の主要河川である夢前川は
ほとんど水が涸れ、細々としか流れていなかったので驚き
ました。

□◆□…優嵐歳時記(477)…□◆□

   高まるはハレルヤ・コーラス青嵐   優嵐

「青嵐」とは青葉の茂るころに吹くやや強い風のことです。
「あおあらし」とも「せいらん」とも読みますが、「晴嵐」
と区別が難しいこともあり、音が好まれることもあって
俳句では「あおあらし」と詠むことが多いようです。

今日も晴天でした。しかし、全国的には北陸や東北では大雨
との情報もあり、地域によって大きな違いがあるようです。
「ハレルヤ・コーラス」はヘンデルのオラトリオ『メサイア』
の白眉といえる曲です。

□◆□…優嵐歳時記(476)…□◆□

   空梅雨やぶんぶん響く草刈機  優嵐

雨が降りません。姫路では梅雨入りしてからまる一日雨が
降り続いた梅雨らしい日は一日もありません。五月も雨が
少なかったので、よけいに空梅雨だという印象が強くなり
ます。農家の方はもちろん、水に関係したお仕事の方も
空模様は気になるところでしょう。

去年は台風ラッシュで、兵庫県は水害に痛めつけられたのに
ことしは空梅雨とは皮肉です。暑いときに暑く、寒いときに
寒く、雨が降るべきときには適度に降ってくれる、という
のが、ありがたいですね。

□◆□…優嵐歳時記(475)…□◆□

   花くちなし匂う夕べに文を出す  優嵐

クチナシはアカネ科の常緑低木です。花は最初は白色、のちに
黄色になります。クチナシの花には魅力的な甘い香りがあり、
梅雨のころ、湿気の多い夜などにはとくによく香ります。
クチナシ属は世界の熱帯や亜熱帯にかけて六十種以上があり
ますが、日本ではクチナシのみです。本州の東海地方から沖縄
で見られます。

クチナシの花は夏の季語ですが、クチナシの実は秋の季語に
なります。クチナシの語源として、熟しても実が裂けない
(口を開かない)ことから「口無し」になったという説が
あります。クチナシの実は黄色の染料になり、漢方では消炎、
解熱剤として使われます。

□◆□…優嵐歳時記(474)…□◆□

   ゆかた着て夜店ひやかす祭りかな  優嵐

姫路では6月22日〜24日まで「ゆかたまつり」がひらかれて
います。ゆかたまつりは長壁神社の例祭として1742年に始まって
いますので、すでに260年以上の伝統があります。当時の姫路城主
で、吉原の高尾太夫を身請けするなど風流大名として知られた
榊原政岑(さかきばらまさみね)はその行状が質素倹約をおし
すすめていた幕府に知れ、越後に転封されることになりました。

その時、当時城内にあった長壁神社を庶民も参拝できるようにと、
政岑が長源寺境内に社を造営させ、御神璽を竪町に遷したのが
このお祭りの始まりです。西日本一(もしかしたら日本一?)
露店が集まるお祭りとして知られ、ゆかた姿のカップルや親子
連れでにぎわいます。

例年梅雨の最中の例祭ですので、雨にたたられやすいのですが、
今年はまだ雨の気配がありません。やはり、空梅雨でしょうか。

□◆□…優嵐歳時記(473)…□◆□

   掘割の水の匂いに夏至の風  優嵐

昨年の夏至は台風6号が兵庫県を縦断しました。記録的な
台風上陸数だった走りはもうこのあたりから見られました。
今年はこのままだと渇水の心配が出てくるのではと思う
ほどです。

姫路城のまわりにはお堀が残っているところがあります。
お堀端には大きな木が茂っており、それが水面に影を
おとしていて涼しげです。お堀の中では鯉が泳いでいます。
中には赤や金色の錦鯉もいました。

□◆□…優嵐歳時記(472)…□◆□

   紫陽花の色は雨待つ心かな  優嵐

今日もいいお天気でした。梅雨はどこへ行ったのだろう
と思います。アジサイが街角にブルーやピンクの彩り
を添えています。日差しもいいですが、しっとりとした
雨天こそこの花に似合う気がします。

晴天が続いているので、日が長いのがよくわかります。
もう8時前ですが、戸外にはまだうっすらと明るさが
残っています。そういえば、明日は夏至です。

□◆□…優嵐歳時記(471)…□◆□

  すぱすぱとバナナ輪切りにシリアルへ  優嵐

今では年中見られるようになったバナナですが、季語の
上では夏に分類されます。カリウムが豊富で、消化がよく
すみやかなエネルギー源になります。もうすぐウインブル
ドンが始まりますが、テニスプレーヤーが長いゲームの
合間にバナナを食べている光景が時々見られます。

昼食によくシリアルを食べます。一種類だけではなく
2,3種類のシリアルをブレンドし、そこへレーズンや
バナナを入れて牛乳をかけます。大人向けのあまり
甘くないシリアルを選ぶのがポイントです。

□◆□…優嵐歳時記(470)…□◆□

  肌に風心地よく吹く梅雨の月  優嵐

さきほど郵便局前のポストまで冊子小包を出しにいって
きました。家の前にもポストはあるのですが、旧式の
円筒形のポストで、差出し口がちょっと狭いのです。
東の空にぼんやりとした月が出ていました。

こういうぼおっとした月がやはり梅雨時にはふさわしい
ですね。夜の田んぼの隣を通ると低い蛙の鳴き声が聞こえ
ました。いつの間にか栗の花の青臭い匂いは消え、夜気の
中からどこからともなく甘いクチナシの香りが漂って
きます。

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