優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2005年09月

□◆□…優嵐歳時記(553)…□◆□

   いま晴れていつしか曇り稲の秋  優嵐

稲が稔るころの空模様は変わりやすく、朝方晴れていたと
思ったら、昼ごろには曇り、午後にはまた晴れて、夕方に
にわか雨、とめまぐるしく移り変わることがあります。

家の周囲の水田も、半分くらいは稲刈りが終わりました。
稲の栽培は東南アジアの亜熱帯から熱帯にかけてが発祥地と
いわれています。雨量が多く、暑い夏に恵まれた日本の
気候風土に適しているため、早い時期に伝来し、古くから
栽培されています。

水稲と陸稲がありますが、日本の主流は水稲です。成熟の
時期によって早稲、中稲、晩稲に分けられ、でんぷんの質
によってウルチとモチに分かれます。黄金色に稔った稲穂
の風景は日本の田園の代表的な姿といえます。

□◆□…優嵐歳時記(552)…□◆□

   新米をたっぷりもらう十六夜に  優嵐

今夜は「十六夜(いざよい)」です。前夜の十五夜より少し
月の出が遅くなりますので、「いざよう月」ともいいます。
「いざよう」とは、たゆたう、あるいはためらうという意味
があります。

「新米」をもらってきました。「新米」も秋の季語ですが、
今日の場合は「十六夜」に中心をおきたいところです。今夜
の空は少し雲が多めで、月影は、やや霞んでいます。湿気が
多いのでしょう。それもまた十六夜の趣です。

□◆□…優嵐歳時記(551)…□◆□

   過ぎ去りしことも思いつ月を見る  優嵐

先ほどまで屋上で月見をしていました。市川の向こうに満月
が昇っています。陰暦8月15日の名月を愛でることを「月見」
といい、季節の初物や団子を月に供え、豊作と健康を祈る
もので、もともとは中国に起源があったようです。

日本独自のものとして、9月13夜の月を愛でる「後の月見」
というものもあり、十五夜を見て十三夜を見ないのは「片見月」
として忌んだそうです。十三夜の月見もせねば。

どれほど地上がライトで照らされていても、やはり月の存在
は大きいですね。月を眺めながら去年の名月は、一昨年は…
などと思い返していました。そういえば、2002年の名月は
アフリカ、キリマンジャロの麓で眺めたのでした。

□◆□…優嵐歳時記(550)…□◆□

   灯を消して見上ぐ雲間の小望月  優嵐

明日は中秋の満月、その前夜の月を「小望月(こもちづき)」
といいます。午後から曇りがちでしたが、雲の厚さは思った
ほどではなく、さきほどまでベランダで月を眺めていました。
戸外は暑くもなく、寒くもなく、まさにお月見にはぴったりの
気温です。

夏至と冬至に電灯を消す「キャンドルナイト」という催しが
最近話題になっていますが、少し広げて名月にも電灯を消し、
みんなでお月見を楽しむというのも、いいのではないか、と
思いました。

□◆□…優嵐歳時記(549)…□◆□

   届きたるカレンダーまで秋日影  優嵐

「秋日影」とは、秋の日光のことです。夕方になりますと、
部屋の中まで日の光が差し込み、壁にかけたカレンダーに
夕日が当たるようになりました。日が長くなったり短く
なったりすることを、祖母がよく「米粒ひとつぶんずつ」
と表現していました。

人間の目では速すぎて見えないものと、ゆっくりすぎて
見えないものもあります。扇風機の回っている羽は速すぎて、
アナログ時計の短針は遅すぎて見えないものの代表でしょうか。
生き物の成長、季節の進みなどもそうですね。

□◆□…優嵐歳時記(548)…□◆□

   しばし書を閉じて灯火に親しみぬ  優嵐

今日はいいお天気でしたが、秋らしい雰囲気が一段と進み、
朝は窓を開けていると涼しすぎるほどでした。九月も半ば
ですから、そろそろ夏の名残も去って、本格的な秋の訪れ
です。

涼しさが増し、気持ちが落ち着いてくる秋の夜は読書に
最適です。戸外の虫の音を聞きながら、本を開き、しばし
その世界に思いをはせ、ときにはまた本を閉じてさまざまに
思いをめぐらせます。静けさが似合う季語です。

□◆□…優嵐歳時記(547)…□◆□

   うす雲のときどきかかり上り月  優嵐

「上り月(のぼりづき)」は満月に向かうまでの月、上弦の月
のことです。月はそれだけで詠めば秋の季語です。「三日月」
「弓張月」なども特に他の季節のことわりがなければ秋と解釈
します。

昨夜はナイターでテニスをしていましたが、コートの上に
月が昇り、それを眺めながら球を打ちました。ときおり薄い
雲がすっと月の影を隠すのもまた風情があっていいものです。

次の日曜日、9月18日が満月で、仲秋の明月にあたります。
それまで毎夜、しだいに満ちていく月を眺めつつ、日本人は
古くから名月を楽しみに待ったのです。

□◆□…優嵐歳時記(546)…□◆□

   草を刈る香を秋風の運びけり  優嵐

部屋の窓から見える市川の河川敷の草を、一日中作業員が
刈っていました。かなりの広さがあり、真夏に比べると草の
色が少し褪せてきたなと思っていたところでした。午前中は
乗って操縦する大型の草刈機で中心部を刈り、夕方になって
からは手持ちの草刈機で周辺部を刈っているようでした。
風に乗って刈られた草の香りが今も漂ってきています。

窓から見えるこの川べりの風景が私は好きです。なんでもない
風景ですが、河川敷で遊ぶ人、犬の散歩に来る人、川へボート
を浮かべる人などさまざまな人の姿を眺められます。また、
コサギ、アオサギの姿も見られます。朝・昼・夕暮れと川の
表情が微妙に移り変わっていき、それもいいものです。

□◆□…優嵐歳時記(545)…□◆□

   秋高しこころざしまた高くあれ  優嵐

今朝は午前2時すぎまで起きてインターネットで衆議院選挙の
開票速報を確認していました。それというのも知人が立候補
していたからです。いつもは単に選挙速報を遠いところの話の
ように見るだけでしたが、今回は他人事とは思えませんでした。

なんとかぎりぎりに当選者欄で名前を確認することができ、
ほっとしました。その一方で知人にとっては新しい困難な道が
これから始まるのだな、と思い、また、最初に立候補を決意
したときの志を貫いて欲しい、とも思いました。

「秋高し」とは秋空の高く澄みきったさまをいいます。今日は
久しぶりに晴れ上がった空に秋の雲がさわやかに浮いていました。

□◆□…優嵐歳時記(544)…□◆□

   メールひとつ読む間に秋の村雨よ  優嵐

今日も朝から曇りがちで、先ほど通り雨がありました。
「村雨」はにわかに群がって降る雨のことで、夏の季語
になります。和歌では、夏、秋両方で詠まれたようで、
有名な歌に「村雨の露もまだひぬ槙の葉に霧たちのぼる
秋の夕ぐれ 寂蓮法師(新古今集)」があります。

あまりすっきりしないお天気が続いていますが、天気図
では、日本列島の上に秋雨前線が横たわっており、
台湾付近には台風15号の姿が見えます。典型的な秋の
気圧配置といえそうです。

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