優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2005年10月

□◆□…優嵐歳時記(589)…□◆□

   露けしや田に置き去りの一輪車  優嵐

夜間、屋外のさまざまなものが冷え、周囲の水蒸気がともに
冷えて凝結したものを「露」と呼びます。晴天の風のない夜
に多く、秋に最もよく見られるため秋の季語になっています。
もっと気温が下がってくると、この露が凍って「露凝る」と
いう冬の季語になります。

今日も早起きをしてずっと長い散歩をしてきました。6kmほど
歩きました。すでに明るくなっていましたが、歩くに連れて
東の空が朝の光に輝き、やがて朝日が昇ってくるのを見るの
はいいものです。ついつい夜型の生活パターンに陥ってしまい
がちですが、夜早めに眠るようにすれば、早起きはそれほど
つらいものではありません。


□◆□…優嵐歳時記(588)…□◆□

   釣り針のごとき月あり秋暁に  優嵐

今日は旧暦では9月28日です。久しぶりに早起きをして日の出の
ころに近所を散歩してきました。空には細い月がかかっていま
した。まだ寒いというほどではなく、人影もまばらな川沿いを
歩くのは気持ちのいいものでした。川霧がうっすらと立ち昇って
います。

東の空の雲は昇ってくる太陽の光で茜色に輝いています。トビや
カワウがねぐらから群れをなして飛び立ちそれぞれの場所へと
飛んでいくのが見えました。そして、電線にジョウビタキが
止まっているのを発見しました。この秋初めて見るジョウビタキ
です。ダークオレンジのお腹と黒い羽にある白い紋が雄の特徴
です。ジョウビタキは冬の訪れを告げる鳥なのです。

□◆□…優嵐歳時記(587)…□◆□

   ひよどりの声のみ響く山寺に  優嵐

ヒヨドリはハトよりやや小さめで全体は灰色、頬のあたりに
臙脂色の斑点がある鳥です。ヒーヨヒーヨと鳴くので「ヒヨドリ」
と言われているそうです。翼を広げては引き絞り、上下に波型を
描くように飛びます。一年中いる鳥ですが、秋から冬にかけてが
よく目立つようです。

午前中は雨が降っていた姫路でした。午後から日も差し始め、
近所の増位山にある随願寺に行き、森の中をひとまわり散歩して
きました。途中、市川の流れと家の周りの町並みを見下ろす
展望台に立ちました。南に目をやれば姫路城が見えますし、
さらにその先には播磨灘とそこに浮かぶ家島群島が見えました。

□◆□…優嵐歳時記(586)…□◆□

   さわやかに心を決めていることも  優嵐

さっぱりして、はればれとした気分、すがすがしい心持を
「さわやか」といいます。主観的で、実像を伴わない季語
ですが、春の「のどか」や「うららか」に対応したものと
言えます。空気が澄み、空が高くなり気温が高くもなく低く
もなく、湿度も少ない、そんな秋の気候にこの季語がぴったり
するのです。

何かを決めるときあまりあれこれ迷う方ではありません。
いたしかたなく決断を引き伸ばさざるを得ないときはなんとも
居心地が悪いものです。右へ行くにしろ左へ行くにしろ、
すっきりと心が定まると、胸のつかえが降りたような気持ちに
なります。

□◆□…優嵐歳時記(585)…□◆□

   しょうしょうと荻吹く風の銀色に  優嵐

オギはイネ科の多年草で、原野、水辺、ときには高原にも生え
ます。秋風に吹かれて立てる葉ずれの音がものさびしく、古く
から歌に詠まれてきました。

今日は比較的気温が高く、いいお天気で少し身体を動かすと
汗ばむくらいでした。このように日によって寒暖の差が大きい
のも晩秋のころの特徴です。オギの白い穂が秋の日差しに
輝いて見えます。

□◆□…優嵐歳時記(584)…□◆□

   家並の影ひつじ田に長く落ち  優嵐

10月も末ともなると、さすがに稲刈りはすべて終わっています。
刈られた稲の株からその後再び青い芽が萌え出たものを「ひつじ」
といいます。そのままにしておくと、再び穂も出てきます。
しかし、しだいに秋が深まり冬になるとこれらも枯れて、田は
枯れ色一色になります。それまでの最後の残り火の青さとでも
いうべきものです。

夕暮れが随分早くなり、日の差す角度も低くなってきました。
あと二ヶ月ばかりはまだ日が短くなっていきます。午前中は青い
空ですが、午後になると曇りがちになることが多く、晩秋から
初冬の風情です。そして再び日が差すころにはもう夕日が山の端
にかかりはじめているのです。

□◆□…優嵐歳時記(583)…□◆□

   BGMロック流して松手入  優嵐

立派な枝ぶりの松を庭に植えていらっしゃるお宅では、その
手入れがいまごろの時期、おこなわれています。他の木々の
手入れもおこなわれますが、一番手間をかけてていねいに
よい姿に仕上げられるのは松です。

散歩の道すがら通りかかる近所のお宅でも二人の職人さんが
松の手入れをしていました。軽快にロックミュージックを流し
ながらの作業で、こうすると仕事がはかどるのかもしれません。
雪国であればこの先に雪吊りの作業が待っているのでしょうが、
暖かい姫路では真冬も青々とした松が楽しめます。

□◆□…優嵐歳時記(582)…□◆□

   帰り花ひとつ咲きたり暮の秋  優嵐

市川の堤防沿いに植えられている桜はいつの間にかすっかり
葉を落としていました。桜は紅葉するのも落葉も早い木ですが、
この一角は特に早いようです。葉が落ちた枝先にちいさな
帰り花が咲いていました。「帰り花」は初冬の季語で、季節
外れに咲く桜やツツジなどを指します。

「暮の秋」は秋の暮とまぎらわしいですが、こちらは「秋が
暮れていくころ」つまり「晩秋」を意味しています。同じ意味
とはいいながら「晩秋」と「暮の秋」とでは句に与える感覚
が少し違ってきます。このころを指す季語は他に「行く秋」
「秋の名残」「秋の果」など数多くあります。

□◆□…優嵐歳時記(581)…□◆□

   戦記読むつま先あたりやや寒し  優嵐

今、日露戦争を舞台にした戦記小説を読んでいます。大日本
帝国海軍がロシアのバルチック艦隊を破った場面を、夕食前に
読んでいました。第二次世界大戦の戦記とはまた異なる兵器、
描写で、興味深いものです。帝国主義がむき出しであったこの
時代、戦争は今よりはるかに「正当」なものとしておこなわれ
ていたのです。

昼間の気温も低く、椅子に座って本を読んでいると、膝に何か
掛けたくなります。まだ暖房をするには早く、かといって何も
なしでは少し心もとない、そんな晩秋のころの気温を「やや寒」
「うそ寒」「そぞろ寒」などと詠みます。本格的な寒さがくる
前のうっすらとした寒さを表しています。

□◆□…優嵐歳時記(580)…□◆□

   快晴の空の青さへ柿熟れる  優嵐

昨日あたりから急に冷え込んできました。二週間ほど前までは
まだ半そでで過ごしていたのに、膝の辺りに寒さを覚える
今日この頃です。やはり季節は正直だなと思います。

秋の果物もいろいろありますが、姫路近辺で木に生っている
ところを眺められるのは柿です。多くの家の庭先や、畑の
一角で柿の実が色づいているのを見ると、秋を感じます。
子どものころは家の畑に柿の木があり、よくそこにのぼって
遊びました。

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