優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2005年11月

□◆□…優嵐歳時記(605)…□◆□

   朱雀門はるかに望み落葉踏む  優嵐

この週末は所属する「水煙」の句会に参加するために奈良へ
行ってきました。ふだんはインターネットで句会をしている
メンバーが年に一度こうして集まります。二日間ともいい
お天気に恵まれ、久しぶりに顔をあわせる人たちと話し、
笑い、句を詠んで、充実した週末でした。

宿泊先の「かんぽの宿奈良」は平城宮跡のすぐ西にあります。
宮跡は広大な草原状になっており、朱雀門が復元されています。
北には平城山、東に若草山、春日山が見え、さらに南の三輪山
へとなだらかな山なみが続いています。西には生駒・信貴の山
なみがあり、風に吹かれながら、いにしえの都大路を歩いた
人々のことを思いました。

□◆□…優嵐歳時記(604)…□◆□

   初霜や夜明けのひかり枯れ枝に  優嵐

「初霜」はその年初めておく霜のことです。今朝は晴れて気温
が下がりました。川沿いを散歩していると、うっすらと白く
見えるところがあります。近づいてみるとまぎれもなく霜です。
いよいよ冬になったことを感じます。

まだ落ち葉や枯れ枝などにようやく認められる程度ですが、
さらに気温が下がる厳冬期の晴れた朝は一面真っ白になるほど
霜が降ります。今朝は上着も薄い一枚ものから少し中綿のある
ものに変え、手袋をつけて出かけました。

□◆□…優嵐歳時記(603)…□◆□

   海までの雲の連なり冬始  優嵐

昼にマウンテンバイクでお隣の加西市にある古法華自然公園
まで行きました。空気はかなり冷たくなっていますが、ペダル
を踏んでいるとすぐに汗ばんできます。公園の中にある笠松山
の展望台まで登ってきました。標高は244mと低い山ですが、
東播磨の平野部を見渡すことができました。

午前中は青空が広がっていましたが、このころからは雲が増え
始め、羊の群れが並んでいるようでした。その先は瀬戸内海だ
と思いながら、雲の消えていく向こうを見ていました。

市川の支流の神谷川で今日もカワセミを見ました。川には
カルガモの群れもいました。

□◆□…優嵐歳時記(602)…□◆□

   凩の中を満月昇りくる  優嵐

今夜は満月です。「凩(こがらし)」は初冬に吹き、木の葉
を落としてしまう強い風のことです。「木枯」とも書きます。
十一月も後半に入り、急に空気が冷たくなりました。散歩に
出ても今日は手が冷たく感じられ、そろそろ手袋の用意を
しないと、と思いました。

市川の堰のところにカワセミが来ているのを見つけました。
コバルト色の背と橙色のお腹が鮮やかです。大きな嘴を持ち、
水中にダイビングして魚を捕らえます。このあたりでは
初めて見ました。「翡翠(カワセミ)」は夏の季語です。
留鳥で四季を通してみられますが、水辺の涼しい雰囲気から
夏の季語とされたのでしょう。

□◆□…優嵐歳時記(601)…□◆□

   賀状買い時雨のなかを戻りけり  優嵐

昼過ぎに時雨がありました。時雨は初冬のころ、急に雨が
ぱらぱらと短時間降ることです。山に近い場所に多く、特に
奈良や京都のような地形の場所にはよくみられ、万葉集の
昔から歌に詠まれています。

年賀状を買いました。毎年、ついこのあいだ前の干支の
デザインを見たような気がして、歳月の過ぎ去る速さに感嘆
しています。一年が長く感じられたのは小学生の間まででした。

□◆□…優嵐歳時記(600)…□◆□

   初冬の坂をのぼりて人に会う  優嵐

この土日は東京へ行っていました。ISIS編集学校関連の行事
に参加するためです。普段はインターネットを通して交流して
いる人たちと、久しぶりに顔をあわせていろいろなことを話し
ます。年に一度くらいしか会わない人、初めて会う人など
さまざまですが、ひとつのコミュニティができあがっていて、
それはこの場でしか味わえないものです。

東京は坂が多い街です。「初冬(はつふゆ)」は初冬、仲冬、
晩冬と冬を三期に分けた場合の初めの冬をさします。まだ
空気はそれほど冷たくはなく、町行く人たちの装いにも秋の
名残りがあります。

□◆□…優嵐歳時記(599)…□◆□

   曇天をそのまま咲いて花八手  優嵐

早朝から空は雲に覆われていました。毎朝出かけていく先は
起きたときの感じで決めます。今朝は市川の東岸の山を削って
作られた新興住宅地へ行ってみました。マウンテンバイクです
から、上り坂もギアを落としていけばなんとか登ることができ
ます。それでも一番上まで行くのはちょっとした運動になり
ました。

車がないと、ここは暮らすのがつらいなと思いました。造成
されているとはいえ、元は山です。それだけに、一番上から
一気に坂道を下るのはなかなか爽快でした。堤防沿いの道を
走っていると庭先に白い八手の花が咲いているのを見かけま
した。華やかさはありませんが、庶民的な花です。

□◆□…優嵐歳時記(598)…□◆□

   冬浅し木の実を踏んで散歩する  優嵐

「冬浅し」は確かに冬に入ってはいるが、まだ冬らしさはそれほど
感じられないという微妙な感覚を詠んだ季語です。朝の散歩で、
小さな木の実が舗装道路の上にたくさん落ちているところを通り
ました。「木の実」は秋の季語です。

朝の散歩を始めて10日ほどですが、それでも確実に日の出の時間が
遅くなっているのがわかります。朝の空気の冷たさも増しています。
集落の中を柿の木や菊を眺めながら歩くのもいいですが、家並み
が途切れ、田んぼや池のそばを遠くの景色を眺めながら歩くの
が好きです。そのうち雲が茜色に染まりはじめます。

□◆□…優嵐歳時記(597)…□◆□

   冬菊にまずさし初めし光かな  優嵐

菊は秋の季語です。しかし、野菊の中のノジギクやシマカンギク
またはその栽培品種は花期が長く、冬になっても咲き残り、時には
霜にうたれ、雪をかぶっても咲いていることがあります。

「冬菊」のほかに「寒菊」という季語もあります。ノジギク系が
冬菊、シマカンギク系が寒菊とされるともいわれています。しかし、
歳時記によってこれらを同一のものとしたり、異なる品種のものと
したりとはっきり定まったものはないようです。両者の雑種の菊も
あり、詠んだ時の音に重点をおけばいいのではないか、と思います。

□◆□…優嵐歳時記(596)…□◆□

   ポケットに片手入れにし十一月  優嵐

冬に入りましたが、まだ暖かい日が続いています。それでも
ナイターで屋外のテニスコートにいると、ラケットを持って
いない方の手はやや冷たく、ポケットにちょっと入れてみた
りします。朝の散歩に家を出るときもそうでした。

十一月は初旬に立冬を迎えるため、冬の季語になっています。
まだ冬というよりは一般の感覚では秋の名残が濃く、中旬
あたりまでは行楽に出るのにもいいころです。しかし、下旬
ともなると、そろそろ木枯らしが吹き、日暮れもぐんと早く
なって、本格的な寒さに向かいます。

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