優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2006年03月

□◆□…優嵐歳時記(734)…□◆□

   頂に立てば囀り足下より  優嵐

「囀り(さえずり)」とは、鳥の雄が繁殖期に出す特別
な鳴き声のことです。ウグイスに代表されるように
美しく音楽的で複雑な鳴き声です。同種の雄に対する
縄張り宣言であり、雌に対する求愛の声でもあります。

春は繁殖のシーズンであり、さまざまな鳥が歌い始め
ます。人の音楽と鳥の囀りには密接な関係があり、
クラシック音楽にも囀りをヒントにメロディを作って
いるものもあります。

家にいてもウグイスの鳴き声は聞えますが、やはり森
にいくとその密度は比較になりません。時にウグイスは
「鶯の谷渡り」といわれる長く尾を引く見事な囀りを
聞かせてくれます。これが静かな森の空気を響かせて
聞えてくるのは実に素晴らしいものです。

060331

□◆□…優嵐歳時記(733)…□◆□

   春の森木の名確かめつつ歩く  優嵐

増位山の森は瀬戸内海の照葉樹林帯に属しています。
ヤブツバキ帯とも呼ばれるだけあって、森のあちこち
で今咲いているヤブツバキが見られます。それ以外の
森の主役はブナ科、クスノキ科の照葉樹です。

カゴノキのように樹皮ですぐそれとわかるものもあり
ますが、ほとんどはなかなか見分けられません。
その間にクヌギやコナラ、アカマツといった木々も
生えています。ヒノキやスギといった植林された一帯
も見られます。

頂上に向かう北側一帯は植林されたまま放置され、
台風で何本もの木々が折れて荒れた風景を見せている
所もあります。元は照葉樹林が広がっていたところに
植樹されたものでしょう。

060330

□◆□…優嵐歳時記(732)…□◆□

   遅速ある梅それぞれの清らなり  優嵐

梅林通いは続いています。紅梅と白梅の数は同じくらい
あり、地元の方々によって手入れが続けられているよう
です。梅の根元には竹炭を砕いたものが敷かれている
ところもあります。竹林と森に囲まれ、他に人のいない
梅林で春の日差しを楽しむのは実にいいものです。

紅梅にも紅といっていいほど濃いものから淡い桜色に
近いものまであります。また、すでに満開の木もあれば、
ようやく一輪か二輪開きかけたところで、開花を待つ
蕾を枝いっぱいにつけているものもあります。

060329

□◆□…優嵐歳時記(731)…□◆□

   登りゆく道に続きし落椿  優嵐

増位山随願寺周辺の森にはヤブツバキがたくさんあります。
そろそろ落花のころとみえ、木の下には赤い椿の花がその
ままの形でたくさん落ちています。木にはまだこれから
咲く花も残っています。

午後、一時的に低気圧が通り、強い風が吹きました。
杉の大木から枯れた葉がつぎつぎと吹き落とされ、境内
に散っていました。こうして、杉自身が古いものを吹き
払っているようにも思えました。

060328


□◆□…優嵐歳時記(730)…□◆□

   颯爽と春宵をきり初燕  優嵐

ツバメを見ました。あの飛び方は、視界の端をちらっと
かすめただけでもツバメとわかります。軽やかな飛翔は
他のどの鳥とも違っています。姫路周辺へはいつも3月
の後半に姿を見せてくれます。冬鳥が北へ帰る一方、
こうして夏鳥がやってきます。

窓の外ではウグイスが今日も囀っています。ウグイスの
初音が春の到来を告げ、ツバメを見れば、春のクライマッ
クスも間近です。今年は梅の開花が遅めでしたから、
梅と桜がいっしょに咲く光景も楽しめそうです。ツバメの
初見で、野鳥は今年31種類目になりました。

060327


□◆□…優嵐歳時記(729)…□◆□

   蜥蜴出づするりと背中光らせて  優嵐

「蜥蜴(とかげ)」は夏の季語です。変温動物である
爬虫類は、冬は動作が鈍くなり、冬眠します。春になって
暖かくなると、体温が上がり、エサを求めて石垣の隙間
などから出てきます。そのため「蜥蜴出づ」は春の季語
になっています。

先日見かけたトカゲはくすんだオレンジ色の背中をして
その一部に縞がありました。同じような季語に
「蟇(ひき)出づ」「蛇出づ」などもあります。もっとも、
これは南北に長い日本列島においてはかなり時間差がある
でしょう。

そろそろ桜の便りが聞え始めました。家の周りでは白木蓮
が咲き始め、桜の蕾もかなり膨らんできています。


060326

□◆□…優嵐歳時記(728)…□◆□

   地に淡き光集めし菫かな  優嵐

週末ですので、増位山の梅林でも数人の訪問者と会い
ました。それでもひっそりとして、梅を愛でるには最適
です。梅はいずれも人の背丈ほどで、目の前で香る紅梅、
白梅を楽しむことができます。少しずつ種類も違い、
紅梅の色も濃いものからほんの淡いものまでさまざまです。

展望台まで足を伸ばす人は少ないようで、ここで人に
会うことはめったにありません。今日は見通しがきき、
播磨灘を行き交う船、こんもり丸い上島がよく見えました。
眼下を流れる市川の水の色はその日の天候によって微妙に
変わります。

梅林でジョウビタキの雌を見ました。もうすぐ、彼らは
北に向かって帰ります。今年初めてみたのはヤマガラ
彼らは背と腹の特徴的な赤茶色ですぐにそれとわかります。
竹林でもツツピィー、ツツピィーと囀っていました。
これで30種です。

060325


□◆□…優嵐歳時記(727)…□◆□

   梅林に人なく光あふれおり  優嵐

このところ、毎日のように増位山を訪ねています。梅が
見ごろですし、家からは車で5分ばかり走れば頂上近く
の駐車場まで行けます。頂上展望台まではちょうどよい
散歩になりますし、森を歩きますので、野鳥の囀りも
楽しめます。

昨日はシジュウカラ、今日はコゲラを今年初めて見ました。
これで29種です。梅林にはいっぱいに春の日差しがあふれ、
すでに蝶がいくつか飛び交っています。梅の木の根元では
スミレが咲き始めていました。ブロックの間からはトカゲ
もちょろりと顔を出しました。

060324

□◆□…優嵐歳時記(726)…□◆□

   春潮へ川蛇行して流れけり  優嵐

午前中は雨が残っていましたが、昼ごろにはお天気が
回復し、午後、今日も増位山の展望台へ行ってきました。
随願寺の歴史は古く、聖徳太子の時代にさかのぼります。
播磨六山のひとつとして貴族や武士の尊崇を集めました。

東の峰は「有明の峰」と呼ばれ、ここから市川と姫路平野
さらには播磨灘が一望できます。勅使としてここを訪れた
在原業平は次のような歌を詠んでいます。

 播磨路や糸の細道わけゆけば砥堀に見ゆる有明の月
                  
また、その後、西行もここを訪れ次の歌を詠みました。

 天照らす神さえここに有明の月もさやけき秋の夜の空

これらの歌碑が展望台には立っています。しかし、あまり
にも達筆な筆文字であるため容易に読むことができません。
姫路を中心とした播磨一帯は温暖な気候に恵まれ、古く
から経済・文化が発展していたことがこうした歴史を
見るとあらためてよくわかります。

060323


□◆□…優嵐歳時記(725)…□◆□

   ふと風の吹けば香りし枝垂梅  優嵐

昨日の春分の日には、増位山随願寺へ行ってきました。
白梅がようやく五分から七分咲きというところです。
桜が咲くころになってもまだ梅が咲いているのではない
だろうか、と思いました。

枝垂梅はほぼ満開で、隣のサンシュユの黄色い花との
とりあわせがいい感じです。気がつけばあちこちで
いろいろな花が咲き始めており、桜に先駆けて野山の
彩が増してきました。

060322


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