優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2006年03月

□◆□…優嵐歳時記(724)…□◆□

   どら焼きを食ぶお彼岸のくもり空  優嵐

夕方になって雲が厚くなってきました。明日は雨の予報が
出ています。曇っていても6時半ごろまで明るさが残る
ようになり、やはりお彼岸だと思いました。

彼岸は煩悩に満ちたこの世を「此岸」とし、悟りを開いた
境地を向こう岸の「彼岸」としたものです。仏の教えは
人々を向こう岸に渡す船ともたとえられます。

□◆□…優嵐歳時記(723)…□◆□

   江戸川のはるかに流れ白木蓮  優嵐

東京は姫路より季節の進みが一足早いと感じました。
柴又の帝釈天から矢切の渡しがある江戸川の堤に
出ました。川向こうは千葉県松戸市です。広々と
していて、東京に来ると、山がないなぁと思います。

それも無理はなく、江戸幕府が開かれるまではこの付近
は一面の湿地帯で、川は好きなように氾濫を繰り返し
人が住めるような場所ではなかったのです。

ハクモクレンはモクレン科の落葉高木です。大木に
なると樹高は10mを超えるものもあり、花は大きく、
灯火をかかげているようで、見事です。

□◆□…優嵐歳時記(722)…□◆□

   紅梅に真白き富士の日本晴れ 優嵐

東京へ来ています。夕方から東京は雨になりましたが、
午前中に新幹線から見た富士山は隈なく晴れて、残雪
が青空に映え、「富士は日本一の山」を彷彿とさせる
眺めでした。何度見ても、やはり富士は素晴らしいです。

麓では、紅梅が満開で、富士の残雪の白、空の青、紅梅
の紅と色彩豊かな日本の春を車窓から満喫しました。
東京では「寅さん」でおなじみの柴又の帝釈天へ行き
ました。白木蓮が満開で、桜の蕾はいっぱいに膨らみ、
開花が近いことを感じました。

060318


□◆□…優嵐歳時記(721)…□◆□

   畦青む縦笛吹いて子ら帰る 優嵐

暖かくいいお天気でした。マウンテンバイクで図書館まで
のんびりと走ってきました。風も柔らかく日差しは明るく
水面に反射する光がきらきらと心地よく感じられます。
柳が芽吹いてきました。

冬の間なりをひそめていた木々も活動を始め、冬鳥は北に
戻りつつあります。もうすぐツバメが姿を見せるでしょう。
枯れていた畦にも青さが戻ってきています。

□◆□…優嵐歳時記(720)…□◆□

  窓硝子すべて曇らせ春荒れる  優嵐

朝から雨でしたが、午後になって風が強まり、戸外では
激しい風の音がしています。「春荒」は「春突風」
「春嵐」などともいわれ、前線をともなった低気圧が
日本海側を通過するときに吹く南よりの暖かい強風の
ことです。

春はお天気が不安定で、晴天が三日と続きません。昨日は
夜空に雲すらありませんでした。明日はまた晴天になる
ようです。晴れたら晴れたで、花粉症の方には悩ましい
季節です。

□◆□…優嵐歳時記(719)…□◆□

   満月の豊かに昇り涅槃の夜  優嵐

釈迦の入滅は陰暦二月の望の日といわれています。陽暦
では3月15日を中心に寺院で涅槃図を掲げ、香華を供え
遺教経(釈迦の最後の教え)を読みます。涅槃は梵語
(サンスクリット語)のニルヴァーナの音写で、吹き消す、
あるいは消滅するなどの意味があります。

実際に釈迦がこの日に亡くなったというよりは、自然暦
のうえで重視され、それを釈迦の命日にして、ご馳走を
作り、祝ったのだといわれています。クリスマスも復活祭
も暦の上で重要な日であり、同様の意図を込めたものと
考えられます。

今夜は満月です。まだ少し気温が低いせいか、くっきりと
明るい月が昇ってきました。

□◆□…優嵐歳時記(718)…□◆□

  南北の大橋光る春寒し  優嵐

昨日の午後から北西の季節風が強くなり、寒さがぶり返し
ました。今日も夕方前まで戸外ではごうごうという風の
音がしていました。お彼岸を前に最後の冬の名残という
気がします。

昨日、増位山の展望台にあがってきました。途中では、
八重の紅梅が満開でした。湿気が少なく風が強かった
せいか、見通しがよくきき、東の低い山の向こうにある
明石海峡大橋、さらには、瀬戸内海をはさんで70km
真南にある大鳴門橋が見えました。

060314


□◆□…優嵐歳時記(717)…□◆□

   春の日やフランチェスコの像に降る 優嵐

今朝は快晴でした。近所に聖フランチェスコ修道会が
運営している病院があります。ときどき中庭を散歩
させてもらいます。最近新しい病棟を建設中で、道が
新しくなっています。

今日、そこを通ると、天に両手を差し伸べたアッシジ
の聖人、聖フランチェスコの像が立っているのに気が
つきました。かたわらでは、芽吹き始めた柳の緑が
柔らかく揺れていました。

□◆□…優嵐歳時記(716)…□◆□

   ほころびて香をこぼしけり梅の花 優嵐

昼過ぎまで雨が降っていました。その後はやや気温が
下がっています。昨日訪れた梅林の紅梅、まだちらほら
と花をつけている程度でしたが、それでも木のそばへ
行くとほのかな梅の香りがしました。

ほころびかけている蕾がいっぱい枝についていて、赤い
花びらがくるくるっと丸められて収納されているのが
わかります。小さな赤ちゃんの手のようにも思えます。
こうして芽が膨らみ内側から花がしだいに開いていくの
を見ると、やはり自然は偉大だと感じます。

060312


□◆□…優嵐歳時記(715)…□◆□

   山寺の三月香る水仙花  優嵐

増位山随願寺を一週間ぶりに訪ねてみました。そろそろ
梅が見ごろかと思っていましたが、境内の梅林はまだ
紅梅がちらほら咲いているだけでした。麓では梅がほぼ
満開だっただけに、わずかな標高差でも植物は敏感だと
感じました。

境内には水仙が咲いていました。「水仙」は冬の季語です。
晩冬から早春にかけて咲き、寒気の中の清楚な姿が昔から
日本人に愛されてきました。

梅林の周りの森でエナガを見ました。小さな身体と長い尾
が特徴で、「ジュリ、ジュリ」という鈴を転がしたような
声でもよくわかります。今年姿を確認した鳥はこれで27種。
鶯のまだ整わない囀りも時おり聞えてきました。

060310

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