優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2006年05月

□◆□…優嵐歳時記(789)…□◆□

  羊歯若葉林床につづくシンメトリ  優嵐

羊歯は森のあちこちで見ることができます。春に越冬葉の
中心から若葉が拳のように丸まった形で顔を出します。
今、森ではそれらの葉が横方向にまっすぐ伸びている
ところです。若草色のアンテナを広げたような雰囲気で、
一斉ににそろったさまがマスゲームをやっている人のよう
でもあります。

その鮮やかな緑を「青羊歯」とも詠みます。樹林の斜面
全体が羊歯のみずみずしい青さに彩られています。

060531

□◆□…優嵐歳時記(788)…□◆□ 

  青梅の膨らむ園に風清し  優嵐

増位山随願寺の梅園の梅の実がしだいに大きくなって
きました。最初は梅の種に皮をかぶせたようだったのが
かなり肉付きがよくなってきています。

「梅雨」という言葉はこのころに梅の実が熟すことに
由来しています。青いうちに落として梅干にしたり、
梅酒を作ったりします。黄色く熟したものは「実梅」
といいます。

060530

□◆□…優嵐歳時記(787)…□◆□

  ざぶざぶとたましい洗う緑かな  優嵐

花の季節から緑の季節に移ってきました。緑の色が濃く
なってきたのがわかります。広葉樹の下は光が遮られて
ほの暗くなっています。常緑樹もほぼ新しい葉が出揃い、
濃い緑の先に柔らかな緑の新葉がついています。

気温が上がり、湿気も多くなって、森を歩いていても汗
が流れてきます。ヒノキの植林帯では林床の羊歯も新し
い葉を広げています。

060529

□◆□…優嵐歳時記(786)…□◆□

  夏の宵明るきうちの湯の楽し  優嵐

今年の五月は全国的にぐずついたお天気が続き、連休
明けからずっと梅雨の走りのような空模様です。今日
の姫路もどんよりとして、ときおり小雨がぱらつく
一日でした。天気予報によれば、明日もほぼ同じ雰囲気
のようです。

お天気はぱっとしなくても、日が長くなっているのは
よくわかります。午後七時ごろでもまだ明るさが残って
います。少し早めにお風呂に入ってさっぱりするのも
いいものです。

□◆□…優嵐歳時記(785)…□◆□

  ジーンズを干して見下ろす柿若葉  優嵐

私はアパートの五階に住んでいます。このあたりでは
最も高い建物のひとつになりますので、周囲の家や畑
を見下ろす形になります。ここ数年ずいぶん家が増え
ました。それでもすぐ目の前に畑があります。

ネギやきゅうり、豌豆などその時々の作物が植えられ
ていて、それをながめるのも楽しいものです。畑の
真ん中に富有柿らしい柿の木もあります。新緑の季節、
柿の木も若葉を広げています。

□◆□…優嵐歳時記(784)…□◆□

   麦の穂のまっすぐ風のさらさらと 優嵐

麦は日本では稲の裏作として栽培されてきました。
秋にまいた麦は初夏を迎えるころ伸びた茎の先に花穂
をつけます。やがて麦畑全体が黄金色に熟れてきます。

一毛作が多くなった昨今では、麦畑を目にすることも
少なくなりました。それでも頭を垂れる稲とはまた
異なる麦秋の風景は、麦ならではの美しさがあります。
大麦を精白し圧縮した押麦は、今では健康食品として
見直されています。

□◆□…優嵐歳時記(783)…□◆□

  田に青葉若葉映して山の村  優嵐

兵庫県の山間部では先週末あたりが田植えの最盛期
でした。上流から始まった田植えは徐々に下流部へと
移って行きます。姫路周辺では6月に入ってからが
田植えのピークになります。

水が入り、早苗が植えられたばかりの田というのは
いいものです。景色が一変します。水田がすべて池に
変わったように見えます。実際にも水田は一種のダム
の役割を果たしているそうです。

060524

□◆□…優嵐歳時記(782)…□◆□

   一瞬に射干のカーブの近づきぬ  優嵐

「射干(シャガ)」は人里に近い少し影になったところ
に固まって咲くアヤメ科の多年草です。鎮守の森の側や
竹やぶの端などでよく見かけます。小ぶりですが、白地
に紫と橙の斑紋が入った清楚な花です。

オートバイで走っているとき、坂道のカーブでその角度
とスピードがわずかにオーバーして、膨らみ加減になる
ことがあります。道沿いに咲いていたシャガの群落の
白さが通り過ぎてからも脳裏にしばらく残りました。

060523

□◆□…優嵐歳時記(781)…□◆□

  いくたびも青葉の峠越えゆけり  優嵐

久しぶりに朝から快晴でした。オートバイで兵庫県南西部
の宍粟市、佐用町を抜け、志引峠を越えて走ってきました。
山は青葉がまぶしく、里は田植えの最盛期でした。
このあたりまでくると、信号がほとんどなく、走る車の
絶対数が少なくて実に快適なツーリングを楽しむことが
できます。

風が心地よいこの季節はツーリングに絶好のシーズンで、
多くのオートバイに出会いました。薔薇、アイリス、
サツキ、オオデマリなど走る道すがら花も楽しめます。
日差しをいっぱいに受けて走るのは気持ちのいいものです。

060521

□◆□…優嵐歳時記(780)…□◆□

   石楠花や谷に明るき陽の満ちて  優嵐

シャクナゲは、富山、長野、愛知県以西の本州から四国
の山地に自生する常緑小高木です。花の色は紅、紫、白
で、日本のツツジ属の中では最も豪華な花をつけます。
実際、開花期のシャクナゲは素晴らしく、先日、兵庫県
の山間部をオートバイで走っていたとき、道路脇にこの
シャクナゲを見つけて思わずブレーキを踏みました。

遠くから見たときはアジサイ?と思われるような枝ぶり
だったのですが、季節的にあいません。近寄ってみると、
本当に見事なシャクナゲでした。

060520

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