優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2006年06月

□◆□…優嵐歳時記(812)…□◆□

  さみだれの音を夢ともうつつとも  優嵐

朝、ようやく明るくなったかならないかくらいの時間に
雨が降っていました。半分夢の中のような覚めきらない
意識の端でそれを聞いていました。

さみだれは「五月雨」と書き、陰暦五月ごろに降る雨です。
梅雨が時候を含むのに対し、雨そのものをさします。厳密
にいうと今日はすでに陰暦水無月五日ですが、そのあたり
は「梅雨のころ」に含まれるものとしてください。

□◆□…優嵐歳時記(811)…□◆□

  青田風飢饉の話を読んでいる  優嵐

昼食後、リクライニングチェアで本を読むのが午後の楽しみ
です。窓を開けているとよく風が通り、扇風機すらつけなく
とも、快適に過ごせます。

今、中世日本の歴史を描いたシリーズを読んでいます。
鎌倉時代や室町時代のひどい飢饉の様子を、当時の公家や
僧が書き残した日記を通して知ることができます。しかし、
食べるものがなくて死ぬ、という感覚が、読んでいても
なかなか実感としてはわかりません。

窓から見える田んぼでは、すでに植えられた苗が水面を
隠すほどに大きく育っています。

□◆□…優嵐歳時記(810)…□◆□

  手さぐりに電気蚊取のスイッチを  優嵐

歳時記を開くと「蚊遣火」で出ています。蚊を追い払うため
に楠や杉の葉、かんきつ類の皮、おが屑、蓬、除虫菊などを
くすべた火のことです。しかし、今やこのようなものを普段
の生活で目にすることはまずないでしょう。

せいぜい除虫菊を原料とした渦巻き型の蚊取線香でしょうが、
それすら室内からは姿を消そうとしています。先日、部屋で
蚊取線香をつけてみたのですが、その匂いに蚊より先に
こちらがたまらなくなりました。昔は別になんということも
なかったように思うのですが、こちらの感覚が変わったので
しょうか。

□◆□…優嵐歳時記(809)…□◆□

  明け方の夢はや忘れ夏蒲団  優嵐

夏向きの掛け布団、タオルケットなども含めてこう
詠みます。真夏になると、それさえうっとおしい暑さに
なります。半分は心理的な安心感でかぶっている気が
します。

最近よく夢を見ます。正しくは夢を見た直後に目を覚ます
というべきでしょうか。朝方ですと、それからまたうと
うとして、「確かに夢を見たんだけど」と内容はおぼろに
なってしまっています。思いがけない人が登場したり、
自分がとんでもないことをしていたり、と正気では考え
られないようなことが起こるので、夢はおもしろいですね。

□◆□…優嵐歳時記(808)…□◆□

  旧友に一筆啓上梅雨なれば  優嵐

学生時代の友人から久しぶりに手紙をもらいました。
返事を書こうと思ってペンをとりましたが、このところ
自分以外の人に向けて手書きでものを書いたことが
ありません。すっかりキーボード生活なのです。

書いていきながら、あまりの字のみっともなさに愕然と
しました。しかし、なんとか書き上げました。筆どころか、
ペンもおぼつかないのですが、とにかく一筆啓上です。

□◆□…優嵐歳時記(807)…□◆□

  夕暮れの光に香り花くちなし  優嵐

住んでいるアパートのまわりは季節の花がいっぱいです。
桜、ツツジ、サツキ、バラと咲いて、今はクチナシの花
の香りでいっぱいです。クチナシは白い花を咲かせます
が、すぐに黄色くなります。

それほど華やかな印象の花ではありませんが、香りは
強く、かなり離れていてもよく匂います。クチナシは、
実も季語(秋)ですので、花を詠む場合は「花くちなし」
「くちなし咲く」などとして、花であることをはっきり
示します。

060624

□◆□…優嵐歳時記(806)…□◆□

  瞑想す風よくとおる夏座敷  優嵐

今のように冷房が行き渡る前、風通しがよいことは、
日本の家屋にとって必須の条件でした。少しくらい
気温や湿気が高くても、風通しさえよければしのぐ
ことができます。

都会では家を開け放して風を通すわけにもいかず、
冷房が欠かせないものになり、それがさらに外気の
温度を上げるという悪循環に陥っています。

季語には「夏座敷」「冬座敷」はありますが、
「春座敷」や「秋座敷」はありません。確かに、
言葉から季感が漂ってこないものは、季語には
ならないのですね。

□◆□…優嵐歳時記(805)…□◆□

  真昼より灯して読書梅雨ごもり  優嵐

昨夜は蒸し暑く、目が覚めると雨になっていました。
晴天が続いていたので、そろそろ梅雨らしいひと雨が
くるころだろうと思っていました。一日雨が降り続き、
特にお昼ごろはしっかり降っていました。

雲が厚く、部屋も薄暗く文字を読むにはスタンドを
点す必要がありました。雨音をバックに活字に向かう
のは気持ちが落ち着いて好きです。

□◆□…優嵐歳時記(804)…□◆□

  川辺より浴みし肌に夏至夜風  優嵐

明るさの残っているうちに入浴をすませベランダで風に
吹かれていました。まだ昼間でも真夏ほどの暑さは
ありませんし、夜になるとさらに暑さは和らぎます。
それでも川をわたって吹いてくる夜風は心地よいものです。

今日は夏至。このところいいお天気が続いていますので、
梅雨とはいえ日の永さを堪能することができます。
冬至のころも夏至のころも一日は同じ二十四時間ですが、
明るい時間が長いと、気持ちがゆったりします。

□◆□…優嵐歳時記(803)…□◆□

   夏の日の暮れてコートに風わたる  優嵐

明日が夏至です。今日はナイターでテニスをしました。
午後7時前でしたが、車でテニスコートに向かって
いると、山の上にまだ赤い夕陽がありました。明日も
いいお天気らしく、西の空が茜色です。

しだいに日が暮れていき、それでも7時半ごろまでは
空に明るさが残っていたでしょうか。北欧なら白夜が
楽しめるころです。

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