優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2006年08月

□◆□…優嵐歳時記(856)…□◆□

  湯に入りて近しく聞きぬ虫の声  優嵐

昼間はまだ蝉の声がにぎやかですが、夜になると虫の音
が聞こえてくるようになりました。湯船につかって
ほっと一息ついていると、静かな窓の外から聞こえて
くる虫の声に秋が来たことを知らされます。

まだまだ日中の暑さは厳しいのですが、それでもふと
吹く風に秋を感じ、いつの間にか頭を垂れ始めた稲穂に
驚いたりもします。

□◆□…優嵐歳時記(855)…□◆□

  法師蝉何に急かされオーシツクツク  優嵐

法師蝉の声が盛んに聞こえてくるようになりました。
ジイジイと鳴き始め、ツクツクボーシツクツクボーシ、
としだいにテンポをあげていき、最後は切羽つまった
ようになってジーワンジーワンと鳴き終わります。

八月も半ば、秋風が吹くようになってから鳴きだします。
体長は4,5cmと小形で、日本全土と中国大陸、台湾に
分布しています。

□◆□…優嵐歳時記(854)…□◆□

  秋口の午後再びの通り雨  優嵐

台風の影響か昨日、今日とすっきりしない空模様です。
日差しが少ないせいで残暑はいくぶん和らいでいます。
今年は閏七月があります。旧暦では、その季節にあたる
閏の月がある年は、その季節が長くなる傾向がある
ようです。

そのことを考えると、今年は残暑が長くなりそうですね。
とはいえ、そろそろ夏休みもあと十日ほどを残すばかり
となり、朝夕には秋の気配が濃厚です。

□◆□…優嵐歳時記(853)…□◆□

  蜩に今日のひと日の暮れにけり  優嵐

昨日法師蝉の声を聞きました。蜩は少し前から鳴いて
います。彼らが鳴き始めると、朝夕の日差しに秋の気配
が濃くなり、日中の暑さは厳しくてもやはり秋だという
気分になります。

蜩はとくに夕方によく通る声で鳴き、カナカナカナと
響く声は暑さを鎮める働きがあるような気がします。
今日は夕立がありました。

□◆□…優嵐歳時記(852)…□◆□

  撫子も供えられたる無縁墓  優嵐

墓地の一角に自然石を墓石の代わりに置いてあるお墓が
ありました。どうやら無縁仏が葬られているようです。
そこにもお盆の花が供えられていました。

お盆のお休みが終り、今日はUターンラッシュのピーク
のようです。今日も厳しい暑さが続き、お疲れのことと
思います。それぞれの精霊たちも昨日か今日、茄子や
胡瓜の馬に乗り、あるいは送り火に送られて再びあちら
の世界に返っていったことでしょう。

□◆□…優嵐歳時記(851)…□◆□

  田に再び水音高く終戦日  優嵐

水田では、稲の花が出て、稲穂が実り始める前に一度
田の水を落とします。稲に渇きを感じさせて根を深く
伸展させるためだそうです。このあたりでは「中干し」
と呼んでいます。こうすると台風がきてもしっかりと
根を張って倒れにくい稲になります。

お墓参りに行く途中に青田が広がっているところがあり、
乾いた田に水を入れる音が響いていました。西陽が強く
照りつけ、残暑が厳しい中、ほっと涼しさを感じる
水音でした。

□◆□…優嵐歳時記(850)…□◆□

  にぎやかにあそこもここも墓洗う  優嵐

「墓洗う」とは墓参りを意味します。墓参りはお盆のほか、
故人の命日や春秋の彼岸、年末年始などにもおこなわれ
ますが、季語としてはお盆の時期に用います。

昨日は日曜だったせいもあり、道路沿いにある墓地に大勢
の人がつめかけていました。ふだんは人影がほとんど
ない場所だけに、お盆だなあと思いました。

□◆□…優嵐歳時記(849)…□◆□

  盆踊り櫓組まれて人を待つ  優嵐

今夜は盆踊り、広場で準備が進められていました。
スピーカーから踊唄が流れてきます。盆に招かれてくる
先祖の霊を慰め、これを送るために集まり踊るのが
「盆踊り」です。無縁の霊もこれによって供養されます。

お盆で帰省された方も混じって盆踊りでしょうか。
戻ってきた祖霊たちも踊りを見に来ているでしょう。
死者も生者も打ち混じって踊る、盆踊り本来の姿かも
しれません。

□◆□…優嵐歳時記(848)…□◆□

  初物のいびつな梨に刃を入れる  優嵐

今年初めての梨を食べました。果肉のつきかたがいびつで
中心軸が曲がってしまっています。姿は悪くても味は
上々で、秋がきたな、と感じました。

この週末はお盆の帰省ラッシュで交通機関は大混雑かと
思います。夕暮れがはっきりと早くなっているのが
わかります。真夏の始まりが遅かったので、まだ法師蝉
の声は聞こえませんが、お盆明けには鳴き始めるでしょう。

□◆□…優嵐歳時記(847)…□◆□

  八月の風にドラムを叩きけり  優嵐

先日買ったジェンベを持って、近所の丘にある神社へ
行きました。アパート住まいですので、騒音が気になり、
思い切りジェンベを打ち鳴らすわけにはいきません。

外はまだまだ暑いので、屋根のあるところであまり人さま
のご迷惑にならないところ、と考えていて、この神社の
境内のことが思い浮かびました。

鳥居の前まで車で行き、拝殿に座って叩き始めました。
もちろん神様にはご挨拶をしてから演奏開始。風が社殿
を吹き抜け、蝉の声にあわせてリズムを刻むのは気持ちの
いいものでした。

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