優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2006年09月

□◆□…優嵐歳時記(891)…□◆□

  秋耕の土の匂いの遠くより  優嵐

早稲の稲刈りが済んだ田んぼに耕運機が入って耕して
いました。アパートの五階にいても、その土の香りが
感じられました。収穫の終わったあとの田畑を起こす
ことを「秋耕」といいます。

鋤き起こしておけば、冬の間に風化して土壌が豊かに
なります。まだこれから稲刈りという田もあり、すで
に冬の準備に入った田もあり、田の表情もいろいろ
です。

□◆□…優嵐歳時記(890)…□◆□

  秋の水近く座りて下りけり  優嵐

柳川での小船の川下り、いいお天気で、船頭さんの駄
洒落まじりの説明を聞きながらのんびりとしたひととき
を過ごしました。私はカヤックでの川下りも何度か
楽しんだ経験があります。

こうした小船での川下りは水面がすぐそこにあり、そこ
から見上げる周囲の風景が新鮮です。道の上の視線とは
また違う角度から景色を眺めることになるからです。
台風13号の暴風雨が激しかったようで、川べりの柳が
かしいでいました。

□◆□…優嵐歳時記(889)…□◆□

  屋台にて枝豆食めば夕暮れる  優嵐

福岡の中洲で名物の屋台にも行きました。川を見ながら
ビールを飲み、おでんを食べ、仕上げにラーメンをいた
だきます。人気の屋台の前には長蛇の列ができており、
びっくりしました。

市内全体で300軒ほどの屋台があるといい、何がきっかけ
でこれだけたくさんの屋台が出るようになったのかは
わかりませんが、ずらりと並んだ屋台のさまは壮観です。

□◆□…優嵐歳時記(888)…□◆□

  竜淵に潜みて鯉のにぎやかに  優嵐

「竜淵に潜む」とは秋分のころのことです。春の季語に
「竜天に登る」があり、いずれも想像上のものですが、
『説文』の「竜は春分にして天に登り、秋分にして淵に
潜む」と説くところによるものです。

福岡では、福岡市の友泉亭公園にも行きました。筑前
黒田家六代藩主継高が別荘として造営したもので、
大広間が中島のある池に面しており、そこにたくさんの
錦鯉が飼われています。餌を投げると丸く口をあけた
鯉が我先にとよってきます。

□◆□…優嵐歳時記(887)…□◆□

  柳川のうなぎ香ばし秋の昼  優嵐

柳川では、昼食を「御花」でいただきました。ここは
柳川藩主であった立花家に由来する別邸と日本庭園が
そのまま料亭に利用されているものです。国指定名勝
松濤園を臨む大広間で柳川名物「うなぎのセイロ蒸し」
をいただきました。

このうなぎが絶品でした。近所のスーパーで売っている
パック入りの鰻の蒲焼とはまるっきり香りが違います。
私はほとんどのものをおいしくいただけるのですが、
これは別格のおいしさ。思い出に残る味になりそうです。

□◆□…優嵐歳時記(886)…□◆□

  橋ひとつくぐれば揺れる彼岸花  優嵐

週末は福岡県に行っていました。ISIS編集学校関連の
集まりで、中身の濃い時間を過ごしてきました。旅は、
一人旅を除けば、どこへ行くかと同時に、誰とその時間
を共有するか、がとても大きな意味をもちます。

二日目に柳川の川下りを楽しみました。小船に乗ると、
水面がぐっと近くなり、この視点から見える風景が新鮮
です。橋をいくつもくぐり、川べりには彼岸花が咲いて
いました。白いものもたくさん咲いていました。


060925

□◆□…優嵐歳時記(885)…□◆□

  大空に刷毛で描きし秋の雲  優嵐

すっかり秋たけなわです。いいお天気で、澄んだ空に
筋雲が出ていました。気象用語では巻雲(けんうん)と
呼ばれ、高度五千から一万三千メートルの空に現れます。

今日の雲は本当に誰かが大きな刷毛に白い絵具をつけて
さっと描いたようでした。夕暮れ時も最後まで陽を
受けて輝きます。夕焼け空を見ると、人間がどんなに
がんばってもこんな壮大な絵を描くことはできないな、
と思います。

□◆□…優嵐歳時記(884)…□◆□

  木の影の長くなりたる秋彼岸  優嵐

今日は彼岸の入りです。今日から秋分の日をはさんで
七日間が秋彼岸になります。俳句では春の彼岸は単に
彼岸といい、秋は「秋彼岸」または「後の彼岸」と
いいます。

いいお天気であっても、暑さを感じなくなってきました。
太陽の南中高度がかなり低くなっているのがわかります。
暑さ寒さも彼岸まで、秋の夜長を感じ始めるのもこのころ
からです。

□◆□…優嵐歳時記(883)…□◆□

  杉の木のまだ揺れている野分晴  優嵐

台風が去った後の晴天を「野分晴」といいます。昨日は、
日本海に入った台風が北へ進み、兵庫県では午後から
台風一過の青空が広がりました。空気中の塵が風雨で
吹き飛ばされ、遠くの山もくっきり、青空もすがすがしい
気持ちのいいお天気でした。

秋の日差しが戻ってきてもしばらくは風が強く、草木は
大きく揺れていました。今日の夕方には台風は小樽市の
西に進んでいます。日本列島に近づくまではじりじりと
した歩みでしたが、日本海に入ってしまうと、急速に
スピードがあがるようです。すでに14号が発生して西に
向かっていますね。

□◆□…優嵐歳時記(882)…□◆□

  芋の葉の騒ぐ野分の近ければ  優嵐

台風13号(アジアネームはShan Shan)は九州に大きな
被害をもたらしました。横転している電車を見たときは、
風の威力のすさまじさに驚きました。姫路では夜半に
少し風が強まったかな、という程度でしたので。

「野分」は秋の疾風、主に台風からくる強い風を指します。
台風は北西太平洋の低緯度地方で発生し、毎年数個以上が
日本にやってきて大きな被害を与えます。ただ、台風が
持ち込む水資源は貴重で、平均的な一個の台風がもたらす
水は約150億t。これは、年間の工業・生活用水の約半分に
あたるそうです。

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