優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2006年11月

□◆□…優嵐歳時記(947)…□◆□

  脱ぎ捨てし輝き銀杏並木冬  優嵐

いいお天気で髪を切ってきました。もう十二月とは思え
ないような暖かさが続きます。マフラーやコートなんて
全く縁がなく、まだ薄手のシャツの上にスウェットシャツ
だけで夕方の散歩に出かけられます。過ごしやすいですが、
冬物市場に関してはちょっと心配です。

「雪やこんこ」のメロディーを流しながら灯油の販売を
する車が近くをまわっています。この気温では灯油を使う
暖房器具もまだ眠っているのではないか、と思います。
ここ数年では、一番暖かい師走の入りでしょうか。

□◆□…優嵐歳時記(946)…□◆□

  えのころも薄も荻も枯れし野に  優嵐

暖かい日が続いていますが、木々はようやく葉を落とし、
野山は彩りの最後の段階を迎えています。まだ日のある
うちに散歩に出ても、それほどの距離でもないのに帰る
ころには暗くなってしまいます。あと一日で十一月は
終りです。

桜はかなり前にすっかり枝だけになっていて、今落葉中
なのは銀杏です。葉が落ちてしまい、野も枯れてしまう
と、それはそれですっきりとして私はむしろ好きです。
万物の流転、死と再生をもっとも実感するころです。

□◆□…優嵐歳時記(945)…□◆□

  遠山に雲の影ある芭蕉の忌  優嵐

芭蕉は1694年11月28日(旧暦:元禄17年10月12日)
旅の途中、大坂御堂筋の旅宿・花屋仁左衛門方で
「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」の句を残し、客死し
ました。

江戸時代以前の人の忌日は旧暦の日付を調べないと正確
にはいつかがよくわかりません。別名「時雨忌」とも
呼ばれていますが、新暦の10月12日では天は高く、とても
時雨という趣ではありません。

今日は朝のうち晴れていましたが、お昼ごろから雲が出て
時雨っぽいお天気になってきました。家の周りにある銀杏
は今が黄葉の最盛期です。芭蕉が亡くなった時代よりは
少し暖冬かもしれませんが、季感はこんな風だったの
だろう、と想像することは可能です。

□◆□…優嵐歳時記(944)…□◆□

  ウクレレをぽろんぽろんと冬の昼  優嵐

一日中雨が降ったりやんだりでした。週末からお天気が
ぐずつき、なかなかすっきりしません。楽器を弾くのは
好きなのですが、弦楽器はどうも苦手で、ギターは何度か
挑戦しましたが、指の痛みに耐えかねてそのたびに断念
していました。

今はかわりにウクレレを弾いています。軽いですし、
弦が四本で柔らかく、コードを押さえやすいところが
あきらめずに弾けるところです。外は冬の雨、部屋で
とりとめもなくウクレレをかき鳴らす、それもまたいい
ものです。

□◆□…優嵐歳時記(943)…□◆□

  イタリアのアリアを聴くや冬の夕  優嵐

知り合いのお嬢さんの初めてのコンサートに行って
きました。普通の大学に通いながら声楽を学び、その後
ドイツにも留学して研鑽を積まれたということです。
オペラのアリアを聴く機会など、今まで一度もありませ
んでしたが、歌の素晴らしさに圧倒されました。

ほっそりとした外見からは想像もつかないほどの声量。
長い修練を積んで、声楽独特の特殊な発声法を身につけ
られたからこそなのでしょう。高1のときに「音楽をやりたい」
と心に決め、その道に進むためにさまざまな困難を
克服した彼女に拍手を贈りたいと思います。

□◆□…優嵐歳時記(942)…□◆□

  年賀状準備も冬めくもののうち  優嵐

「冬めく」とは、景物や気候が冬らしくなることをいい
ます。歳時記をくって季語を確認しようとしていたら、
「欠航をいふも冬めくもののうち 高野素十」に出会い
ました。きっと前に読んでいて頭のどこかにこの句が
残っていたのでしょう。

年賀状はパソコンのソフトで作成します。平成の大合併
でかなり住所が変わりましたから、ソフトも新しく買い
かえました。それにしても年々便利になるものです。

□◆□…優嵐歳時記(941)…□◆□

  小雪やきつねうどんをあたためる  優嵐

11月22日は二十四節気の「小雪」でした。立冬の15日後、
太陽の黄経が240度に達します。北日本では雪が降り始めて
いるところもあるようですが、暖かい姫路では11月中に
雪が来ることはまずありません。

しかし、この日はどんよりと曇りがちの寒い日でした。
お昼ごはんにきつねうどんを食べました。ふうふういい
ながら熱いものを食べるのがおいしくなる季節です。
寒くなるからこそ熱いものがおいしく感じられる、これも
四季の恵みですね。

□◆□…優嵐歳時記(940)…□◆□

  透明なデュエットの声十一月  優嵐

歌っている人も題名も知らないのに、その歌の一節が
何度も蘇ってくる歌というのがありませんか? 私に
とってはそれが「風はいたずら 旅ゆく人の 心の中を
のぞいて通る」という歌でした。

先日また蘇ってきたので、試しにネット検索してみたら、
なんと、曲名は、『風と落葉と旅びと』、歌っていたの
は当時10歳と12歳の姉妹デュオ「チューインガム」と
判明。これがデビュー曲で、しかも彼女たちの作詞作曲
だというのですから、驚きました。

もっと驚いたのはラジオ関西のジングル「ここは海の
みえる放送局ラララララララ」は彼女たちの曲だという
ことでした。関西方面にお住まいの方ならきっと一度は
耳にされているはずです。姉妹は大阪府豊中市で生まれ
育っています。

今も熱心なファンがいらっしゃるようで、ベスト盤のCD
が発売されていることも知りました。幻の自分の「心の歌」
に会いたくなり、CDを取り寄せました。

聴いて素直に感動しました。何の作為もなく心に浮かんだ
ままを歌にして、少女が歌っている、その作為がないゆえ
の輝きと美しさ。誰にもこんなときがあり、知らぬ間に
過ぎ去って、遠くなってから初めてそうだったと気づく
何か・・・。

B000067JPIGOLDEN☆BEST/チューインガム
チューインガム
Sony Music Direct 2002-06-19

by G-Tools

□◆□…優嵐歳時記(939)…□◆□

  冬耕の田に撒かれいし菜屑かな  優嵐

稲刈りが終わった田が鋤き起こされています。そこへ
冬野菜の白菜や大根などの傷んだ葉が撒かれています。
考えてみれば、少し前だと大都会を除けば、近所に畑や
田んぼがあり、そこへ野菜の屑などは戻していたのです。

今日はどんよりとしたお天気でした。まだそれほど寒さ
は感じません。暖房器具も真冬にはコタツを使うのです
が、まだ足先をちょっと暖めるだけの置コタツしか
使っていません。

□◆□…優嵐歳時記(938)…□◆□

  病棟の窓それぞれに冬灯り  優嵐

昨日の夕方、久しぶりに近所を散歩してきました。日は
短くなっていますがまだ暖かく、銀杏の黄葉は散り始め
ているものもあれば、まだ完全に黄色くなっていない
ものもあり、さまざまです。

近くにカトリックの修道会が経営する総合病院があり、
春に病棟が新しくなりました。その中庭までよく散歩
していたのですが、夏の間はご無沙汰でした。病棟が完成
したあとも駐車場や庭の工事が続いていましたが、昨日
はすっきりとしていて、新しい病棟の灯が中庭からよく
見えました。

このページのトップヘ