優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2007年05月

□◆□…優嵐歳時記(1118)…□◆□

  五月尽刈られし草の匂い満つ  優嵐

昼に増位山に行ってみたら、梅林で草刈がおこなわれて
いました。夏になり、みるみるうちに草がのびて梅林の
中の遊歩道を覆っていましたが、それがすっかりきれいに
刈り取られていました。

刈られたあとを歩いてみると、草の香りがしました。
自然の中では、さまざまな匂いが混じり合って、複雑に
嗅覚を刺激してくれます。色も音も匂いも自然のものは
人工的なものと違い深みがあります。

□◆□…優嵐歳時記(1117)…□◆□

  やわらかき旋律流れ窓若葉  優嵐

朝から雨になりました。雨が少ない五月でしたから恵み
の雨といっていいでしょう。昼過ぎには一度雨がやんで
日が差していましたが、夕方から再び雨になっています。
五月は明日で終わり。そろそろ梅雨の走りかもしれません。

一年で一番過ごしやすいころが終わってしまうというの
は少し残念ですが、梅雨にはまた梅雨の楽しみというもの
もあります。真夏には真夏の、真冬には真冬の、それぞれ
の季節の移り変わりを愛でるのが俳句というものですから。

□◆□…優嵐歳時記(1116)…□◆□

  谷埋めて青羊歯なびく昼の陽に  優嵐

シダは山のやや日影になった谷筋などに生えています。
冬枯れのものと常緑のものがありますが、いずれも春に
なるとゼンマイのように先を巻き込んだ葉をもたげ始め
ます。森でこれを見ると、植物というよりも、今にも
するすると動きそうな、動物的なものを感じます。

葉は規則正しく伸び、まるでアンテナが林立している
ようにも見えます。青羊歯の色は若々しい緑で、暗い谷
に陽が差し込むとき、いっそう明るくいきいきと映えます。

070529

□◆□…優嵐歳時記(1115)…□◆□

  われ包む森のざわめき青嵐  優嵐

青嵐(あおあらし)とは、青葉のころに吹くやや強い風
のことです。壮快で明るい雰囲気をともないます。
昨日は青嵐が吹き、空気中の塵が吹き払われて、今朝は
くっきりと視界が晴れた気持ちのよいお天気になり
ました。

こんな日はきっと四国まで見えるはずだ、と思いお昼前
に増位山の頂へ行ってみました。予想通り、淡路島の
西海岸に沿って視線をずらしていくと、大鳴戸橋の
シルエットが見えました。播磨灘を行きかう漁船のたてる
波が白く輝き、こういう光景を見ていると、理屈ぬきに
幸せになります。

070528

□◆□…優嵐歳時記(1114)…□◆□

  柄長わが頭上に群れてひとしきり  優嵐

エナガは背に薄いピンクの羽を持つ可愛らしい小鳥です。
いつも何羽かのグループで行動し、雑木林でよく
見かけます。ジュリ、ジュリというやや濁った声で
鳴き交わしています。

人をそれほど恐れず、森の中を歩いていると、平気で
近くの枝まで寄ってきます。身体に比して尾が長く、
それが名前の由来かと思います。丸っこい身体に小さな
くちばしで、見分けやすい野鳥です。

□◆□…優嵐歳時記(1113)…□◆□

  緑陰に葉ずれの音を聞いている  優嵐

青葉の茂りが大きくなり、木陰の気持ちよい季節です。
植物は光合成をするために葉を広げるのでしょうが、
それが夏の日差しをさえぎって、人間には憩いの場を
提供してくれます。

地面に踊る木漏れ日を眺め、風が揺らしていく青葉の
やさしい音を聞いていると、気持ちが落ち着きます。
自然の音というのは、微妙なゆらぎがありいくら聞いて
いてもあきるということがありません。

□◆□…優嵐歳時記(1112)…□◆□

  蝶の道われも歩みて夏真昼  優嵐

蝶の活動時間は日中の日の高いころに限られているよう
です。真昼に増位山へ行ってみるとあちこちで蝶にあい
ます。夕方、同じ場所へ行ってみても彼らの姿は消えて
います。

自然歩道を歩いていると、よく枝からぶら下がっている
蝶の幼虫を見かけます。蝶の卵が成虫になる確率は
1%あるかないか、だそうです。クモや寄生蜂、鳥などの
天敵がおり、逆に考えれば、彼らの生存を支えているのが
蝶だといえます。

□◆□…優嵐歳時記(1111)…□◆□

  桜の実散り敷く下に駐車する  優嵐

日中は暑く、戸外に駐車するときは日陰を探したい陽気
になりました。葉桜の陰に小さな桜の実が生っています。
薄紅色からしだいに黒く熟してきます。さくらんぼとは
異なり、食べられるような実ではありません。花の
華やかさにくらべると随分地味な実です。

緑の色が深くなってきました。夏の服装に変えよう、と
思うのがこのころです。四月は寒さと暖かさが、しだいに
グラデーションで変わっていき、五月は暖かさと暑さが
入れ替わっていく時期です。

070524

□◆□…優嵐歳時記(1110)…□◆□

  山法師空より星を受けて咲く  優嵐

ヤマボウシは、五月半ばから梅雨の時期にかけ、山の中で
枝いっぱいに平たい白い花を咲かせる落葉高木です。
花のように見えるのは正しくは花序の苞で、花はその
中心にかたまっています。

このかたまりを法師の頭、苞を頭巾に見立てて「山法師」
との名がついたということです。街路樹や庭木として
植えられているハナミズキは同じミズキ科の仲間で、
別名アメリカヤマボウシと呼ばれます。

□◆□…優嵐歳時記(1109)…□◆□

  椎の花少年少女老い易く  優嵐

シイ類は日本の代表的な常緑広葉樹です。ブナ科の高木
で、25mあまりにもなります。初夏、小さな淡黄色の花を
樹冠いっぱいにつけ、雲が湧き立つような、印象を受け
ます。花には雌雄の別があり、栗に似た香りがします。

シイ類にはスダジイとコジイ(ツブラジイ)があり、
スダジイは宮城・秋田から九州、韓国の済州島に分布し、
暖地を好むコジイは、東海から九州までと、済州島に分布
しています。

070522

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