優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2007年10月

□◆□…優嵐歳時記(1255)…□◆□

  贄くわえ鵙高枝に飛び立ちぬ  優嵐

鵙は秋晴れを象徴するような鳥です。雀よりやや大きい
くらいの身体ですが、肉食です。昆虫やトカゲなどを
捕らえ、有刺鉄線や尖った枝先に刺しておく習性があり、
これを「鵙の早贄(もずのはやにえ)」といいます。

留鳥で、一年中見られますが、キィキィーッと高く響く
縄張り宣言の唄は、澄んだ秋の空気を震わせ、秋意を
感じさせてくれます。

□◆□…優嵐歳時記(1254)…□◆□

  旅行記を記し秋の日暮れにけり  優嵐

私はこのブログの他に、読書ノートとアウトドアツアーの
ブログを書いています。先日のオートバイ旅行の旅日記
をそのブログに更新していて、ずっと放置していたここ
四年ばかりのオートバイツーリングの記録もアップする
ことにしました。

中国地方や九州をバイクでまわった旅日記を整理して
アップすると、ほぼ一日かかってしまいました。
読み直しながら、またそのときのことを追体験でき、
楽しいものです。

読書ノートも旅日記も「人間はすぐに忘れてしまう」と
いうことに気づいて始めました。すべて忘却のかなたに
行ってしまうものが、こうして記録していれば、思い出
を蘇らせる手がかりになります。

071020

□◆□…優嵐歳時記(1253)…□◆□

  夕月の松の影へと沈みけり  優嵐

朝から雨になっています。昨夕の月が雲でぼんやり
霞んでいましたから、恐らくお天気が崩れるのだろうと
思っていたらそのとおりになりました。一週間ばかり
晴天が続いたので、ひといき入れる雨です。

一昨日、さらに火曜日の夕月はややオレンジがかって
大きくきれいでした。今夜は上弦ですが、まだ雨が
降ったりやんだりしているので、月を見るのは難しい
かもしれません。

□◆□…優嵐歳時記(1252)…□◆□ 

  秋晴るるざっくり洗うオートバイ  優嵐

ツーリングの途中、雨上がりに長野県川上村のキャベツ
畑の間の道を走ったためオートバイが泥だらけになって
いました。自動車はたまにガソリンスタンドの洗車機で
洗ってもらうのみで、自分では洗いません。

しかし、オートバイばかりは自分で洗うしか手がなく、
バケツ二杯の水とペットボトルと柄つきタワシでほぼ
さっぱりとした外観を取り戻しました。長旅でかなり
タイヤも磨り減ったように思います。

071018

□◆□…優嵐歳時記(1251)…□◆□

  秋風や破産告示の真新し  優嵐

昨日、近所のホームセンターへ買物に行き、そこが破産
していることに初めて気がつきました。一昨日、バイク
の泥を洗い落とすためのタワシとバケツを買いに行った
のですが、駐車場ががらんとしていました。てっきり
休日と思い、昨日再度行って、柵に張られた告示を見て
破産と知りました。

社会環境が変わり、企業の新陳代謝が急速に進んでいる
ことはわかっていましたが、身近でこうした倒産例を
見ると、そのことがいっそうはっきり意識されます。
地方の中小企業の倒産が特に多いと旅先のテレビで耳に
にしたことを思い出しました。

思いついて近所の100円ショップに行ってみたら、タワシ
もバケツもそれぞれ100円で買えました。日用品はほぼ
ここで揃ってしまうなあと改めて感心し、ホームセンター
のビジネスが難しくなるわけだ、と思いました。

□◆□…優嵐歳時記(1250)…□◆□

  秋怒涛寄せくる中へ岬を下る  優嵐

旅というのは、旅の最中そのものの楽しみと同時に、
準備の期間、さらに旅を終えて振り返りながら経験した
ことのあれこれを反芻する楽しさがあります。

伊勢湾フェリーで伊良湖に渡った朝、岬から海沿いの道
を下って行きました。汀に打ち寄せる波が意外に大きく
さすがに太平洋だと思いました。もっとも、この日は、
沖縄近海に台風が接近しており、その影響でうねりが
出ていたもののようです。

□◆□…優嵐歳時記(1249)…□◆□

  長き夜を友と語りて美味し酒  優嵐

ツーリングの途中、長野県の小布施に泊まった夜、
長野と小布施に住んでいる友人二人と食事をしました。
小布施は北斎や一茶とゆかりが深く、独特の文化を育む
魅力的な町です。

ゆっくりして町の観光もしてみたいところでしたが、
今回はおいしい食べ物とお酒のみを味わいました。
友人が連れて行ってくれたのは、『蔵部』という
酒蔵の一部を改造して作られた和食レストランでした。

新鮮な小布施の食材と日本海の海の幸を使った料理に
そこの酒蔵で造られたお酒をあわせます。店の中央では
竈でご飯が炊かれており、その香りも店の中に漂って
います。話が弾み、楽しいひとときを過ごしました。

□◆□…優嵐歳時記(1248)…□◆□

  旅終えて目覚めし朝の鰯雲  優嵐

オートバイツーリングで家を留守にしていたのは一週間
ほどでしたが、その間に秋がぐんと深まったように
思います。出かける前は半袖だったのに、今朝は長袖の
シャツの上に薄手のスウェットを着ています。

部屋の扇風機が所在なげです。「秋扇」という季語が
ありますが、扇風機も一種の「秋扇」かと感じました。
旅から帰った翌日は、洗濯物を片づけて、通常の生活
リズムへとそろそろと戻っていく時間です。


071014

□◆□…優嵐歳時記(1247)…□◆□

  灯台の蔦紅葉して日本海  優嵐

兵庫県姫路市に戻って来ています。今朝は福井市内から
国道305号に出て海岸線に沿って南へ下りました。
日本海は穏やかでした。車も少なく、自分のペースで
快適に走ることができました。

越前海岸を過ぎ、国道8号に合流すると、トラックに
はさまれながらトンネルの多い道を走りました。
敦賀で気比の松原に立ち寄りました。旅の二日目に
静岡で三保の松原にも行きましたので、日本三大松原
の二つを今回たずねたことになります。

その後、敦賀半島の先端、立石岬まで行きました。
突端に立石岬灯台が立っており、近くには敦賀原発が
あります。半島を横断し、国道162号に入って三方五湖
をかすめて走りました。

国道162号の矢代周辺は海辺の断崖の上につけられた
細い道で、スラロームのような走行が続きました。
小浜市からこの道は京都市に向かい、周山街道
と呼ばれるようになります。

名田庄を過ぎて堀越トンネルを出れば京都府です。
北山杉の中を道はうねりながら進みます。京都市右京区
に入ったところで周山街道と別れ、兵庫県境へ向かい
ました。国道372号に入り天引峠を越えると、あとは
地図が不要な道です。

071013

□◆□…優嵐歳時記(1246)…□◆□

  錦秋のまず御岳に始まれり  優嵐

福井県福井市に来ています。飯田から国道265号で南木曽
に向かいました。朝のラッシュが始まる前に市街を抜け、
妻籠を過ぎ、国道19号に入ると中山道です。大型トラック
の姿が目だつのは、この区間に高速道路がないためです。

JRの中央本線としばらく並走。途中、木曽川の景勝地
寝覚めの床も眺めながら走ります。途中から県道20号に
入り開田高原を目指しました。このころからぐんと青空
が広がり、それに誘われて御岳まで足を伸ばしました。

御岳は紅葉の真っ盛り。ロープウェイを使えば七合目
まで直行することも可能です。乗鞍岳の姿も見ることが
できました。国道361号に出て、三日間滞在した長野県に
名残を惜しみながら、岐阜県境を越えます。

いくつものダム湖を見ながら木曽街道を西へ。高山市街
を過ぎて国道158号に入ると、人家も稀な山間部です。
信号がほとんどなく、道のワインディングのリズムに身を
任せて快調に飛ばします。

途中から県道314号に入りました。斜度12%という強烈な
上り坂を経て、スキー場が並ぶ中を走り、福井県境に
向かう県道127号に入りました。渓流に沿う快適な道で、
県道には思いがけないおいしい道があることをここでも
実感しました。

福井県に入ってしばらく走ると、視界がぐっと開け、
山岳地帯が終わったことを感じました。

071012

このページのトップヘ