優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2007年11月

□◆□…優嵐歳時記(1285)…□◆□

  初冬の街を茜に夕陽落つ  優嵐

最近、毎日のように増位山の頂に行っています。日暮れ
が早くなり、午後はあっという間に夕方になってしまい
ます。まだあと一ヶ月は日が短くなっていくのですが、
午後五時前にはもうライトを点けて走っている車に
出会うころになりました。

山の上から街や田畑、海を眺めるのが好きです。高い
ところから下界を見下ろすと、自分自身の小ささと
自然の大きさを感じられます。日常の生活とまた異なる
視点が得られ、だからいいなと思います。

□◆□…優嵐歳時記(1284)…□◆□

  額づいて祈る人あり冬の夕  優嵐

随願寺の本堂前で熱心に祈っている女性を見かけました。
散策をしている人は多くとも、これほど熱心に祈りを
ささげている人の姿は初めて見ました。お遍路さんの
ような服装で、巡礼をされているのかもしれません。

この世にはいろいろなことがあり、努力でなんとか
できることもあれば、あとはもう祈るしかないという
こともあります。人の力でなんとかできることなのか、
そうではないことなのか、そこを見極めるのが真の知恵
だとどこかで聞いたことがあります。

□◆□…優嵐歳時記(1283)…□◆□

  木枯しのやんで夕焼け鮮やかに  優嵐

昼間は北風が吹いていました。木枯しといえるでしょう。
少し気温が下がりました。灯油を売る巡回車の音楽も
違和感がなくなってきました。

夕方、森へ行くと風で枯枝があちこちに落ちていました。
落葉の堆積も厚くなってきています。梅林では、梅の
一部が剪定されて、すっきりしていました。

風のおかげで空気が澄み、山頂からは神戸市街、六甲山、
丹波の山々まで見えました。まだ風が強く、山頂に
たっている旗竿の赤い旗が風にはためいています。東の
空には白い上弦の月。今日は神無月の九日です。

□◆□…優嵐歳時記(1282)…□◆□

  紅葉散る先のことなどわからない  優嵐

「ケ・セラ・セラ」という歌があります。ヒッチコックの
映画『知りすぎていた男』のなかで、ドリス・デイが
歌い、世界的に大ヒットしました。日本でもペギー葉山の
歌で大ヒットしました。

今日聴いたCDのなかにこの曲が入っていて、歌詞がいい
なあと思いました。♪〜ケ・セラ・セラ なるようになる 
先のことなどわからない〜♪、というサビの部分が特に。
そういう精神でゆったりいきたいものです。

□◆□…優嵐歳時記(1281)…□◆□

  冬めきてさらに色濃き針葉樹  優嵐

どんよりとした曇り空の一日でした。風が少し冷たさを
加え、木の葉を落としていきます。冬らしい寂寥感と
いうのは、真冬よりも、むしろ初冬の今ごろに強く
感じるものです。

真冬になってしまい、落葉も終わってしまうと、逆に
あっけらかんとしてしまいます。落葉樹が葉を落とす中、
常緑樹の緑が目立ちます。冬にも緑を絶やさぬ常緑樹の
姿に、人はまた紅葉する木々とは異なる美を見いだして
きました。

□◆□…優嵐歳時記(1280)…□◆□

  静かなる山寺山茶花咲き初むる  優嵐

生垣の山茶花が咲き始めました。初冬、花が少なくなる
このころから花を咲かせる山茶花は人々の目を楽しませ、
俳諧にも多くとりあげられています。

もともとは白い花だったようですが、現在では園芸種と
して改良され、紅、絞り、八重咲きなどいろいろなもの
があります。

檀家のお寺には本堂の屋根を越えるほどの山茶花の大木が
あり、薄い桃色の花を咲かせます。今頃あの木もいっぱい
花をつけているころでしょう。

071115

□◆□…優嵐歳時記(1279)…□◆□

  ひっそりと咲くこそ良けれ冬桜  優嵐

随願寺の境内の一画に冬桜が咲いています。花はまばら
に枝につき、小ぶりで、春に咲き誇る桜たちに比べると、
なんとも控えめな雰囲気です。しかし、この閑寂味が
冬桜らしいたたずまいともいえます。

このままほそぼそと咲きついで、ソメイヨシノが咲く頃
まで咲きつづけています。ぱーっと咲いてさっさと散って
しまう他の桜とは、このあたりも随分違います。

071114

□◆□…優嵐歳時記(1278)…□◆□

  梅さくら冬紅葉して誰もいず  優嵐

姫路では、今が紅葉の最盛期です。梅も桜も紅葉しますが、
楓や銀杏に比べると、地味です。この二つの木は、花の
時期に注目を浴びますので、それはそれでよし、という
ところなのでしょう。

ウリハダカエデの葉が紅葉のまま散っていたのを一枚
持って帰りました。一枚の葉の赤さの中にも微妙な
グラデーションがあり、葉脈の走り方などをよく見て
みると、二枚と同じ葉はありません。自然の造形の
素晴らしさ、不思議さ、ですね。

071113

□◆□…優嵐歳時記(1277)…□◆□

  通勤の人足早に初しぐれ  優嵐

朝・昼・夕と三度しぐれました。雲の動きに冬らしさを
感じた一日でした。朝、青空が出ていたのに、道路を
青い傘が通りすぎていくのを見て、時雨を知りました。
すぐにあがり日が差してきましたが、お昼前に郵便局
まで行こうと家を出たら再び時雨です。

夕方、オートバイのタイヤ交換をしてもらいに行き、
それを待っている間にまたしぐれてきました。時雨が
あがるともう暗くなり始め、冬が一歩進んだことを感じ
ました。

□◆□…優嵐歳時記(1276)…□◆□

  森の木々染めて冬陽の落ちにけり  優嵐

夕方、自然歩道へ散歩に行きました。山頂からいつもの
ように街を見下ろし、下山しようとしていると、夕陽が
沈んでいくところでした。今の時期なら、増位山から
見える日没は小豆島の方角になります。

雲が茜色になり、やがて森の木々も緋色に染まります。
しばらく立ち止まって見入っていました。日が沈んで
しまうまでのほんのわずかな時間でしたが、夕陽から
賜った貴重な一瞬でした。

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