優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2009年03月

□◆□…優嵐歳時記(1775)…□◆□

  陽は高くつらつら椿影の濃く  優嵐

椿は日本原産、かなり古い時代に中国に渡り、そこから
さらにヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなどに
渡って改良されました。

「椿姫」などでも知られるように、日本をルーツとした花
のうち、世界中で最も愛されているものかもしれません。
品種改良の交配親はヤブツバキとユキツバキで、種としては
同じです。

ユキツバキは本州の積雪地側に多く、姫路近辺の山野に自生
しているのはヤブツバキです。次々と花を咲かせ、樹木の下
にはそのままの姿で落ちた赤い花がいくつも見られます。
「つらつら椿」との季語は花が咲き連なっている様子を
現したものです。

090331

□◆□…優嵐歳時記(1774)…□◆□

  猪の牙の跡かも春の森  優嵐

気温の低い日が続いています。一気に暖かくなると桜の
開花が加速して花の期間が短くなってしまいますから、
少し寒さが続いた方がいいのでしょう。足元だけ暖める
炬燵を出し、花冷えをやり過ごしています。

昨日、森を歩いていると自然歩道沿いの木の幹に真新しい
傷がついているのをみつけました。私の膝くらいの高さの
ところに幾筋かついていて、猪かな、と思いました。

土をあちこち掘り返しており、これはミミズを探して
いるのだそうです。竹林の筍もまだ土の中ですが、この
やわらかいものを掘り出して食べています。

幹の傷は何のためかはわかりませんが、牙を砥いでいる
のかもしれません。傷からその鋭さが想像でき、猪猟で
猟犬が牙で殺されることがあるというのも、これなら
無理ないなと思います。人間でも危ないでしょう。

090330

□◆□…優嵐歳時記(1773)…□◆□

  陽の躍る森に囀り続きけり  優嵐

野鳥たちが繁殖期を迎え、森ではさまざまな囀りが
聞こえるようになっています。最も鮮やかで印象に
残るのはやはりウグイスです。あの澄んだ見事な
囀りは芸術品です。思わず足を止めて聞き入って
しまいます。

ツツピィー、ツツピィーというシジュウカラの囀りも
よく聞こえます。胸にネクタイをしたような模様を
持っています。

そろそろツバメが姿を見せていいころです。随願寺の
駐車場ではコブシが咲き始めています。このところ
花冷えが続いていますが、桜が咲き、ツバメが飛んで
くれば春はクライマックスを迎えます。

090329

□◆□…優嵐歳時記(1772)…□◆□

  ろうそくを灯してお風呂春新月  優嵐

昨夜は旧暦三月一日、弥生の新月でした。だからという
わけでもないのですが、浴室の照明を消し、蝋燭の灯り
のみで入浴しました。

湯気がちらちらとゆらぐ灯りに映えて、それをぼーっと
見ているだけでリラックスできます。使ったのは以前
アイスランドへ行ったときに買った溶岩土で焼いた
キャンドルスタンドです。

入浴するだけならあまりこうこうと明るくない方が
気分が落ち着き、いいものです。

090328

□◆□…優嵐歳時記(1771)…□◆□ 

  少年の素振りは左春休み  優嵐

昨日、『自己評価メソッド』という本を読んでいました。自己評価が安定して高い人は幸福を感じる割合も高いと説き、そのためにどうすればよいかというヒントをあげています。前半は比較的日常的な人間関係などについて語られ、本が進むにつれしだいに哲学的、宗教的な雰囲気を漂わせる内容になっていきます。大変実践的で面白い本でした。

その終り近くに「没頭すること、自分の心を見つめること、謙虚になること」という章がありました。これが自己評価とどんな関係があるのか、と思われるかもしれませんが、読むと、実は基本を支えるものだなあと納得しました。そして、そのうちの「没頭すること」の実践方法として、<一度にひとつのことしかしない>という単純な方法が書いてありました。実はとても奥が深いのですが。

宗教的な修行でも、心理学でも哲学でも、日常の行為を大事にし、意識を集中してそれらに向かい合うように、と勧めています。その行動の目的や結果を考えずに、目の前の行為に集中すれば<フロー>が得られる可能性が高いのです。

忙しい現代人である私たちは、ほとんど常に何かをしながら同時進行で別の何かをしています。ラジオを聴きながら運転する、テレビを見ながら食事をする、音楽プレーヤーを持ち歩いて聴く、電車に乗りながらゲームをする…、数えたらきりがありません。しかし、これではどちらの行為にも集中できません。何かにたどりつく結果や目的にとらわれて<今この瞬間>を取り逃がしています。

実は、この本を読みながら私はYouTubeでZARDの音楽をランダム再生しながらヘッドフォンで聴いていました。ところが、ここを読んでいるときに自動再生が止まってしまいました。自動再生のチェックを外したっけ?といぶかしく思って確認しましたが、チェックは入ったままです。

「あれ?」としばし考えて、「あ、シンクロニシティだ!」と気がつきました。「まずこの瞬間から一度にひとつのことだけをするように」とYouTubeの進行を止めて、<導き>が告げているわけです。本を読むか、音楽を聴くかどちらかひとつにしなさい、と。本当に音楽を味わいたければ、音楽だけに向かい合い、本の内容を真に自分のものにしたければ、本とだけ向き合うように、ということです。

普段から意識して「ただ、何かをする」練習をするように、とこの本は勧めています。ただ歩く。ただ雲を眺める。ただ食器を洗う。ただ雑草をむしる。ただ小鳥の声を聞く。ただ洗濯物をたたむ。ただバスを待つ。ただ呼吸をする。それによって<行為に対する集中力>が高まれば、私たちは驚くほど幸せになれる、というのです。

090327

□◆□…優嵐歳時記(1770)…□◆□

  春風の集いしところ頂は  優嵐

増位山を歩く魅力のひとつは、それほど登らなくても
展望抜群の頂にたどりつけるということです。播州平野、
その間を流れる市川、姫路市街、高砂市から加古川市に
いたる山なみ、播磨灘、そこに浮かぶ家島群島、淡路島、
小豆島などを容易に見ることができます。

さらにいいお天気の日なら、四国、明石海峡大橋の主塔、
六甲山、北播磨の山々、時には大鳴門橋までもが一望の
もとに見渡せます。ここに歴史あるお寺がなければ、
山城が造られていたでしょう。

人間が見晴らしのいい場所を好むのはどういう理由から
でしょうか。敵を発見しやすい、というような進化論的な
理由だけでなく、何かもっと違うものがある気がします。
とても晴れ晴れとした気持ちになりますから。

今は市川の東岸の山で山桜が次々と花を咲かせているのが
楽しめます。増位山の方が少し標高が高く、こちらの
山桜はこれから、というところです。随願寺の境内の
ソメイヨシノの蕾ははちきれんばかりに膨らんできて
います。

090326

□◆□…優嵐歳時記(1769)…□◆□ 

  花冷えに襟立てている少年よ  優嵐

家の前のソメイヨシノがちらほら咲きはじめました。昨日は風があり、気温が低い一日でした。夜になってさらに寒くなりました。花を長持ちさせるにはしばらく寒くなった方がいいでしょう。

ナイターテニスの後、このところ涙もろく困ったのですが、昨夜はそういうこともなく、少し落ち着いてきたか、と思っています。しかし、<導き>には敏感になっています。私は今まで視覚的な人間だと思っていましたし、今も多分イメージは視覚で感じるのが一番得意です。しかし、どうやら導きは聴覚というか<言葉>でもたらされるようです。

心の内側に言葉が浮かんできます。これは目覚めた直後が多いように思います。浮かび上がるように、ひとことやってきます。今までもきっとこういうことはあったのでしょうが、気がつかなかったのです。

昨日、散歩しながら目の前に小さな虫が飛んでいるような感じがしました。何度か振り払いましたが全く効果がありません。もしかすると、飛蚊症になったのかと思いました。ところが、頂上まできて帽子を脱いでよく見てみると、つばに蜘蛛の糸のようなもので小さな虫がぶらさがっていました。

不意に、シンクロニシティだな、と思いました。今経験していることは、飛蚊症のようなものじゃなく、リアルな出来事なんだと教えてくれているようです。知らせは常にあり、それをこちらが受け取れるかどうかにかかっている、そう感じます。


090325

□◆□…優嵐歳時記(1768)…□◆□

  家ごとに土蔵と花と春の宵  優嵐

先日、東京から帰ってくる新幹線の車窓から見た風景です。
お彼岸も過ぎ、日が長くなって、夕暮れどきのゆったりと
した気分は春のこの時期ならではのものです。

混んでいないときの新幹線は大好きです。二人がけ、
三人がけの席をひとりで占領し、本を読んだりうたたねを
したりしながら時おり車外を通り過ぎていく景色に目を
やります。

東海道新幹線に関してはここ数年の間に何度も往復した
ため、ほぼ風景の予測はつくようになりました。
それでも季節によって珍しいものがいろいろ見られます。

それぞれの家に白壁の土蔵があり、庭先には梅や桜、
菜の花、白木蓮などが咲いているといった景観を持つ
集落を見ました。かつてどこにでもあった昔懐かしい
日本の春の風景です。

090324

□◆□…優嵐歳時記(1767)…□◆□ 

  桜咲く自分の弱さに負けないで  優嵐

というわけで、ZARDの4thアルバム『揺れる想い』です。代表曲「負けないで」を収録し、名実ともに彼女の代表作といっていいでしょう。ジャケット写真は淡いブルーパープルを基調としたソフトフォーカスで、右斜め下から撮られているように見えます。

しかし、これ、実は左斜め下からの映像を反転させたものです。よく見るとシャツの襟が左前になっています。メンズとも考えられますが、裏を見ると同じ服装での左横顔の写真が使われています。こちらの襟は右前です。YouTubeを見ていて、彼女の映像は左側からのものの方がかなり多いと気がつきました。

生涯ただ一度のライブツアー『What a beautiful moment 』のDVDもほとんど左斜め上からの映像で制作されています。メディア露出はわずかですから、厳選されたものを使っているでしょう。印刷も凝っていて、通常の4色印刷ではうまくいかなかったため、8色のインクを混ぜて50パターンほどつくり、その中から選んだというこだわりのジャケットです。

「揺れる想い」「君がいない」「In my arms tonight」「負けないで」の4曲のシングルカットが収められ、このうち「君がいない」はシングル発売時はCのキーで歌っていたそうですが、後にその高さが気になり、アルバム収録時には半音下のBバージョンで録り直したという有名なエピソードがあります。とことん作品づくりに妥協しなかった坂井泉水らしいアルバムです。


□◆□…優嵐歳時記(1766)…□◆□

  梅の花終りし雨の梅林を  優嵐

三日ぶりに増位山を歩いてきました。梅林の梅の花は
もうほとんど終りです。一番遅く咲いた白梅の一種が少し
花びらを残しているのみでした。今年の梅の季節は
個人的にいろいろなことがあり、梅は私にとって特別な
花になりそうです。

雨は昼ごろにはほぼあがっていたのですが、午後から
また降っているようです。雨模様の山道はしっとり
落ち着いてそれはそれでいいものです。周りの山で山桜が
しだいに花を咲かせていくさまがよくわかります。

090322

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