優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2010年06月

□◆□…優嵐歳時記(2221)…□◆□

  集落を映して広し植田かな  優嵐

早苗が植えられたあとの田を植田と呼びます。苗が根付き、しだいに背丈が伸びてきました。まだ田水が十分見え、遠くから見ると広がった水田の緑の中に空や家が映りこんでいます。この時期ならではののどかな光景です。

雨は落ちませんでしたが、土曜日は曇って湿気の多い梅雨らしい空模様でした。増位山はモリアオガエルの生息地で、境内の梅林の池や放生池のまわりの木々に泡に包まれた卵が産み付けられているのを見ましたが、蛇ヶ池の周辺の桜や楓にも産卵しているのを見つけました。

カキツバタはほぼ終りです。替わってアヤメ科の最後を飾るハナショウブが蛇ヶ池の奥に咲き始めています。手前の池ではハスが葉を広げており、間もなくハスの開花を楽しめるものと思います。先日見かけたウサギを今日も見ました。わずかの間にすっかり人に慣れたのか、私の姿を見ても全く逃げず、のんびり草を食べ続けていました。


<犠牲者>
この世で一番簡単なのは犠牲者になること
自分が今こういう状態であるのは
誰かのせいと考えること

社会の、政府の、親の、学校の、会社の
それ以外の誰でもいい
自分以外の何ものかのせいで
今自分がこういう境遇になっていると
考えることだ

不平不満をいい愚痴をこぼし
誰かを糾弾する
それは居心地のいいことだ
自分のことは省みなくていいから

けれど人が前に進めるのは
犠牲者意識を手放すことができたあとだ
この世に偶然はなく
自分の状態を選んでいるのは自分自身だと
気づくことができたなら
すべては変わる


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□◆□…優嵐歳時記(2220)…□◆□ 

  海上に雲の湧き出る梅雨晴間   優嵐

梅雨に入るとどんよりとした日が続きますが、その中でふっとそれが途切れ青空が広がる日があります。散歩コースの増位山の頂からは播磨灘が見渡せます。晴れた日中の太陽光線は強く、立ち昇る水蒸気が雲に変わっているのがわかりました。夏、海を旅していると、大海原のうえに雲の峰が連なって生まれているのが見えます。あれを思い出して、真夏は近いなあと思いました。

ここの風景は、海、山、島、水田、川、ある程度の都会の家並み、高架した鉄道、高速道路、ため池といった日本列島をぎゅっとひとところに集めたようなパノラマかもしれません。変化に富んでいて美しい。一日として同じ日はありません。


<理解>
「あの人はこういう人だ」と思い込んでいるものだ
それでわかった気になっている
しかし
ひとりの人間が誰か別の人間を
真に理解することはできない

生まれた時から衣食住をともにした
親子兄弟ですらそうなのだ
何十年もつきあってきて
わかった気になっていて

ところが
何かが大きくズレていたことに気づかされたとき
その驚きは他人の比ではない
人と人が理解しあえるなんて幻想
理解した気になってつきあっているだけ

人が肉体という牢獄に閉じ込められているというのはここだ
自分の視点、考え、思想、歴史、好み
それらのものを通してしか他の何かを見られない
自己の肉体から逃れられない

何も言わなくても気持ちはわかっている
理解しあえている
なんて嘘である
百万言費やしたところで気持ちが本当に
通じたりはしない
誰もが聞きたいことしか聞かないから

そういう幻想にひたっていることに気づかないでいる
それが愚かさの原点


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□◆□…優嵐歳時記(2219)…□◆□

  紫陽花の色増す雨となりにけり   優嵐

アジサイは日本原産の園芸植物です。野生のガクアジサイのうち、装飾花ばかりになったものがアジサイです。日本からヨーロッパに渡り園芸的な改良が重ねられたものが、西洋アジサイとして里帰りして栽培されるようになりました。

アジサイは白いものがしだいに色づいていくことから別名「七変化」ともいわれます。この色彩の変化を司っている要因は複数あり、土壌が酸性だとピンクにアルカリ性だと青になる、とは必ずしもいえないようです。

ご近所の庭のアジサイが日ごとに色づいて来ています。雨がこれほど似合う花というのも他にはなく、春に桜が欠かせないように、梅雨にはやはり紫陽花が欠かせません。


<インスピレーション>
ブルーオーシャン戦略という言葉を聞いたことがある
激しい競争に身を投じるのではなく
目の付け所を変えて
自分が優位に立てる位置を探せという意味だった

誰だってそうしたい
だけどなかなかそうはできない
なぜなら目の付け所を変えることが難しいから

誰かがやってしまった後なら
それは実に簡単に見える
どうしてそんなことに気づかなかったのかと思う

エジソンは「天才とは1%のインスピレーションと99%の努力」だと言った
努力が大事だと解釈している人がいるけれど
エジソンが言いたかったのは
インスピレーションが肝心ということ

インスピレーションこそ司令塔
それなしではどんな努力も無駄骨
いや
インスピレーションに導かれていれば
どんな努力も厭わずにできるのだ


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□◆□…優嵐歳時記(2218)…□◆□

  南中の高度は高き立葵   優嵐

タチアオイは梅雨のころに咲く花ですが、アジサイとは対照的に太陽の輝きを感じさせる花です。ビロードアオイ属のトルコ原産種と東ヨーロッパ原産種との雑種とする説が現在は有力です。日本には薬用として古く中国経由で渡来しました。

園芸用に改良がなされ、花は一重や八重のものもあり、色は赤、ピンク、白、紫、黄色などさまざまです。高さ1〜3mになり、茎は直立します。葉腋についた大輪の花が下から上へと咲き上がっていく様子は独特です。


<生き残る>
人生はスポーツと似ている
最大の課題は生き残ること
そのために
一度そのフィールドを離れると
ばかばかしいようなことを
必死になってやっている

転がるボールを追いかけて走り回ったり
0.01秒の差に一喜一憂する
勝つか負けるか
それで生き残れるかどうかが決まるから

0.01秒速かったからどうなの?
とは誰も聞かない
それは問いかけてはならない質問なのだ
ニヒリズムになってしまうから

何にもならないようなことに
自己を燃焼させ蕩尽する
そこに人生の逆説がある

何のために生き残るのか
われわれは本当はどこから来て
どこへ行こうとしているのか


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□◆□…優嵐歳時記(2217)…□◆□

  湯に入りぬ梅雨の走りを戻り来て   優嵐

近畿地方は13日に梅雨入りした模様との発表がありました。関東甲信越・東北南部も14日に梅雨入りしましたね。「梅雨の走り」あるいは「走り梅雨」とは、梅雨に入る直前に降る雨のことです。そのまま梅雨に入っていくこともあります。今年はそういうパターンになりました。

六月は最も日中の時間の長い時ですが、梅雨の影響があって、それを感じる日が少ないようです。このところ梅雨明けが遅く、八月にまでずれこんで真夏がほとんど無い状態が珍しくなくなっています。今年はどうなるでしょうか。


<梅雨入り>
朝から雨が降っている
日本のもうひとつの「四季」梅雨
鬱陶しいものの代名詞とされているれど
もっとも日本らしい天候でもある

日本は雨の国
長雨はこれ以外にもある
春霖、菜種梅雨、卯の花腐し、秋黴雨

日本語ほど雨に関する語彙が多い言語は
他にないだろう
豊かな雨が緑と作物と文化を育てる

しっとりと優しく
周囲を慮ってしまう日本人の心
これは雨がもたらしたものだ


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□◆□…優嵐歳時記(2216)…□◆□

  若竹の青さや風の通るたび   優嵐

若竹の特徴はそのういういしさです。今年生まれた筍が成長した今年竹、青年期に入ったばかりの竹といえます。背の高さはもう親竹と変わりませんが、緑の色が新鮮で、まだ根元や途中の節に竹の皮を残していたりもします。

増位山の梅林周辺の竹林にも多くの若竹が育っています。遠目に見ると、くすんだ親竹の中に若々しい緑が美しく、はっとします。柔らかく風に揺れ竹の葉の音を送ってくれるのもいいです。

タケは気候が温暖で湿潤なアジアの温帯・熱帯地域に多く分布しています。ヨーロッパ、北アメリカなどにはなく、アジア的な雰囲気を感じさせる植物でしょう。意外にも日本のタケは中国大陸からの帰化植物です。


<若葉>
シロダモの若葉は
柔らかい毛に覆われたピーチ色
そのまま口に含めばシャーベットのように
甘く溶けてしまいそうだ

固い親葉の上に
しどけなくたれさがった格好で現れる
若い者がなんとなく頼りなさそうに見えるのは
どこの世界でもいっしょなのかもしれない


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□◆□…優嵐歳時記(2215)…□◆□

  空深く晴れ大輪の薔薇真紅   優嵐

朝から雨になり、九州全域が梅雨入りしました。近畿地方の梅雨入りも間もなくです。最後の晴天にバラの写真を撮ることができました。他のお宅の庭に咲いているため、みだりに入り込んで撮影するわけにはいきません。柵の外からさっと撮って切り上げます。バラはゴージャスな花ですが、中でも真紅の華麗さは群を抜いています。

この写真のバラ、実際にはもっと深く濃いビロードのような色彩をたたえていました。バラは白、黄色、ピンクなど色の種類が豊富です。青いバラは存在しませんでしたが、バイオテクノロジーを使って、サントリーがオーストラリアのバイオベンチャー企業と共同開発に成功しています。

バラは数々の伝説に彩られ、象徴的な意味を持つ花です。アジアから欧米に分布し、近縁種は200種にも及ぶそうです。バラの原産地がどこかはまだはっきりわかっていないといいます。非常に歴史が古く、人間の文明とともにあらゆるところで愛でられ栽培されてきたのでしょう。


<道具>
文字を書くということに関して
最初にチョークや筆が生まれ
やがて万年筆やサインペンができた

手のストロークを使って文字を描くことが
ずっと続いてきた
文字数の多い日本語にタイプライターは
発達しなかった

ところがワープロが生まれ
ついに文字を書くのではなく打ち込む文化が
日の目を見た

パソコンのキーボードとケータイのキー
今ではストロークよりもキータッチから
多くの文字が生まれている

感情も思考も意志も
キーボードを通して伝えられるように
なってきたのだ


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□◆□…優嵐歳時記(2214)…□◆□ 

  極楽の眠りはそこに睡蓮咲く  優嵐

近所の池にスイレンが咲いています。堰堤で水面が道路からさえぎられるためあまり目だたず、注意していないと見落とすところでした。赤紫系統のものと白のものとが混じって咲いています。スイレンは、スイレン科の多年草(宿根草)です。夏の水生植物の代表的なもので、耐寒性の温帯(耐寒)スイレンと非耐寒性の熱帯スイレンがあり、いずれも土の中の地下茎から長い茎を伸ばし、水面に葉や花を浮かべます。

スイレンとハスはよく似ていますが分類上は別の花です。ハスはハス科の多年草です。これらの見分け方は、葉と花です。スイレンの葉には切り込みがあり、ハスにはありません。また、葉が水から立ち上がるのもハスの特徴です。花はスイレンのほとんどが水面上で咲くのに対し、ハスは水面から高く立ち上がってきます。くわしくはこちらで。

これらの花は両方とも朝に開いて午後には閉じるという性質を持っています。これを三日繰り返すとひとつの花の寿命は終わります。しかし、夏場は次々蕾が出てきますので夏中楽しむことができます。


<退屈>
退屈とは
他者である自分に飽きてしまうことなんだという
自分が嫌になる
自分にうんざりしてしまう

それなのに
この自分を脱ぎ捨ててどこかへ行くことはできない
厄介だなあ
自分が五人くらいいて日ごと夜毎着替えられたら新鮮だろう

そうじゃないね
実は自分というひとりの人間さえ
じっくり味わう努力をしていないのが君だ

ひとりの人間は
ファストフードやジャンクフードみたいなものじゃない
じっくり腰をすえて味わうことを覚えないと
いつまでたってもその妙味はわからない


今日の名言:君と一緒に誰かの悪口を言う者は、別の場所で君の悪口を誰かに言っている。


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□◆□…優嵐歳時記(2213)…□◆□

  静まりて杜若映す水面かな   優嵐

増位山の放生池のかたわらにカキツバタが咲いています。アヤメ科の中では最も古くから親しまれており、『万葉集』にも七首詠まれています。「杜若」あるいは「燕子花」との漢字があてられ、デザインの意匠としても数多く使われています。カキツバタは水辺が好きで、水深10cmほどの浅いところに群生します。水に映っている姿はすっきりと美しく涼しげです。

ここ数日晴天が続いています。六月は最も日差しが強いころですから、快晴の真昼の戸外はまぶしく、梅雨前の青空を楽しんでいます。まだ湿気があまりないため、風が心地よく、歩いていると汗はかきますが、真夏のようなじっとりとした暑さではありません。来週の天気予報には雨マークが並んでいます。そろそろ梅雨入りです。


<未来予測>
未来予測はできない
すべてのものが変わっていき
変化が変化を呼び起こして
幾何級数的に広がっていくから
乱反射をおこなう無数のプリズムのようなもの

人間がおこなう未来予測は
ひとつの事象が今の条件のまま直線的に進むという前提から
思考の枠を拡げることができない
変数もそれによって生まれる変化も
現在は存在していないのだから
未来予測の公式が正しいものになることは
永遠にない

勃興と滅亡が変数を大きく変える
恐竜、ローマ帝国、キリスト教、ソビエト連邦、インターネット…
誰も予測できないことが歴史を進めていく
神のみぞ知る
だから面白いといえないか



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□◆□…優嵐歳時記(2212)…□◆□

  発見はいつも新鮮栗の花   優嵐

栗の花のシーズンです。増位山の境内の放生池のほとりにまだ若い栗の木が一本生えており、花をつけています。クリ、アベマキ、クヌギは葉がよく似ており、見分けるには樹皮を見るのがいいと思います。アベマキはコルクが発達していて、一度覚えると忘れません。

クリは樹皮の裂け目が最も浅く、今日見たものも一瞬クヌギかと考えたのですが、調べるとクリでした。あの花の香りはクリだろうなあ、と思ってはいたのですが。俳句を詠むようになって、植物や動物の名前をたくさん覚えました。図鑑を買い揃えて気になった花や木、虫や鳥を調べていくうちに身近な動植物のかなりの名前を覚え、見分けられるようになりました。

こうなると楽しいです。自然の中でそれらに出会うたびに「あ、○○だ」とひとりで名前を確認してうれしくなります。季節の移り変わりに従ってそれらが咲き始めたりやってきたりするのを心待ちにできます。そのシーズン初めてそれらに会うと、ときめきますね。


<名前>
名前はその存在の象徴
その存在を特定し
心の中に居場所を与える
そのためのもの

無関心である間はすべてはひとくくり
けれど
名もない花も名もない虫もいない
私に私の名前があり
あなたにあなたの名前がある
その名を呼ばれるとき
そこにスポットライトがあたる

call my name
call your name
そのときつながりが生まれる


今日の名言:他人が君のことをどう思っているかなどどうでもいい。いちばん大切なのは、君が君の事をどう思っているかだ。


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