優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2011年02月

□◆□…優嵐歳時記(2474)…□◆□

  頂に初蝶と会う真昼かな   優嵐

気温があがり、山を歩いていると汗ばむほどでした。すぐに上着が不要になるかもしれません。増位山頂で今シーズン初めて蝶に会いました。これを季語では「初蝶」といいます。ヒョウモンチョウの一種とみられ、一匹だけひらひらとやってきて、地面にとまりました。本格的な春の使者です。

坂井泉水さんの肖像画第10作です。2004年のライブツアー時の写真と思われるものをもとにしています。今回初めてキャンバス(330×260mm)に描きました。


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すでに『優嵐スケッチブック』で何度か試した水性顔料マーカーの三菱uniプロッキー・ツインPM-150RT(太・細)を使い、さらにこの絵では髪の部分の描写に同じプロッキーのPM-120T(細・極細)を使っています。

このタイプ、同じ「細」とあっても線描の太さが異なり、150RTのものは1.2〜1.8mm、120Tは0.9mmの描線が得られます。150RTは手加減で描線の強弱をつけることができ、重宝します。彩色にはPILOTクレオロールをまず下塗りで使用し、その後ぺんてるくれよん、サクラクレパスを使っています。

こうしたオイルパステル類は乾燥しない画材なので、描き終わったあと、フィキサチーフで定着させる必要があります。そのため、油性のマーカーは使えません。この三菱uniプロッキーは乾燥が速く、直後に練り消しを使ってもこすれることがありません。濃くはっきりとした描線が得られるのも素晴らしい。

キャンバスに描く利点は、オイルパステルがはみ出ても練り消しで修整できるということです。画面が頑丈なため、もっといろいろなことができそうです。オイルパステルの面白さは、紙以外のものにも描けることだと気づきました。キャンバス以外にも描けそうなものがあるので、それもそのうち試してみようと思っています。


<ふとした瞬間に>
絵を再開してよかったと思うのは
自分の枠に気づく機会が増えたこと
それはほんのささいなことなのだけれど

何かをやっていて
あ、こんなやり方もあるじゃないかと
ふと気づく瞬間が増えたということ

なんだなんだ
こうすればよかったんじゃないか
こんなことにも気づかなかったなんて
その瞬間は思わず笑いがこみ上げてくる

自分はわかっていると思っている
自分は知恵ある存在だと思っている

いえいえいえ
めっそうもない
そのようなことはありませぬ
そのことを教えられる瞬間


□◆□…優嵐歳時記(2473)…□◆□ 

  春浅しカフェオレボウルを買い求む   優嵐

日が長くなってきたと実感します。晩秋から冬にかけては午後になると日差しが部屋の奥深くまで差し込んでいましたが、今はその角度が浅くなっています。もう少しすると、日中でも庇にさえぎられるようになり、そうなると窓を開けて風を取り込む季節がやってきます。

坂井泉水さんの月命日です。ZARDはこの2月10日でデビュー20周年を迎えました。それを記念したCDや写真集も発売されているようです。私は亡くなってからいろいろ聴くようになったので、最初からキャリア全体を通して聴くことができ、ポピュラーミュージックのアーティストにしては珍しい接し方になりました。

今日取り上げるのは四枚目のシングル『眠れない夜を抱いて』(92.8.5)です。デビューシングルの『Good-bye My Loneliness』(91.2.10)以来、久しぶりにオリコン8位の最高位を記録しました。この発売直後にZARDとして初めてテレビに出演して歌っています。ZARDのテレビ出演は、ここから『負けないで』(93.1.27)発売直後の翌93年2月5日まで、わずか半年間の五回だけです。

眠れない夜を抱いて



この間に三枚目のオリジナルアルバム『HOLD ME』(92.9.2)を発表しています。このアルバムはオリコン2位の最高位を記録し、ZARDが本格的に知られるようになったアルバムではないか、と思います。視線をはずした微妙な角度の写真を使い、その後のZARDのイメージを決定付けた、映像の上でも画期的なアルバムだといえるでしょう。

『負けないで』でブレイクした、というのが一般的な印象ですが、すでにその布石はここにありました。テレビ出演がよかったというよりも、実はそれでテレビ向きではないということがはっきりわかり、違う道を探った。そのとき、写真の方向性も見えたのです。

ZARDのアートディレクターの鈴木謙一さんが『きっと忘れない---ZARD OFFICIAL BOOK』の中で、スチール写真での転機は『HOLD ME』のころにあり、『眠れない夜を抱いて』などに使った写真の撮影時に、何かこうすごく見えた、と語っておられます。坂井泉水さんは、カメラを向けられると意識して表情が硬くなってしまう一方、自然な表情には不思議に人をひきつけるものがありました。そしてそれは終生変わらなかったといいます。

欠点と利点は表裏一体だとよく言われますが、これなどその典型だと感じます。もし人前でのパフォーマンスがうまく、自在に語りを駆使できるような人だったとしたら、あのような写真はなかったし、ZARD自身が全く違うアーティストになっていたでしょう。



□◆□…優嵐歳時記(2472)…□◆□

  枝垂れ梅しだれて滴落としけり   優嵐

木曜日にはお昼過ぎに時雨がありました。明るい春の時雨です。増位山駐車場の入口にある枝垂れ梅が八分咲きです。いつも別のところを通っていたので、気がつきませんでした。

金曜日に境内の梅林へ行ったら、かたわらでヤブツバキが咲き始めていました。梅は開花が進み、最初に咲き始めた紅梅は八分咲きです。暖かくなり、上着を中綿の無いものに変えました。間もなく二月は終りです。すぐに日中の気温は20度を越えるようになるでしょう。


<目白>
一本の白梅の花に動きがあった
近づいてみると
目白が盛んに花の間を行き来している

虻の来訪は密やかだが
ずっと大きな目白が動き回ると
花々も枝もあちこちで揺れる

あわただしく白梅を回った目白は
つづいて隣の紅梅へさらにその隣へ

梅が告げる百花の始まり
虫も鳥も大忙しの季節


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□◆□…優嵐歳時記(2471)…□◆□ 

  また戻りくるなり春の眠りより   優嵐

「春眠」は『唐詩選』の中の孟浩然の詩「春眠暁を覚えず、処々に啼鳥を聞く、夜来風雨の声、花落つること知んぬ多少ぞ」の起句から由来した季語です。『唐詩選』は江戸時代初期に渡来し、武士階級の漢詩愛好使者に広まりました。「春眠暁を覚えず」の起句は実感を伴って庶民の間にも広まっていきました。

最近朝方にかなり複雑な夢を見ています。夢を比較的よく覚えている方だと思いますが、それでも覚えきれないほど長く複雑な夢で、あれは何なんだろうと目が覚めるたびに思います。意識は眠っている間は本来の姿に戻っているのだそうです。つまり、肉体の方が仮の姿というわけです。

コナン・ドイルはそれを「潜水服を着て海底に潜っている」と形容しました。とすると、目が覚めたとたん、再び潜水服を着て海底作業に従事するために起きだすということになります。


<色>
七十二色のクレパスを広げて絵を描く
どれくらいの色数が絵を描くのに適当だろう
四百色、五百色というパステルや色鉛筆もある

画家が何を追求するかにもよるが
しょせん人間の感覚には及ぶべくもない
初夏の山へ行ってみれば
緑だけでどれほど多くの種類があるかわかる
それを人間の目は確実にとらえる

絵は写真ではないのだから
約束事としての色彩をそこにおけばいい
見た人がそこから想像を広げ
絵の中にその人だけの絵を見る
それがいい絵というもの


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□◆□…優嵐歳時記(2470)…□◆□

  囀りの群れ来て木々を渡りゆく   優嵐

そろそろ野鳥の繁殖シーズンです。先日はエナガの群れが囀りながら飛ぶのに会いました。昨日は縄張り争いをしていると見られるホオジロが、数羽あわただしく飛ぶのに会いました。もうすぐウグイスの初音も聞かれるでしょう。梅がかなり開いてきて、梅林で人に会うことも増えました。

家ではもっぱら絵を描いています。描き方の参考に絵の技法書を読むこともあります。いろいろ読んで、絵の方法は全く違うのにふとした拍子にヒントをもらうことがあり、おもしろいものだと思います。


<価値ある仕事>
ほめて育てなさいと最近流行の育児書が言う
もっともなことに思える
子どもの努力や成果を認めることは大切だ

しかしその言葉の裏側に
誰かが認めてくれて初めてものごとは価値がある
という思い込みの罠が潜んでいないだろうか

認めて欲しいと渇望し
それに依存しているため
人を喜ばそうとするばかりで
自分自身を知る機会を失っていないだろうか

生きることの意味は
誰かに認めてもらうことではない
唯一価値のある仕事
私たちがこの世でなすべき仕事は
自己の内側でなされる仕事だけだ

人生は学ぶための場である
誰かに何かを証明する場ではない


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□◆□…優嵐歳時記(2469)…□◆□

  春めきて南北の甍光りおり  優嵐

「春めく」とは、気候や気配が何となく春らしくなってくることを言います。火曜日の日中は16度まで気温があがり、閉めきって日向に停めていた車では少し窓を開けようかという気分になるほどでした。増位山の頂から見える市街地の屋根からは陽炎が立ち昇っているのか、ゆらゆらと揺れて見えました。

友人のブログで、YouTubeにアップされているこんな映像を紹介していました。ご存知の方もあるかもしれません。このシリーズ、以前に一度どこかで目にして、面白いことを考える人がいるものだと思いました。しかし、今作では、ひとつ工夫が入っており、「ああ、いいなあ、人間はいいもんなんだなあ」という気持ちになりました。




<眠り姫>
「眠り姫」の童話は
ものごとには時期があることを教えている
百年の眠りについたお姫様が目覚めるには
百年の歳月が必要

三十年や五十年では茨は道を開かない
百年たってやってきた王子は
茨に導かれるように
お姫様の側にたどりついた

もし適切な時期であれば
道は開けるだろう
まだその時期が来ていないのなら
ものごとは進まない

どれほど抗おうと茨に傷つくだけ
時の神が示す印を見て
時期を待つことが必要だ

□◆□…優嵐歳時記(2468)…□◆□

  陽に透けし紅梅の色鮮やかに   優嵐

暖かくなってきました。夜はまだ冷えますが、日中の気温は上がり、山を歩いていると、これまでの服装では汗ばんできます。それほどせっせと歩くわけではなく、のんびりゆったりと外気を楽しむ感覚で歩きます。気温があがってきたので、週末は山歩きの方や梅や野鳥の撮影にこられている方に何人も会いましたが、平日は静かです。

山頂に座っていると、見る景色すべてが春めいてきているのがわかり、のどかな気持ちになります。気温が低い間は身体のどこかが固く引き締まっています。それが知らずにほわっとゆるんでくる、そんな感覚があり、春だなあと思います。


<循環するもの>
梅林の紅梅に小さな虻が来ていた
咲いている花のひとつひとつを訪問している
虻は開花を待っていたし
花たちも虻を待っていた

自然界は弱肉強食というよりは
お互いもちつもたれつの
協力関係で成り立っている

協力関係の輪が相互に繋がりあい
大きな生命圏を形成している
何かが強くて何かが弱いということはない

草食動物を食べる肉食動物は
同時に草食動物に支えられている
水が循環するように
それらの間をいのちが循環してゆく


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□◆□…優嵐歳時記(2467)…□◆□

  折り畳み椅子の背固き多喜二の忌   優嵐

20日は小林多喜二の忌日でした。多喜二は日本のプロレタリア文学を代表する作家であり、非合法であった日本共産党に入党して活動していました。1933年2月20日、スパイの手引きで特高警察に逮捕され、拷問によってその日のうちに築地警察署内で虐殺されています。満29歳と4ヶ月でした。

ワーキングプアの問題などから近年、『蟹工船』が注目を集め、新潮文庫の『蟹工船・党生活者』が50万部以上のベストセラーになったほか、09年には映画化もされています。


<じっと見ること>
もし自分が何ものかを知りたければ
誰かに教えを乞うたり
書物を読んだりする必要はない

日々自分の内側に沸き起こってくるものを
じっと観察していればいい

立派な人間になろうとして
何か目標をたてることは
逆に自分をごまかしてしまう
自我は巧妙だから

何も求めずそこにあるものを見ること
ただそれだけでいい
あなたの内側には
すべてを見出す力がすでに存在している


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□◆□…優嵐歳時記(2466)…□◆□

  薄き陽の竹林にさす雨水かな  優嵐

雨水(うすい)の昨日は時おり陽がさすぼんやりとしたお天気でした。春らしい空模様といえるかもしれません。それでも二時間ばかり椅子に座って絵を描いていると、すっかり身体が冷えてしまいました。こたつしか暖房がないのです。先日、立って生活する、とここに書いたのですが、その後寒の戻りがあり、こたつ生活を続けていました。立ち生活はもう少し暖かくなってから、本格的にやろうと思います。

色鉛筆やオイルパステルといった道具で絵を描くことの利点は、いつでも途中でやめられるし再開できるということです。寒いなと思ったら描きかけの絵はそのままにして、コーヒーでも入れてこたつで温まることができます。気分が変わったら散歩に行って、帰ってきたら即座に絵を再開できます。これは意外に大きなアドバンテージです。

<じゃがべー>
じゃがいもとベーコンとたまねぎを
スライスして鍋にしく
そこへひたひたになるほど牛乳と水を半々に
コンソメを入れて塩コショウを少々

煮立ったら
火を止めて真空調理鍋に入れる

あとは好きなことをして
夕食ができるあがるのを待とう
今夜は厚揚げとまいたけも加えて豪華
あ、そうそう
じゃがいもはかぼちゃでもOK


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□◆□…優嵐歳時記(2465)…□◆□

  春の山昨日の雪を踏み歩く   優嵐

今日は二十四節気の「雨水(うすい)」です。立春後の十五日目にあたります。時候としては、「気雪散じて水と為る」とも「土脈潤起(どみゃくうるおいおこる)」ともいわれ、雪が雨に変わり、積もった雪が溶けて土が潤い始める頃です。木曜日の夜にかなりまとまった雨が降り、山へ行ってみると、残っていた雪はすっかりなくなっていました。

このところ毎日絵を描いています。子どものころは絵が大好きで、小学生時代までは毎日絵を描いていたのですが、それ以来のことかもしれません。絵を描くのがこんなに楽しかったとは。アウトドアや旅行への興味が薄れたのは、絵を描くことへの導入部だったかもしれない、と思っています。


<視点を変えて>
ある状況である画材を使い
あまりうまくいかなかったとする
それでその画材を諦めてしまうとしたら
ちょっともったいない
状況が少し変わると意外に使えることがある

大雑把すぎると思っていたものが
力強い色彩を生み出してくれたり
別のものとの組み合わせで
新鮮な効果を発揮してくれたりする

画材だと思っていなかったもののなかにも
画材としての力を持っているものがある

何をどのように使うか
何を画材だと考えるか
そこで視点の転換をしてみよう


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