優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2011年02月

□◆□…優嵐歳時記(2464)…□◆□

   薄氷に真昼の光明るく差す   優嵐

薄氷(うすらひ)とは、春先のごく薄く張る氷、または解け残った薄い氷を意味します。万葉時代からある古い言葉です。火曜日に増位山の放生池に行ってみると、半分氷が残っていました。立つ位置によって太陽の光の反射が変わり、周りの木々からは溶けた雪がときどき水面に落ちることもあって、微妙な美しさでした。

水曜日はいいお天気でしたが、木曜はお天気が崩れました。周期的にお天気が変化するようになるのも春らしいことです。午後六時近くなってもまだ明るさが残っているようになり、日が長くなっています。


<違和感>
掌を合わせて指を組んでみる
どちらの親指が上にくるだろう

その指をほどいて
反対の親指が上にくるように組みなおしてみる
指がずれているような感覚があるだろう

腕組みをしてみる
どちらの腕が上にくるだろう

その腕をほどいて
反対の腕が上にくるように組みなおしてみる
よく考えないと組めないのではないか

たった二本の腕の些細な動作にさえ
こんな違いが生まれる
どちらが正しいわけでも間違っているわけでもない
ただ逆のものには違和感を覚えるだけ


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□◆□…優嵐歳時記(2463)…□◆□

  紅さなお冴えて明るき雪の梅   優嵐

数日ぶりに青空らしい青空が戻ってきました。光が一段明るくなっているのに驚きました。今週の土曜日(19日)は、二十四節気の「雨水」ですから、春が一歩踏み出している、そんな感覚を覚えました。

梅林にはまだ少し雪が残っていました。八重の紅梅、普通の紅梅、白梅と咲いています。周囲が森と竹林に囲まれており、日がよく当たるところから咲き始めているようです。この森と竹林との取り合わせがなんともいい感じで、南からの日差しを受けるお昼時には、東屋に座ってしばらくぼんやり竹林を眺めているのが好きです。

竹の揺れ具合というのは他の植物にはない独得のリズムとゆらぎがあり、焚火や打ち寄せる波を眺めている感覚に近いものがあります。何か瞑想状態に誘われる、とでも言えばいいでしょうか。


<巡る季節>
ようやくわかった
ものごとはただ起こる
出来事にいいとか悪いとかはない
そのことを人間はなかなか理解できない

倫理や道徳や損得やその他なんでもいい
それにさまざまなレッテルを貼るのは人間の都合
そしてそのために苦しむ
自分で自分の首を締めている

起こる出来事はただ起こるままにしておけばよい
起こるべきだから起きている
それは季節が巡るようなもの


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□◆□…優嵐歳時記(2462)…□◆□

  雪溶ける音のにぎやか春の森   優嵐

バレンタインデーは思わぬ雪となりました。15日のお昼ごろに、増位山へ行ってみると、やはり市街地より雪の量は多く、場所によっては10cmほど積もっていました。ちょうど日差しで雪が溶け出したところで、森を歩いていると枝から雪がすべり落ちたり、雫になってしたたり落ちたりする音が響いていました。

梅林へ行ってみると、紅梅に雪が残っていました。梅の花に凛とした気高さを感じるのはこんなときです。新雪を踏んであちこち見てまわりました。姫路で雪と紅梅のとりあわせを見る機会は、そう多くないと思います。


<問い>
自分はわかっていなかったんだと
気づくのはすばらしいことだ
何が問題だったのか見えるということだから

わかったつもりでいると
問いをたてることができない

解答を探すよりも
正しく問いをたてること
よき問いは解答よりも時には価値がある


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□◆□…優嵐歳時記(2461)…□◆□

  春雪に包まれ静かに絵を描きぬ   優嵐

お昼ごろから降り始めた雪が本格的なものになりました。このまま夜になれば明日の朝は凍り、また車が渋滞するでしょう。二月に雪が降ることはありますが、日中に降りだした雪が積もるのは姫路では珍しいことです。

お昼前に増位山へ散歩に行き、午後は部屋にいました。絵を描いていて、外が静かなことに気づき窓を開けてみると、雪が積もっていました。出歩く人も減るのでしょうが、雪が音を吸い込む効果が大きいでしょう。


<画材>
絵を描いていると
画材をいろいろ試してみたくなる
もうちょっとここがこうであればいいのに
そう考えて別の画材を探す

うまくいくときもあれば
そうでないこともある

その画材の至らなさを嘆くより
その画材に適した描き方をした方がいい

ないものねだりではなく
よいところを見つけて活かす
それが描き手のすること


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□◆□…優嵐歳時記(2460)…□◆□ 

  淡雪のふわりふわりと頂に   優嵐

寒の戻りが続いています。昨秋は長く厳しい残暑でした。同じように余寒も長いのでしょうか。それでも梅は着実に開花の数を増やしています。随願寺の梅林では、最初に咲き始めた八重の紅梅に続き、やや薄い色の八重の紅梅、さらに白梅も咲き始めました。膨らむ蕾は数知れずです。

先日、フクヤンさんからご紹介いただいた北宋の詩人・梅尭臣の本を図書館で借りてきました。同時に『心を癒やす「漢詩」の味わい』という本も借りてきました。こちらは李白、杜甫といった最もよく知られている詩人たちの代表作を紹介した新書です。

ざっと見て、高校時代の漢文を思い出しました。なつかしい、というか、漢文を退屈だと思っていましたが、あのころ読み下し文で覚えた詩は今でもある程度朗誦できるものです。李白の『黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る』など、とてもいいなあと思いました。


<ここにいる>
この世で最も難しいことは
「ここにいる」こと
あなたの身体ではない
あなたの心が「ここにいる」こと

あなたの心は常にさまよっている
午前中はお昼ごはんのことを考え
お昼ごはんのときは
午後からのことを考える

そうでないならば
お昼ごはんには午前中のことを考え
夕ごはんのときには午後のことを考えているだろう

あなたの心がいるのは常に未来か過去
ここにいることができない
嘘だと思うなら心をよく観察してごらん

観察を始めたら心はここに戻ってくるよ
あなたが唯一生きられる
今ここというところへ


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□◆□…優嵐歳時記(2459)…□◆□ 

  細やかに二月の海へ雪の降る  優嵐

土曜日も雪がちらほらと舞いました。太平洋側では、真冬よりもむしろ春先に雪が降ることが多いようです。お昼前に小雨が降り、それがいったんあがって散歩に出たところ、今度は雪になりました。すぐにやんでしまう淡雪でした。

金曜日は、JRに乗って姫路を出たときは雪がやんでいたのに、明石あたりから急に粉雪が降り始め、明石海峡大橋はぼんやりとしたシルエットでした。須磨海岸の穏かな海に雪が降っています。毎月一度ここを通り、四季の海を眺めて、必ず一句は浮かんできますので、ありがたい場所です。

俳句を詠まれる人はそれぞれの詠み方があると思います。私の場合は、家の中にいてはほとんど句は降りてきません。俳句は「作る」というより、どこかから不意に「やってくる」感じのものです。その点で、こういうエッセイなどとは生まれ方が違うものだなあと思います。自由詩はエッセイと俳句の間くらいの雰囲気です。


<心躍るとき>
アイデアを思いついたとき
アイデアが展開しそうなとき
アイデアが実現しそうなとき

ひらめいて
道筋が見えて
そうだそうに違いないと
どこかで囁く声が聞こえる

こんなにわくわくする瞬間はない
人はお金や名誉や成果や何らかの結果に
心躍らせるのではない

人生は結果ではなく過程である
それはどんなときも真実


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□◆□…優嵐歳時記(2458)…□◆□ 

  棕櫚の葉へ降り続きたる春の雪  優嵐

建国記念日は雪になりました。アートワークのために大阪へ行きましたが、姫路よりも大阪の方が雪が多く驚きました。姫路は朝のうちに雪がやんでいたのに、明石あたりから雪が降り始め大阪も雪の中でした。大阪中心部でのこの雪はかなり珍しいことだそうです。

今日も先月から始まっている「バイオグラフィー」の発表でした。その前に前回の振り返りを行いました。同じ発表を聞いても、それぞれの人によって受け取り方は随分違うものだと驚きます。また、前もってこちらの心に何らかの構えがあると、そこにとらわれてしまいがちだということもわかりました。

こういう気づきがあるので、グループで何かを行うというのは有効なのです。ひとりで考えていたのではわからないことに気づくことができるのは、他の誰かを鏡にして自分の姿を見ることができるからです。そこで見えるのはある意味ですべて自分自身だと言えます。

雪で参加者のみなさんの出足が遅くなったため、先にランチをすませて発表は午後からになりました。ランチはいつもこの近くにあるイタリア料理店「オステリア・アランチャ」で取ります。千円でスープ、パスタ、パン、デザート、ドリンクがいただけます。安くておいしく、アートワークに来るといつもここに行っています。今日も雪であったにもかかわらず、店内はお昼時には満席でした。

今日の発表はお二人。ターシャ・テューダー(92歳没)、パウル・クレー(60歳没)でした。バイオグラフィーは、そのアーティストの生涯を追いますが、年表を作るのが目的ではなく、その生涯を鏡に発表者自身に気づきをもたらすのが目的です。その人にとってのターシャ・テューダーであり、パウル・
クレーなのです。


<共鳴>
親子、兄弟姉妹、友人、恋人、配偶者
そういう関係は私たちに大きな影響を与える

しかしそれと同時に
いやもしかしたらそれ以上に
大きな影響を与える存在がある

アーティストという存在
彼らとはこの世で実際に会うことはないかもしれない
けれど
彼らは作品にその魂を残してくれている

その魂がそれに触れた人の魂に共振を起こす
音叉が共鳴するように


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□◆□…優嵐歳時記(2457)…□◆□ 【梅】

  昨日見し梅の蕾が今日開く   優嵐

気温が下がっています。木曜は一日曇って気温があがらず、午後からさらに冷えてきました。天気予報では夜に雪のマークが出ていますので、朝は積雪かもしれません。二月はときによると真冬より気温が下がり、そのシーズンの最低気温を更新することもあります。

それでも梅は確実に開花しています。固い蕾がしだいに膨らんで、紅梅であれば赤い部分が大きくなります。このころはまだ濃い紅色をしていますが、しだいに膨らみの度合いが増してくると、色が淡くなってきます。そのうち鱗片が後退し、まるで握りしめた赤ん坊の拳のように蕾が丸く大きくなります。

開いた花びらの間からおしべの先がのぞくようになると、翌日にはぱんとはじけたように開花しています。梅は桜と同じバラ科です。花そのものの姿はよく似ていますが、違いはその香りです。桜には香りがほとんどないのに比べ、梅は「梅が香」という季語があるほどで、その香りは詩歌に詠まれ、多くの人に愛でられてきました。


<手を放せ>
苦悩から抜け出せなくなっている人は

つかみ取りの箱から
手を抜けなくなっている人と同じ
握っているものを手放せば手は抜ける

あなたをそこにつなぎとめているのは
あなた自身の握りしめた拳


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□◆□…優嵐歳時記(2456)…□◆□

  海に降る陽は輝きて冴返る   優嵐

「冴返る」とは、春先に少し暖かくなりそうな気配があったかと思うと、再び冬の寒さがぶり返すことです。ためらいがちに歩むように春は少しずつ少しずつ進みます。その感覚を表した季語です。

火曜日の夜は雨になりました。翌朝、雨があがったあとは少し風が出て気温が下がりました。立春前から霞がかかってずっと見えなかった播磨灘でしたが、水曜日はくっきりと見渡せました。穏かな海に日の光が反射していました。それはもう冬のものではなく、確かに春と思える日差しでした。

増位山随願寺では11日に追儺会が行われ、境内では護摩が焚かれます。その準備が整い、雨を除けるブルーシートに包まれていました。周囲には竹がたてられ、その内側はいわば聖域になるのでしょう。


<開く扉>
人生は部屋がたくさんある大きな御屋敷
きみは招待を受けてそこにいる
最初はおずおずと部屋に入っていく

そのうちに次の部屋への扉が開く
がらんとした部屋だったり
豪華な調度に囲まれていたり
音楽が鳴っていたり
倉庫や台所かもしれない

しだいに慣れたきみは自分で扉を開け始める
次の部屋そしてまた次の部屋へと

あるとき開かない扉に出会う
今まで開いてあたり前だった扉が
きみを拒絶する

驚いたきみは叫びわめき罵る
扉を叩き蹴り体当たりをする
すべては無駄
ぴたりと閉ざされた扉はびくともしない

扉から一歩下がり二歩下がり
周囲を見回してみよう
その部屋には必ずあるはずだ
他のすでに開いている扉が

屋敷の主は示している
きみが次にどの部屋へ進むべきなのかを
扉がひとつだけということはない
閉じられた扉をにらんでいるのではなく
開けられた扉を探そう


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□◆□…優嵐歳時記(2455)…□◆□

  末黒野に雨の近づく気配あり   優嵐

末黒野(すぐろの)とは、早春に枯木や枯草を焼いた跡が黒く残っている野のことです。芽立ちを促したり、焼いた後の灰が肥料になります。ずっと晴天が続いていましたが、昨日は午後から少しずつ曇り、日が落ちてから雨になりました。雨に春を感じます。

増位山の西尾根にある高圧線鉄塔の建て替え工事がおこなわれるらしく、ヘリコプターで機材が運ばれていました。考えてみれば全国各地の山に建っている鉄塔は、すべてこういう形で工事が行われたのであり、凄いものだなと思いました。しかも永続的にメインテナンスをし、定期的に建て替える必要があります。全国でいったい何本の鉄塔があるのでしょうか。


<スケッチブック>
絵を描き始めたときはA4を中心に描いていた
そのころB4の画面はとても大きく感じられた

はじめてF6に描いたとき
その大きさにとまどった

F6のスケッチブックを一冊描き終え
いまではそれが日常サイズになっている

B4のスケッチブックはやや小さく
A4はとても小さく感じる

少しずつ少しずつ世界が広がる
歩き始めた子どもの世界が広がっていくように


※スケッチブックのサイズ
F6(407×320mm)
B4(352×251mm)
A4(287×202mm)



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