優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2011年06月

□◆□…優嵐歳時記(2586)…□◆□ 

  海峡は梅雨の深さに横たわる   優嵐

日曜日はアートワークで大阪に行っていました。ほぼ一日どんよりとした梅雨空が広がっていました。アートワークの内容について、だんだんこういうブログで簡単には伝えられない感じになってきました。なんというか、言葉にしにくいというか…。

秘密とかそういう意味ではなく、実際にワークをしていない人に言葉でうまく伝えられない感じになってきたなあと思っています。だから、ワークを行う意味があるとも思います。本で読んだり人の話を聞いただけではわからない何かがそこにありますから。いわくいいがたいもの、と言いますか。

そんなわけで、ワークのことはひとまず横においておきます。アートワークが終わったあと、心斎橋の東急ハンズまで歩いていって4mm厚さのMDFボードを買いました。この三尺ものを450mm×300mmの板に十二等分してもらいました。シナベニアなら近所でも買えますが、とのこを塗る手間が要らない分、MDFボードはひと手間省けます。

ボードそのものとカット代をあわせて一枚150円ほどですから、それほど高価なものでもありません。この大きさだと、持ち運ぶにも描くにも今はほどよいサイズです。

IMG_1153<紫陽花>
ビル街を歩いていくと
紫陽花が色づいて迎えてくれる
水色、紫、藍、ピンク
梅雨のどんよりとした雲の下が
そこだけ明るく見える

恐らく梅雨空の下だからこそ
紫陽花の色が似合うのだろう
ここにある花は紫陽花でなければならない

梅でも桜でもひまわりでも菊でもだめだ
紫陽花こそがふさわしい
花は花だけで美しいのではなく
その花にふさわしい舞台があって
いっそう輝く


□◆□…優嵐歳時記(2585)…□◆□ 

  浮葉みな昨夜(ゆうべ)の雨を宿したり  優嵐

いまの時期、蓮の根茎から出た若葉が水面に浮かびます。「浮葉」とはその蓮の若葉をさす季語です。増位山の蛇ヶ池で蓮の葉が広がりつつあります。はじめの葉は水面にはりついていますが、このところ出ている大形の葉は左右から巻いており、水の上に高く抜きん出て開き、真夏の太陽の下でさらに大きく育ちます。

現在、通常で使っているブラウザはFirefoxです。以前はIEだったのですが、一時ワクチンソフトとの相性が悪く、画像が表示されなくなって、こちらに移りました。ソフトを入れ替えた後もそのままになっています。その最大の理由はAdblockという広告をブロックする拡張機能がインストールでき、それによって広告を非表示にできたからでした。

しかし、FireFoxには難点もあります。重くて立ち上がりが遅く、フリーズしやすいように思います。多分いちばん軽いのがGoogle Chromeでしょう。ここにAdblock Plusが入れられると最近知り、さっそくインストールしました。Firefox同様画面がすっきりしました。それにしても、Googleの広告すらブロックされてしまうので、これでGoogle自身はいいのだろうか、と思いますが…。

FirefoxやChromeを使っておられる方で、試してみようと思われる方はこちらをダウンロードしてみてください。他にもいろいろあるようですが、これが一番簡単です。

Adblock Plus for Firefox

Adblock Plus for Chrome

ブラウザの画面デザインによって、同じページを見ても印象が変わります。Firefoxの設定をいじっていたら、アイコンではなく、テキストで表示できることを知りました。この設定にすると、戻る、進む、更新、ブックマークなどすべて文字で表示されます。こういうものもいいなと思い、しばらく文字オンリーでいってみようかと思っています。

Chromeのデザインより、Firefoxの方が好みなので、メインはこちらで使うと思いますが、時々Chromeも使おうと思います。IEもまだ入っています。IEでないと動作しないというページを見なければならないこともありますので。

IMG_1119<登山>
年を取るのは悲しいことだと思われている
アンチエイジング
「年はとりたくないものだ…」
そうだろうか
必ずしもそうとはいえない
年を取らなければわからないこともある

人生は山登りのようなもの
年齢を重ねることは高く登ることだ
見晴らしがよくなる
そして
若い頃には決して見えなかったものが見えてくる

けれど
年を取るだけではわからないこともある
年を取って
それ相応の知恵を身につけられないとき
年を取るのが悲しいことになる

年齢にふさわしい場所まで登っているか
もう一度足元を見て考えたい

□◆□…優嵐歳時記(2584)…□◆□ 

  梅雨晴間万年筆を買いに出る   優嵐

ツイッターはこの震災で俄然注目を集めました。私自身も利用していますが、金曜日の朝、ツイッターのタイムラインから自分の返信もツイートも消えているという事態に遭遇しました。プロフィールには残っているので、確認できないことはありませんが、「何、これ?」と驚きました。ヘルプを見ると、それほど珍しくない問題のようでした。

こういうことに出会うと、ひとつ新しいサービスが生まれ、それが社会に定着すると、それに伴って新しい問題も発生するものだ、と感じました。震災でも、ケータイが使えなくなったことはライフラインの大問題になっていました。16年前の阪神淡路大震災当時では、まだそこまでケータイが生活必需品ではありませんでした。

ツイッターだけでなくmixiやfacebookといったサービス、さらにネットを便利に使うためのさまざまなガジェットが毎日のように生み出され使われています。あれとこれを同期させて、これをこうしたらもっと便利にという情報がネット上にも溢れています。ただ、便利になれば常にそれに伴うリスクはあるわけで、個人情報の漏洩というようなことだけでなく、それを使うために「自分の時間」を注ぎ込んでいることを忘れてはいけないな、と思います。

IMG_1097<道楽>
万年筆を買った
これで手元に七本

字を書くわけではない
絵を描くから
こんなにたくさん持つことになった

すべて違う種類の万年筆
線の太さが微妙に違う
黒のインクに加え
セピアのインクも使うようになって
その分もある
実はブルーのインクも試してみたい

思わぬ道楽なのだが
道楽って
「道」を「楽」しむと書くんだね

□◆□…優嵐歳時記(2583)…□◆□ 

  山法師平らかに咲き山の寺  優嵐

ヤマボウシが随願寺の駐車場の周りで咲いています。白いものとともにピンクのものもあり、華やかです。ミズキ科で本州以西の山に自生します。園芸品種もあり、このピンクのものはベニバナヤマボウシといわれる種類です。花のように見えるのは苞で、その中央の小さな黄緑色のものが花です。

先日、近所のホームセンターで高さ30cmほどの可愛らしい扇風機を買いました。扇風機は一台ありますが、首のところのプラスティックに亀裂が入っていてそろそろ寿命だと思っていました。さらに、この扇風機、1,500円でした。この値段では、ひと夏使えれば満足です。

本体は小さいですが、風力は充分あり、小さいために持ち運びも簡単ですし、テーブルにひょいとあげることもできます。もっと小さなクリップ式のものや乾電池で動くものなどもあり、あれこれ見て、しばらく扇風機売り場で遊んでいました。

IMG_1116<言いたいことは>
言いたいことは明日言おう---
こういう格言があるという

この格言のポイントは
言いいたいことを言うな
とは言っていないことだ

言いたいことをすぐ言わず
いったん胸の中に保留しておく
いつでも言える
その選択肢を手にすることによって
考える時間が生まれる

その場の感情やムードで口走ってしまった
さまざまの言葉
それはいったん口から飛び出したら
もう後には戻らない

言うは一時亀裂は一生
言いたいことは明日言おう
明日になったら
もう言わなくていいことも多い

□◆□…優嵐歳時記(2582)…□◆□

  夏鶯鳴くほど森の静かなり  優嵐

鶯は春の季語ですので、夏に入ると「夏鶯」として詠みます。春よりもむしろ夏の方が囀りが華麗になりますが、俳句は季節の兆しや初物を尊重して詠む傾向があります。蝶も春の季語ですが、実際には夏になってからの方が種類も活動もはるかにバラエティに富んでいます。もっとも「初物」「走り」というのは何でも珍重されます。

その年初めて聞く鶯の声や咲き始めた梅や桜というのは心をときめかせてくれるものがあります。桜は花の代名詞ですからもちろんなのですが、鶯や梅はまだまだ寒さの残る中で感じるために、感動が大きいのでしょう。感動というのは「落差」だと思います。

IMG_1142<手間をかける>
境内の池のほとりに咲く花菖蒲
それを見て
そのまま本堂への階段をあがろうと思った

ふと池の周りを歩いてみたらと声がした
一周したところで百メートルにも満たない
のんびり浮かんでいた亀が
気配を察してそそくさと隠れる

反対側に回って振り返ったとき
花菖蒲に目を見張った
静かな池の水鏡に映ったその姿

ちょっと視点を変えてみれば
同じものがさらに美しくなって立ち現れる
手間を惜しまないこと


□◆□…優嵐歳時記(2581)…□◆□

  赤紫蘇をかごいっぱいに買う男   優嵐

近所のスーパーへ行ったら、レジの列のひとつ前にカゴいっぱいに赤紫蘇を入れた男性がいらっしゃいました。梅干を漬けられるのでしょうか。梅干は一種の漬物です。梅酒には熟していない青梅を使いますが、梅干は熟した果実を塩漬けにし、その後3日ほど日干しにします。この状態のものは塩分が多く保存性に優れていて、百年くらいは優に持つそうです。現存する日本最古のものは天正四年(1576年)のものがあり、こうなると梅干とはいえ、国宝級です。

現在販売されているものは、消費者の減塩志向を反映して塩分を抜いた後、調味料で味付けされたものがほとんどです。しそ梅、昆布梅、鰹梅、はちみつ梅などさまざまなものが出回っており、賞味期限は半年程度に設定されているとか。俳句で「梅干」は夏の季語です。

IMG_1040<無料>
夕暮れのテニスコートに立っていると
西の空が刻々と赤く染まっていった
夕焼けは全天に広がり
東の空の雲まで茜色

ほんとうに素晴らしいものは
すべて無料で与えられている---
ソローはそう言った

夕焼けの壮大さもそうだろう
そして
それを美しいと思う私たちの心も

□◆□…優嵐歳時記(2580)…□◆□

  瑠璃色の閃光残しかわせみ発つ   優嵐

随願寺の放生池でカワセミを見ました。近所の川でも見かけたくらいですから、市街地の川でも珍しくないのでしょう。しかし、増位山で見たのは初めてでした。池のほとりのハナショウブにモリアオガエルが卵を産み付けているのを見ていると、視界の端をコバルトブルーの光が横切りました。

あの色は、もしや、と思いその方向に目をこらすと、間違いありません、あの嘴とお腹のオレンジ色、カワセミです。残念ながら双眼鏡を持ってきていなかったために、それ以上くわしくは見られませんでしたが、もしかしたら時々は魚を獲りにここに来ているのかもしれません。再会できる可能性は高そうです。

IMG_1126<オトク>
もうちょっとこれをこうしたら
そう考えて新しい方法を試みる
うまくいく場合もあれば
そうでないときもある

うまくいったらうれしいし
うまくいかなくてもそれなりに楽しい

今度はこうしてみようか
考えをつきつめていって
おっとそうじゃないな
こういう方法もあるじゃないか

そんな風に前提から覆ることもある
そうしてああでもないこうでもないと
やっているときが実はいちばんおもしろい

方法を単純に与えられるよりも
少々苦労しても探り当てる方が
本当はオトク

□◆□…優嵐歳時記(2579)…□◆□ 

  通う道日ごと木苺赤く熟れ  優嵐

梅雨に入って二週間が過ぎました。例年なら今頃が梅雨入りですから、半月ほど早かったことになります。雨量はすでに充分な梅雨と感じます。雨がやんでいるときを見計らって散歩に行きます。梅林の一画に木苺がなっていることを教えていただき、散歩のついでにひとつふたつ摘んで食べます。桜の実もそうでしたが、木苺もほんのりとした甘さでいいものです。

絵を描き始めて、考えることが多くなりました。悩み事が増えたというのではなく、何をどう描こうか、とか、どの材料をどう組み合わせたらうまく描けるか、などという考え事です。これが楽しい。ポピュラーな単一の画材で描いているわけではないので、方法を説明した技法書というのがありません。

最初はどうしてそういうものがないのか、と思いましたが、これが逆に面白いと最近は感じています。油絵や水彩画、パステル画などとはっきりジャンル分けがしてあると、さまざまな技法書をお手本に描いていくことができます。しかし、マーカー、万年筆、筆ペン、オイルパステル、クーピーペンシルを混合させて描くとなると、自分で考えるしかありません。


IMG_1067<尻尾>
単純に思えることほど
あるひとつのものの見方にはまったら
そこから抜け出すのが容易ではない

犬が西向きゃ尾は東なのだが
西を向いている犬には
自分の尾が見えない

尾をさがしてぐるぐる回っているうちに
ふと後ろを振り向いたら尾があった

□◆□…優嵐歳時記(2578)…□◆□

  雨受けて植田の面(おもて)いきいきと   優嵐

金曜の夜から土曜の朝にかけてはかなり雨が降った模様です。眠る時は戸外で風雨の音がしていました。朝になっても雨が残っており、窓から近所の水田が見えました。田植えが済み、苗が並んだ田の水面に雨が落ちているのがきれいでした。

朝のうちに雨はあがり、散歩に出かけました。頂上に蝶はいませんでしたが、イワツバメが何羽も目の前を横切って飛んでくれました。爽快な飛翔です。頂から麓を見ると、苗が植わった田に周囲の景色が映っています。この時期独得の水の風景です。

IMG_1048<瑞穂の国>
繰り返される水田のリズムが
景色にどれほどの変化を与えていることだろう

水面に空や雲が映る植田の時期
やがて青田となり
風が青田波を作って吹き抜けて行く
稲穂が稔り黄金色に色づくと
頭を垂れた金色の波になる

色彩と動きの変化
いずれも美しい日本のリズム

黄金色が刈り取られれば刈田となり
並んだ株はひつじを出し
それも枯れる頃
里に冬がやってくる

□◆□…優嵐歳時記(2577)…□◆□

  夜はすでに遠く明けたり月見草   優嵐

月見草というと、ちょっとややこしくなります。歳時記にもマツヨイグサと並んで書かれています。マツヨイグサと名のつく草花は日本に現在十種余りが野生化していますが、すべて帰化植物です。本来のマツヨイグサはチリ原産で、江戸時代の終わりごろに観賞用として日本に入り野生化しています。

他の”マツヨイグサ”はこの時期にいっしょに入り込んだもので、夕方に花を開く性質も同じです。マツヨイグサは一般にツキミソウと呼びならわされ、俳句でも月見草の名前で詠まれるのがほとんどです。太宰治が『富嶽百景』の中で「富士には月見草が似合う」と書いたのはオオマツヨイグサで、竹久夢二の詩に登場する宵待草はメマツヨイグサだと言われています。

さらに複雑なことに、植物学上にはツキミソウという種が存在します。このツキミソウはマツヨイグサとほぼ同時期に渡来したメキシコ原産の一年草あるいは多年草で、透き通るような純白の花をつけます。これは適応力がそれほどなく野生化しないまま一時は姿を消していましたが、最近は本物の月見草として人気が復活しているそうです。

さらにさらに複雑なのは、ヒルザキツキミソウという種が存在するということです。これは他の種と異なり日中に咲いて淡桃色です。野生化もみられるといいます。私が随願寺境内で見た「ツキミソウ」はどうやらこの種だったようです。

IMG_1088<型にはまる>
何かを作るとき制約が無い方が
型にはまらず
思う存分創作できると思いがちだ

ところが実際はそうではない
小説には小説の
映画には映画の
ポップスにはポップスの
創作上の制約というものがある

その型の中で試行錯誤するとき
インスピレーションが湧き
創造の火花が散り
ほんとうにいいものが生まれる

単なる自由は
手がかりのない放埓
混沌とした五里霧中

制約は先を照らす灯台であり
恩恵なのだ



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