優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2011年07月

□◆□…優嵐歳時記(2627)…□◆□

  夏の川横切ってゆく雲の影   優嵐

増位山の山頂からは東側にほぼ180度の展望が開けています。雲が出ている日はその雲が山や川、水田、集落に影を落としながら動いていく様子を眺めることができます。夏は湿気が多いせいか遠くまで見通せる日はそれほどありません。秋冬の、雨が降って風が強く吹き、翌朝からっと晴れた日、というのが最も遠くまで展望がききます。

ここ数日、部屋にブヨが出るようになりました。もともと蚊はほとんど来ないのですが、何かにさされて痒いというのが続きました。蚊なら独得の羽音がするはずですし、電子蚊取をつけてみても効果がありません。痒みで初めて気がつくくらいで虫の姿は全く見えませんが、どうやらブヨらしいのです。

インターネットで検索すると、通常の虫除けスプレーなどはすべて蚊をターゲットにしているため、ブヨには全く効かないとのこと。対策として一番簡単で有効そうなのが、エアーサロンパスでした。ここに含まれている成分のサリチル酸をブヨは嫌うらしいのです。

さっそく薬局で購入し、使ってみました。効果はあまり長く続かないとのことでしたが、ブヨの出現時間が黄昏時に限られているため、その一時間ほどに効果があれば十分です。結果、確かにある程度効果はあるようです。ここ数日毎日数ヶ所刺されていたのが、一ヶ所で済みましたから。

それよりも驚いたのがエアーサロンパスの冷感効果でした。スプレーした直後はぐんと涼しくなり、扇風機を止めたくらいでした。ほとんどエアーサロンパスを使ったことがなかったので、新鮮でした。これからしばらく夕刻にはエアーサロンパスでブヨ除け&冷却ということになりそうです。

刺されてしまったところには、ムヒアルファを塗っています。よく効きます。痒みを放置して掻いて皮膚を傷つけるのがよくないと思いますので、刺されたとわかったら、即座にこれを塗っています。

IMG_1492


□◆□…優嵐歳時記(2626)…□◆□

  水面に蓮華散らして花托立つ   優嵐

増位山の蛇ヶ池では白蓮が連日咲いています。同じ池の中にあっても同時に咲くというのではなく、順番にぽつりぽつりと咲きます。朝早く開き午後3時頃には花弁を閉じます。 花の開閉は3回繰り返し、4日目には花びらが散るそうです。そういえば、それぞれの花を見ているとそういう周期になっているな、と気がつきました。

蕾の蓮も擬宝子に似た独得の形をしていて、これも趣があります。これがだんだん膨らんできて、すでに開いた花の隣に並んでいるのはいかにも「ありがたい」図です。蓮はアジアの国の多くで特別な花になっており、インド、スリランカ、ベトナムの国花です。

IMG_1474<時間について>
時間というものが存在すると
私たちは思っている
しかし
時間がすべてのもののうえに
存在するかどうかそれは疑問だ

私のうえに時間はあるが
私を構成する水の分子に時間はない
時間というものは
移り変わっていくことを意識できる
個体にしか存在しない

生死や個別性のないものにとって
あるのは「現在」だけ

□◆□…優嵐歳時記(2625)…□◆□ 

  つかまったところが故郷蝉の穴   優嵐

「蝉の穴」とは蝉が羽化するときに地中から出て残す穴のことです。このまま、這っていき、羽を伸ばすのに十分な場所へ来たらしっかりつかまります。そして、背中が割れ蝉が姿を現します。幼虫時代とは全く違った姿になって、「蝉」としての故郷はそこなんだろうな、と思いました。

久しぶりに非常にはっきりとした夢を見て、さらに夢の中で「これは夢なんだ」と思う経験をしました。比較的日常に近い世界の夢でしたが、目が覚めてから考えると変な世界です。夢の中で、これはどういうことなんだ、と考えて、「そうだ、これは夢なのだ、だから夢から覚めればいいのだ」と思ったとたん、目が覚めました。こういう夢を見るようになったのは、ここ2、3年のことです。

今、一応目覚めてこれが現実だと思っていますが、これは私という意識が体験している無数にある世界の中のひとつなのかもしれない、と思います。肉体があって、これが自分だと思っていますが、実は肉体は衣服のようなもので、眠ると別の衣服に着替えているのかもしれません。目覚めて想起する夢は、この肉体が想像できる範囲のことに翻訳されているのかもしれない、と思います。

IMG_1473<リアル>
リアルというのは
計測したり触れたりできるものではないのかもしれない
自分の身体があって
いろいろなことを感じて
それをリアルだと思っている

しかし本当のリアルは
もっと次元の違うもののような気がする
これがリアルだというのは
この世界の一応の約束事

スポーツのルールのようなもの
そのフィールドを出れば
全く違う世界があって
それが真のリアルにつながっている

□◆□…優嵐歳時記(2624)…□◆□ 

  暁やすでに高かり蝉の声   優嵐

つい先日までは、日の出から少し時間がたつまで蝉の声が聞こえませんでした。ところが今は、ようやく夜が明けかけたかと思うとどっと蝉が鳴き始めます。今、家の近所で鳴いている蝉の中心はアブラゼミだと思いますが、増位山へ行くと、300m近い標高差のためか、ヒグラシが盛んに鳴いています。

坂井泉水さんの肖像画第20作です。画材にはしだいに慣れてきました。今回の線描には、先日購入したアクリル絵画用の筆を使っています。細い線が少し描きやすくなりました。元にしたのはモノクロの写真です。1995年ごろのものです。シャンブレーのシャツに見えたので、ブルー系統のクレパスを使いました。

IMG_1475
MDFボード(455×305mm)、アサヒペン水性多用途つや消し白、ハピオ水性シリコン多用途黒、
サクラクレパス、ぺんてるくれよん、三菱ダーマトグラフ、万年筆&プラチナ顔料ブラック・ブランセピア

□◆□…優嵐歳時記(2623)…□◆□ 

  太陽を戴き大向日葵となる   優嵐

「向日葵は全く夏の化身のような花」と手元の歳時記にあります。全くそのとおりです。最近はミニヒマワリがたくさん栽培されるようになり、背の高いヒマワリを見る機会が少なくなってきました。しかし、ヒマワリといったら、やっぱりあの堂々とした姿を連想します。

坂井泉水さんの月命日です。7月6日の誕生の「日」に『stray love』を取り上げ、ドラムの音が素晴らしい、と書きました。今日は同じようにドラムの音が印象的な『息もできない』を取り上げます。ZARDの24枚目のシングルとして発表されました(98.3.4)。

息もできない



ここでのドラムはマーチングバンドを思わせる響きです。「間奏はこだわっていたのですごく気に入っています」と坂井泉水さん自身が語っています。三回忌ライブ"What a beautiful memory 2009"でこの楽曲が演奏されたとき、レコーディング中の彼女の映像が流れました。もともとあまりお化粧らしいものをしていない人ですが、この映像のときは、全くノーメイク、長い髪を束ねたうえに邪魔にならないよう後ろで適当にアップにして、はっきりいえばボサボサのヘアスタイルです。

しかし、本当に楽しそうにレコーディングをしていて、彼女は音楽を創り上げていくことが心底好きだったんだということが伝わってきました。ドラムの音にあわせて足踏み行進をしたり、見ているこっちも思わず笑顔になってしまう、そんな雰囲気なのです。今も彼女はどこかでこんな風に曲を作り、歌っているんじゃないか、そう思いました。

さて、この歌の詞についてですが、私がとても印象に残っているのが、後半に登場する「月の照らすジェットコースターが闇をつき抜けてゆく」というフレーズです。前後に何かつながりがあるわけではありません。唐突にこのジェットコースターのフレーズが登場します。

なんで、ここでジェットコースターなんだ、と思いますが、彼女なりの直観で書かれた詞なのでしょう。そしてそれがインパクトがあり、映像がはっきり目に浮かぶくらい印象深いものになっています。『息もできない』と聞くと、私は真っ先に「月の照らすジェットコースターが闇をつき抜けてゆく」映像が脳裏にひらめくほどです。何なんでしょうこれは…。

□◆□…優嵐歳時記(2622)…□◆□

  一匹の蟻が引きゆく鳥の羽根   優嵐

森を歩いていたら、目の前の地面をこげ茶色をした野鳥の羽根が動いているのが見えました。近づいてよく見ると、一匹の蟻が羽根の根元にいて引いていくところでした。ここから連想したのが三好達治の「土」という詩です。

蟻が
蝶の羽をひいて行く
ああ
ヨットのやうだ

子どもの時これを読んで、ふーんなるほどなあと思い、妙に印象に残りました。野鳥の羽根は……、野鳥の羽根としか言えないですね。空蝉も見ました。梅林の東屋の柱にしがみついていました。毎日何か昨日とは違うものと出会えるのが楽しみです。

IMG_1454<蝉と蜂>
地面でもがくアブラゼミに
スズメバチがとりついていた
盛んに脚を動かして
逃れようとする蝉

蜂はしっかり銜えて離さない
蝉が可哀想とは思わない
ここにひとつの生命の流れが展開している
その流れの中に
私も存在している

□◆□…優嵐歳時記(2621)…□◆□

  大暑かな韓国料理に舌鼓   優嵐

23日の土曜日は二十四節気の大暑でした。夏の最後の節にあたります。最も暑いころですが、今年に関して言えば、夏至直後の一週間が最も暑く、すでに秋の気配が感じられます。日が短くなっているのもありますが、風がとても涼しいのです。今年は意外に早く涼しくなるかもしれません。

梅雨入りも梅雨明けも早かったわけですから、その調子で行けば秋の訪れが早くてもおかしくありません。昨年は異常なほど暑い時期が長く、平均を考えると、今年は早く涼しくなってちょうどいいといえます。

土曜日には韓国料理を食べました。珍しい食材がいろいろあり、名前は具体的にはあげられませんが、いずれもおいしくいただきました。マッコリも飲みました。あまりアルコール度数は高くなく、ビール程度です。乳酸飲料から甘さをとったような印象でした。

IMG_1444<楽しみ>
飲み食べ語らい笑う
これらは人類発祥の時代から
この先もずっと
変わらない楽しみだ

人種性別年齢趣味嗜好
それらを超越して
私たちは
飲食談笑の生き物

□◆□…優嵐歳時記(2620)…□◆□

  午前八時蝉一斉に鳴き始む   優嵐

蝉の最盛期です。家にいても森に行っても蝉の声に囲まれています。成虫としての蝉は蝉の一生の最晩年の姿で、後は子孫を残すためだけに地上で鳴き飛びしています。土曜日は日差しが戻ってきました。しかし、風にも日差しにもはっきり夏の終りが感じられます。蝉が鳴く頃って晩夏だったんだな、と今更ながらに思います。

前の職場の同僚たちと夕食を食べに行ってきました。たまにこういう席に誘っていただき、昔の人の消息や今の状況を聞いたりするのは楽しいものです。

IMG_1421<毛虫>
森の道で大きな毛虫に会った
落ちている枯枝を登ろうとして
ひっくり返り
また別の枝にとりついて
まごまごしている

魂が蝶だとしたら
地べたにはいつくばり
もぞもぞもごもご
右往左往している
君は地上に生きる人間そのもの

いつか華麗なアゲハになって飛び立つ
だから
今日もまた地上を這って
修行修行


□◆□…優嵐歳時記(2619)…□◆□

  何かしらありがたくあり蓮開く   優嵐

台風が去った後、猛暑になるのかと思っていたら、ここ二日は曇りがちのお天気が続き、意外な涼しさです。こうなるだろう、と予測してそのように身構えているとそうならず、逆にまだまだだと思っていたら突然やってきたりして、自然は複雑系です。

増位山の蛇ヶ池の蓮が次々に花開いています。蓮は浄土の象徴です。敬虔な仏教徒というわけではありませんが、それでもあの蓮の独得の丸みを帯びた花を見ると、不思議なありがたさを感じます。同じ美しい花であっても薔薇や百合などには「ありがたい」という感じは覚えません。

IMG_1420<リスト>
ToDoリスト、ウィッシュリストなど
なんとかリストというものは
いろいろ提案されている

昔はなるほどと思い
作ってみたこともあったが
もうやめた

リストを作ることで安心している人
どんなリストがいいか
ツールや方法を模索しているうちに
何をやっているのかわからなくなる人

私はそういう人である傾向が強い
ToDoで覚えておかなければならないことなど
今はあまりない

忘れてしまうようなことは
本来必要ないことだ
身につけるべきスキルとか
ちょっとした○○術とか

人間の記憶は妙なところで妙なところに
つながるから
不思議な飛躍ができる
それをリストで縛る必要なんか
ないんじゃないか

□◆□…優嵐歳時記(2618)…□◆□

  風吹けば風にかなかな鳴き初めし   優嵐

「かなかな」とは、ヒグラシの別名です。夏から秋にかけてカナカナと涼しげに鳴くことからこう呼ばれます。明け方や夕刻に鳴くことが多いといわれています。水曜日に増位山の自然歩道を歩いていたら、風とともに谷からこの声が響いてきて、すっと涼しくなりました。「初蜩」は夏の季語ですが、「蜩」は秋の季語になります。鳴き始める時期を微妙にとらえた先人の感覚の鋭さを思います。

先日大阪で買い求めたアクリル絵画用の筆を使って絵を描きました。やはり、学童用のものよりは描きやすく、次からもこちらを使おうと思いました。あたり前ではないか、と言われそうですが、専門家用と銘打たれているものが必ずしも使いやすいとは限りません。

実際、ちょっと工夫をすれば有名ブランドをつけて売られている製品と大差ないものを何分の一かの値段で買えます。廃物利用で済むこともあります。これはあらゆる分野で言えます。売る方は買ってもらうためにその差や利点を強調しますが、それを鵜呑みにすると、高い買物をして結局使い勝手が悪いということも珍しくありません。

IMG_1415<変化>
子どものころ
夏休みが始まるときは
「これからが夏だ」と思ったものだった

俳句を詠むようになって
季節感を肌で感じるようになると
学校が夏休みに入るころは
もう晩夏なのだと思う

同じ時期の中にいながら
これはパラダイムが変わったということ
外側は同じでも
それを見る目が変わったら
世界は変わる

このページのトップヘ