優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2011年08月

□◆□…優嵐歳時記(2638)…□◆□

  ずっしりとすでに糸瓜は垂れており   優嵐

随願寺の境内のヘチマが随分大きくなってきました。最初に生っていたものには、もうあの可愛らしい雰囲気はなく、ヘチマらしいどっしりした大きさになっています。動物を除けるためにヘチマのまわりに頑丈なネットが張られています。これだけの大きさのものがいくつも生るのですから、蔓の力にも驚きます。

放生池でいつのまにかホテイアオイが数個花をつけています。誰かが持ち込んだものでしょう。先日まではありませんでしたから。今ここの池は水面のほとんどがヒシとコウホネに覆われ、水面が見えない状態です。ホテイアオイが加わることによって水面の陣地争いはどうなるでしょうか。

ホウシゼミが本格的に鳴き始めました。残暑は厳しいですが、ツクツクボーシが主役になり始めるとしだいに秋めいてきます。夕方、積乱雲の中で稲妻が走っているのを見ましたが、雷雨はきませんでした。

IMG_1591<訪問者>
朝から部屋に蜂がきていた
蜂が入ってくるのは珍しくない
ところがちょっと様子が違う

泥を携えテーブルの下でごそごそしている
巣を作るつもりなのか
それは困る

追い払ったら
テーブルの足元に
三匹の小さな青虫が落ちてきて驚いた
幼虫の餌になるところだったのか

戸外なら別にかまわないが
部屋の中はやめてもらいたい
青虫との同居も遠慮したい

蜂はあきらめず
夕方もう一匹の青虫を携えて
再びやってきた
お帰りいただいたが
明日も来るだろうか
とんだ訪問者

□◆□…優嵐歳時記(2637)…□◆□ 

  秋蝉のにぎやかにある山路かな   優嵐

秋蝉という蝉がいるわけではありません。「蝉」は夏の季語ですので、秋に入ると「秋蝉」とします。季語の約束ごとです。法師蝉や蜩は秋の季語ですから、これらを単独で詠むときは、そのまま使います。秋に入ってしばらくの間は猛暑が続くのが例年のことです。蝉もまだまだ盛んに鳴いています。

絵を描くあいまに別の部屋にブルーシートを広げ、MDFボードに白のアクリル塗料で地塗りをしています。表裏それぞれ三回ずつ塗ります。三度塗るのは美しく仕上げるためですし、表裏ともに塗るのは片面だけだとボードが反ってしまうからです。

三尺ものといわれるもとの一枚の板から、455×305mmのボードが12枚取れます。これを一気に塗ってしまいます。シナベニヤ、ファルカタ合板、MDFボードと試してみて、MDFボードが最も好みにあっていることがわかりました。地塗りはローラーで行うのですが、これのコツもだいたい飲み込めてきました。何ごとも習うより慣れろ、ですね。

IMG_1581<専門家用?>
学童用のクレパスとクレヨンで絵を描き始めたとき
もう少し上達したら
専門家用の100色以上揃ったものを買おうと思っていた
フランス製やスイス製の何万円もする「オイルパステル」

けれど
何枚も描いているうちに
学童用のもので十分だと思うようになった
色は塗りながら画面で作り出していける
その方が発色がきれいで透明感がある

専門家用、プロ仕様、
そういう言葉がつくとつい惑わされる
自分が道具に何を求めているのか
それを十分把握してから買わないと
高い買物をすることになる

□◆□…優嵐歳時記(2636)…□◆□

  秋の花描き初めにし秋立つ日   優嵐

立秋の昨日は『優嵐スケッチブック』に木槿を描きました。ムクゲは秋の季語になります。立秋ということで、なんとなく蝉も最盛期を過ぎつつあるかな、という感じがしました。風も空も少し秋らしくなった、そんな気がします。

昨日、ART-Meterに出品していた作品を買っていただきました。これで三作品目ですが、やはりとてもうれしいものです。誰かのお目にとまったんだと思うとありがたいです。さらに、今回はやや大きな絵でしたので、これで画家のランクがひとつ上がり「レベル2」になりました。

レベルが上がってうれしいのは、出品できる作品数がこれまでの10から一気に二倍の20に上がることです。これで、ゆったり応募できるなあ、と感謝しています。もっといい絵を描きたい、と気持ちを新たにしました。

IMG_1515<立秋の日に>
俳句を詠むことの楽しさは
一年の間に新年とは異なる
四つの新たな区切りを持てること

立春、立夏、立秋、立冬
その前日と大きく何かが変わるわけではない
大晦日と元日が時間的には連続している
それと同じ

それでも気持ちが変わる
周囲を見る目が変わる
やってくる季節の兆しを感じ
去り行く季節を惜しむ

こういうことの醍醐味を
教えてくれたのは俳句
繊細で美しい四季を持つ国に生まれた幸せ

□◆□…優嵐歳時記(2635)…□◆□

  夏終わるチャペルの鐘の聞こえくる   優嵐

今日は立秋です。早くなった夕暮れ時、窓からの少し涼しい風に秋を感じていました。去年はこのあとの残暑が異常に長く厳しかったのですが、今年はどうなるでしょうか。里でも昨日初めてホウシゼミの声を聞きました。

右足の指をぶつけて皮膚が切れました。これまでなら、バンドエイドを貼っていたところでしたが、今回はちょっと違うことを試してみることにしました。最近ウェブで新しい創傷治療について読んだからです。これまでの常識では、怪我をした場合、傷を消毒し絆創膏、ガーゼなどをあてていました。

ところが、これでは逆に治癒をさまたげる、というのです。消毒薬は傷口を痛めつけ一種の火傷のような状態にしてしまいます。傷口からは浸出液が出ますが、ここに自分自身の身体が作った創傷を治癒させるための成分があるので、これを最大限に活かし、余計なことはしない、というのです。

使うのは食品ラップです。これを傷ができた指に巻いて過ごしています。このウェブを書いていたのは、形成外科を専門とする医師でした。かなりひどい擦り傷、火傷、などもこれで早くきれいに治るとして、治癒例も写真つきで載っていました。

このサイトによれば、怪我をした場合、することはこれだけです。
1)泥や汚れがついていたら、傷口をきれいな水で洗い流す
2)傷口を食品ラップで覆う。ラップで覆うのは傷口を乾燥させないため。
3)ラップを夏は一日に二度、冬は一日に一度取り替える


このサイト、他にもいろいろ目からウロコのようなことが書いてありました。サイト全部は膨大ですが、傷やら皮膚の常識やらについては興味深く読ませていただきました。

IMG_1565





□◆□…優嵐歳時記(2634)…□◆□ 

  上弦の月の明るし夜の秋   優嵐

「土用半ばに秋風が吹く」と言われているように、立秋が近づくと酷暑の中にもどことなく秋の気配が感じられるようになります。昼間はにぎやかだった蝉の声もいまはすっかり静かになり、戸外から虫の音が聞こえています。こうしたときの季節感をあらわすのが「夜の秋」という季語です。

坂井泉水さんの肖像画第21作です。これももとになったのはモノクロの写真です。1996年ごろの写真ではないか、と思います。妙なことに、これだけ同じ人物の絵を描いてきたはずなのに、未だに彼女の”容貌”がはっきりわかりません。写真によって随分表情が変わって見える不思議な人です。


IMG_1563
MDFボード(455×305mm)、アサヒペン水性多用途つや消し白、ハピオ水性シリコン多用途黒、
サクラクレパス、ぺんてるくれよん、三菱ダーマトグラフ、万年筆&プラチナ顔料ブラック・ブランセピア

絵を描きながら、時々間をおく必要があるので、簡単な部屋の模様がえをしました。できるだけモノをおかずに空間を広く取ることを心がけています。気分転換には掃除と整理整頓、これに勝るものはありません。

□◆□…優嵐歳時記(2633)…□◆□ 

  瑠璃色の残像烏揚羽去る   優嵐

カラスアゲハは、翅の後ろが青から緑へと見る角度によって微妙に変わる大型のアゲハです。姫路近隣で見られる蝶の中では最も美しいアゲハだと思います。木曜日の日中は風がほとんどなく暑かったのですが、夜半から一転して風が出ました。金曜日は曇りがちで、お昼ごろににわか雨があり、比較的しのぎやすい一日でした。明後日が立秋です。

坂井泉水さんの誕生の「日」です。先日から楽器のアレンジが印象的な曲をとりあげています。今日はピアノに注目し、『来年の夏も』について書いてみたいと思います。ZARDの五枚目のオリジナルアルバム『OH MY LOVE』(94.6.4)に収録されています。今日は2004年のライブツアー時の映像をいただいてきました。

来年の夏も



この楽曲の終盤に入っているピアノソロについて、オフィシャルブック『きっと忘れない』に、こんなエピソードが載っています。

このピアノソロの部分について、彼女はなかなかOKを出さず、そのうち「リストのラ・カンパネラを参考にダビングをしてほしい。具体的に頭の中にあるので、DIMENSIONのピアニスト、小野塚さんをブッキングしてもらえないか」とスタッフに相談しました。

ラ・カンパネラの超絶技巧とリスト愛用のベーゼンドルファーピアノの豊かな音色…そのアイディアを取り入れて小野塚さんがピアノソロを組み上げ、ようやく満足のいくものができあがりました。ライブツアーのときはピアノを担当したバンドメンバーが必死にそれをコピーし、彼女はとても喜んでいたといいます。

これを読むと、ものを作る人にとって、テクニックはもちろん大事でしょうが、それ以前のベースとなるイメージ構築がしっかりできているというのはさらに重要なことなのだ、とわかります。彼女はそれをとても大事にし、常に真剣に追求して倦む事を知りませんでした。シングルとして発売される楽曲ではなくとも、徹底的に自分の中にあるイメージに忠実に従いそれを追っていく、それが坂井泉水の方法、だったのです。

□◆□…優嵐歳時記(2632)…□◆□

  風死せり家中の窓開け放つ   優嵐

通常、日中は南北の窓を開け放っていれば風が通りぬけ、時には涼しすぎるくらいです。日照による海と陸との温度差によって海からの風が吹き続けるからです。しかし、昨日はなぜかほとんど風がなく、暑い一日でした。こういう状態を表す「風死す」という季語があります。窓を開け放ってそれでも多少は風を入れることを試み、できるだけ風が抜ける場所にいて、なんとかしのぎました。

増位山の森は今、あらゆる蝉が溢れかえる時期です。自然歩道を歩いていると蝉がいたるところにいます。人の姿に驚いて飛び立ったものがこちらにぶつかってきたり、背中に迷い込んだりもします。今日本全国の蝉を数えたら、いったいどれくらいになるのでしょうか。

梅林の池にカラスアゲハがきていました。モリアオガエルが産卵する池ですが、今は水量が減り、わずかな水たまりになっています。夏の日中には彼らもこういうところに来て、水分とミネラルを補給します。カラスアゲハは静止しているときは翅を閉じていますが、飛ぶと背中の青から緑に微妙に変化する色が見え、宝石を思わせる美しさです。

IMG_1550<美しいもの>
毎日何か美しいものに出会う
それは
カラスアゲハの輝く翅だったり
紅蓮のふくよかな開花だったり
夕映えの空に出る三日月だったり

これらを見て「美しい」と思うのは
あらゆる生き物のうちで人間だけだろう
なぜ人はそういう能力を持つようになったのか

単に生存に有利だとか
そういうことではないような気がする
自然のあらゆる美しいものは
人類登場以前からすでにそこにあったはず

自然界の美はやがてやってくるものの
存在を知っていたのだ


□◆□…優嵐歳時記(2631)…□◆□

  沖青し入道雲を浮かべおり   優嵐

増位山で今シーズン初めてホウシゼミの声を聞きました。ヒグラシはずっと前から鳴いていますが、ホウシゼミが加わり、いよいよ秋近しです。それでもまだアジサイがいくつかきれいに咲いています。ヒマワリも咲いており、境内で季節が交錯している印象です。

山頂から見る播磨灘は、湿気のせいかこの時期くっきり見える日はそれほどありません。水曜日は比較的遠くまで見通すことができました。真夏の日中に歩くのは確かに暑いのですが、ほとんどが木陰のため、街中を歩くような暑さとは違います。

IMG_1545<味>
フィンランド土産のキャンディーをもらった
独得の味がするときいていた

今までいろいろなところへ行って
いろいろなものを食べた
形容の難しい味というものがある

このキャンディーもそのひとつ
なんだろうこれは
「うす味の塩昆布の塊にややアンモニア風味をつけた」
そういう味だ

絵は見なければ
音楽は聴かなければ
食事は食べなければ
イメージすることは難しい
それを言葉で表現することは畳の上の水練



□◆□…優嵐歳時記(2630)…□◆□ 

  茄子汁や白夜の旅の話きく   優嵐

夕食を食べながら、北欧旅行をしてきたという人の土産話を聞いてきました。ノルウェーへは私も一度行ったことがあり、ベルゲンやフィヨルドの様子は脳裏に蘇ってきました。ノルウェーの最大の印象は、滝が多い、平地がほとんどない、その二つです。

前の仕事についていたころは、休暇を最大限にとり、世界中の山や海や川を旅して回りました。あそこにもここにも行きたいところがいっぱいで、行けば行くだけ次にまた新しいところに興味が湧く、そういう感じでした。仕事を変えて、これでいつでも好きなだけ、誰に許しをもらう必要もなく旅ができると思いました。しかし、実際は友人に誘われて一度台湾へ行ったくらいです。旅に対する興味ががらっと変わってしまいました。不思議なものです。

IMG_1495<退屈な場所>
子どもの頃は
大きくなったらこんな退屈な場所を抜け出して
世界を見て回ろうと思っていた

どこか新しい場所へ行けば
何かオモシロイ経験ができるはず

けれどそれは少し違っていた
オモシロイ経験をしたいなら
自分のものの見方を変えること

それができなければ
タイムマシンでジュラ紀に行っても
やがて退屈してしまうだろう

□◆□…優嵐歳時記(2629)…□◆□ 

  白蓮に近づく雨の気配あり   優嵐

日曜のお昼ごろに驟雨があり、午後三時ごろ山へ散歩に行きました。蓮池の白蓮は花を閉じていました。月曜も雨を降らせそうな雲が出ていましたので、早めに散歩に行きました。池にぽつぽつと雨滴がありましたが、それ以上は降らず、雨はどこかへ行ってしまいました。

毎日歩いていると、季節の細かな変化がよくわかります。境内の一画にはまだ紫陽花が咲いているところもあるのですが、その一方で秋の花であるキキョウが咲き始めています。ヘチマの実もひとつふたつと増えてきました。蝉は下界ではまだほとんどアブラゼミですが、山ではヒグラシが盛んに鳴いています。

IMG_1521<紅蓮>
庫裏の前で紅蓮が花開いていた
その蓮の根元には
小さなプラスティックの桶

紅蓮はそこから花と葉を伸ばし
人の顔ほどの高さで花を咲かせている

濁りにしまぬ花はちす
泥より出でて泥に染まらず

出自がプラスティックの小さな桶だろうと
蓮はそんなことを頓着しない
育った場所で凛と立ち
仲間と同じふくよかな花を咲かせている


このページのトップヘ